5-14 オルゴーの飛翔の呪文
叙述回路を物語が巡る。
サーキットを走る選手たち、そのひとりひとりが回想を開始。箒の上から彼ら自身の実体を『空』にしていく。停滞した現在の記述にかわって箒が乗せるのは『負けられない理由』である。この日のために練り上げてきた各々の文脈が無数の風を巻き起こす。
黒曜騎士ハイマンが展開した文明を拒絶する力により、多くの選手たちは減速を余儀なくされた。ラストスパートのために温存していた切り札である過去回想を使わざるを得なくなったのだ。
一方、ハイマンの妨害によって一気に前に躍り出た非『杖』的な手段で飛翔する者たちの争いは、ティリビナ人のロードデンドロンを中心とした展開となりつつあった。
銀貨によって支配下に置いた鳥人のクロウ、複座式マジックミサイルで加速を続けるジュティアとミナ。猛追をものともせず、ティリビナ人はトップを譲らない。
己の翼で飛翔する鳥人は霊薬によるドーピングがもたらす『肉体の力』で、複座式マジックミサイルはアヴロノたちが持つ『自然の力』で加速を続け、文明を無効化するハイマンの妨害を潜り抜けていく。
だがそれでも追い付けない。
ティリビナ人が速すぎる。近代箒の在り方と逆行するかのような昔ながらの木製箒にあるまじき異様な速度だった。
二人組の探索者が双眼鏡を覗き込み、先頭のティリビナ人の秘密を探ろうとする。
「ジュティアちゃん! あれ改造してあるよ、フツーの木製のやつじゃない!」
「どういう改造? 樹木神の加護なら天使認定を利用して同格の妖精神ぶつけるけど」
「んー、なんかキモいの! キノコとか生えてて、虫がキノコと箒にくっついてる感じ! うわっ、動いてる生きてるなんかこっち見てるゾワゾワする~!」
鉄願の民が持つ『杖』を無効化する力は極めて強力だが、このような自然由来の呪術には完全に無力だ。生物や植物を使役する『使い魔』を利用した共生的な箒の改造を行っている者はロードデンドロン以外にも存在する。全力で加速することでどうにかトップのロードデンドロンに食らいついている二番手三番手の背後から、そうした『使い魔』呪術に秀でた箒乗りたちが迫っていた。
その更に後ろ、後方集団の中に紛れたユディーアは手の中で銀貨を弄んでいた。
『暗躍』『策略家』『悪役』『トリックスター』あたりの文脈を充填しながら併走する後方集団をまとめて手勢に引き入れて『対ハイマン同盟』を一時的に結成。
真剣勝負を穢す『結託した集団』の最大派閥として『悪役』のカードを切る。
ユディーアは『にっこりゴーリー』という迷宮刑罰者たちのボス、ならず者集団の名を背負って出場していた。このような立ち回りは役に合っているし、レース展開をコントロールするつもりならより多くを巻き込んだ方がいい。
一般的に、優れた『使い魔』系統の術者ほどより強力な呪的生物を操れるとされているし、それは一面的には正しい。
だが『使い魔』の真髄は『人間関係』だ。
関係性を結ぶ相手が強く在る必要はない。選択肢の多さも強さのひとつ。
「ハイマン選手、追いすがる後方集団から集中的に狙われてしまっています! いくらなんでも敵を作り過ぎた! 流石にここまでか!」
実況の言葉通り、数の力に抗うことはできない。
一斉に過去回想に入った選手たちの想いの力が炸裂。ユディーアも亡き幼馴染への弔いというそれっぽい過去を匂わせつつ仇への憎悪を燃やして加速する。
爆発する呪力の風が吹き荒れる中、幾多の妨害に晒された黒曜騎士は体勢を崩し、機体をクラッシュさせた。
レースを支配する文明否定者の牙城を崩したユディーアたちだったが、先頭集団からは大きく引き離されてしまっている。差を縮めるためには更なる加速と先頭の減速が必要だ。
クロウを暴れさせる。その決意を固めた瞬間、ティリビナ人が動いた。
サーキットが振動する。風に乗って未知の呪力が世界を塗り替えていく。
歌だ。知らない響き、理解できない音の羅列。
太陰が自動翻訳する言語ではない。
「エキゾチックエフェクト狙いかよ!」
後先を考えずに突撃を敢行しようとしていたクロウが悔しそうに叫ぶ。
未登録言語による歌唱。意味が分からない以上、それを環境音でしかないと切って捨てることも可能のはず。にもかかわらず、独特の抑揚と聞きなれない旋律、虫の鳴き声を楽器のように活用した原始の音楽は人々の関心を集めた。
観客の人心掌握。このレースが衆目を集めている以上、観客を巻き込んだパフォーマンスもまた展開を有利に運ぶためのテクニックだ。
歓声によって勢いがついたティリビナ人の前方に輝く環が形成されていく。
それは空飛ぶキノコ。フライングマッシュルームなどと呼ばれる幻想の菌糸だ。
それらが環を描き、門となってロードデンドロンを待ち受ける。
飛翔にワープスピードを与える飛躍の門。
歌速レギュレーションにおける華。テキストベースサーキットではこの『飛躍』によってどれだけ『勝つ流れ』を手繰り寄せられるかによって勝敗が決すると言っても過言ではない。
文脈と記述の集中。相応の速度。どれだけ劣勢であろうとも諦めない心。
通常の『杖』的なレースでは取り返しのつかないほど差をつけられていても、『飛躍』さえできれば凡人であっても最速のクロウサーを追い抜ける。
それがこのレースの最大の特徴なのだ。
問題は、トップに『飛躍』されるとどうしようもない点。
『飛躍』を発生させやすいのは『逆転の物語』ゆえにそうそう起こる現象ではないが、ティリビナ人が持つ『未知』のポテンシャルは会場を大いに沸かせている。
最高潮の盛り上がりは、人々にとって未だ謎に包まれた民族であるティリビナ人への期待感に由来するものだろう。ロードデンドロンは活躍を望まれているのだ。
『飛躍』だけは何としてでも阻止しなければならない。
あるいは一位通過を確定させて二位三位狙いのライバルを蹴落とすべきだろうか?
ユディーアは最初からトップを狙っているわけではない。
『空使い』選定レースに参加できるのはこの予選の上位三名だ。
流れは確定しつつある。
ロードデンドロンに続こうとしている有力選手に狙いを絞って作戦を練り直した方がいい頃合いだ。しかし、と内心で葛藤する。
『ティリビナ同胞団』をこのまま放置することに抵抗があった。
ロードデンドロンの背後にはスーリウムがいる。
神の子。時の支配者。クナータの未来回想さえ欺く超越者のひとり。
ユディーアがレースに紛れ込んだ暗殺者を探る間、スーリウムはノゴルオゴルオが押さえるという話だったが、あの狡猾なトロルの言葉を全て信用するほど間抜けにはなれない。
駄目だ、やはり仕掛けよう。
隠し持った銀貨を強く握りしめようとした時、前方で動き。
黒い肌の男がほとんど動いていない箒を担いで飛翔している。
速い。既に鳥人の横に並んでいる。
彼に速度を与えているのは箒ではない。本来であれば清められるはずの対象、浄化によって速度を生み出す『穢れ』が、箒の一時的な機能停止によって凝縮されていた。
箒が掃き清めるべきは塵。加速のための燃料。
それは様々な形で自然界に存在するが、男が操るのは最もありふれている塵だった。
「砂だ! 『ハルムシオンの風』から出走のアサブ選手、砂の精霊を使役して猛烈に追い上げている! おおっと、砂嵐に巻き込まれたクロウ選手がここでリタイア!」
「亜大陸の砂漠が生んだ強力な呪術ですね。序盤は箒を加速させるための浄化対象と思わせておいて、精霊の使役という本命を隠していた。意表を突くいい演出です」
砂塵が巨大な人型をとって男を肩に乗せ、下半身のかわりに渦巻く砂の竜巻が推進力を発生させていた。黒檀の民は前方の『枯れ木野郎』と罵声を浴びせながら加速し、観客からのブーイングを背に受けながら大炎上する。
政治的に望ましくない差別発言は意図的な挑発だ。
ちびシューラからの警告とペナルティを完全に無視して出走資格を即時剥奪された『レースの乱入者』を無人機械が排除しようと動くが、それらを力ずくで捻じ伏せて加速、トップに襲い掛かろうとする黒檀の民アサブ。彼は勝利など望んでいない。完全にロードデンドロン個人を狙って妨害しようとしているだけなのだ。
『門』に到達する寸前のティリビナ人に猛追した砂の精霊がその巨体で突進、圧倒的なサイズ差に押し負けた木製箒が大きく横に逸れていく。
ロードデンドロンは樹皮に覆われた顔に怒気を漲らせてアサブに反撃する。
熾烈なデッドヒートを通り越した空中格闘。
ここまでの流れはユディーアにとっても想定外だ。
『ハルムシオンの風』がどういう目的が動いているのかはわからない。
いずれにせよ、これは好機だ。
ジュティアとミナに波乱に満ちた過去の戦場を回想させながら砂嵐を乗り切ってもらう。二人でいることには大きな意味がある。会話による絆の強調や自然体でのやりとりによる歴戦の探索者であることのアピール。それなりに名が売れているコンビであるため一定数のファンもついているし、状況をコントロールするための要員としては申し分ない。
ティリビナ人が速度を落としたいま、探索者コンビにはそれ以外の有力選手の前で『立ちはだかる壁』として強敵の役割を演じてもらおう。
既にレースは中盤を迎えている。
ユディーアはこのまま後方集団を制御しつつ終盤に『波乱』を巻き起こして全体を減速させ、その中でも止まらない『強い文脈』を背負った選手に狙いを定めて観察、状況に応じて妨害すればいい。この予選はあくまでも前哨戦。
本選での目的は暗殺者の妨害。その正体を探ることだ。
必要なのは他の選手たちの情報。
そして『使いやすい』選手をユディーアと共に勝たせることだ。
このレースは選別。手駒として有用な『物語』を絞り込むための試験である。
はっきり言って本選の参加者たちは予選に集った素人集団とはレベルが違う。
過酷極まりない二日間、走り切るだけでも困難なコースを生き残るためには手段を選ばずにあらゆる備えをしておく必要があった。
妨害に次ぐ妨害によってレースの流れが遅くなっていく。
選手同士の激突は盛り上がりを生むが、やり過ぎれば展開は停滞し、観客たちには次第にフラストレーションを貯めていくことになる。
頃合いだ。ユディーアは用意していた作戦を実行した。
後方集団を買収、指示したのは単純な呪文詠唱。
大人数による大規模な儀式呪術がユディーアひとりに物語の流れを注ぎ込む。
多くの参加者が抱えた事情を全て背負う。ティリビナ人と鉄願の民が結託した卑劣な策によって敗退が確定した者たちは、せめて一矢報いるために最も可能性のあるユディーアに希望を託した。ライバルたちの想いを胸に、勝利した暁には賞金を分配すると約束して飛翔するユディーアを、巨大な呪文が包み込んでいく。
オルゴーの滅びの呪文。
粗雑なものだが、『大人数の物語を束ねる』という目的に特化したそれは集団詠唱によって完成までの時間を早回ししてユディーアに速度を与えた。
ぐんぐんと加速していくユディーアはついに二位争いをしている集団に追いつき、その勢いで二人乗りのマジックミサイルに追い付いた。
呪文竜の放つ勢いが二人組を前に押し出し、マジックミサイルが宙に描く軌跡を辿るようにユディーアの箒がサーキットを飛ぶ。傍目には熾烈な二位争いにしか見えないであろう結託。破壊的な投射呪術としての性質を有するマジックミサイルとオルガンローデに巻き込まれることを恐れて近くの選手たちは真横につけることができない。抜こうとして呪力の余波にぶつかればクラッシュしかねないのだ。
本来、集団のヘイトを集める悪役はジュティアとミナの二人組にやらせる予定だった。
ハイマンが文明否定の術で広域妨害を行ってくれたことでベテランコンビを温存することができそうだ。このままいけば優秀な手駒をそのまま保持して二位三位でゴールできる。
一位のロードデンドロンは炎上中のアサブの妨害を振り切ってラストスパートをかけようとしていた。このままいけば順当にトップのまま勝つだろう。
恐るべきは未知なる歌の力。ティリビナ人の呪術は謎に包まれており、その文化や神話も含めて神秘的なイメージがある。それを最大限に活用して優位を確保した形だが、それがどこまで本選でも通用するのかには興味がある。
背後にいるスーリウムは、もしかすると本気で狙っているのかもしれない。
『空使い』、すなわちクロウサー家当主の称号を。
だとすれば、参加者のロードデンドロンも尋常な使い手ではありえない。
それを証明するような出来事が起きた。
いつまでも決め手に欠ける状況に苛立ったのか、黒檀の民アサブが砂の精霊を更に激しく渦巻く砂嵐に変えて一気に突撃を行ったのだ。
激しく動く砂の風を纏った拳を振りかぶり、嵐の如き打撃を加えようとする。
瞬間、歌うティリビナ人の腕が鋭く閃いた。
何が起きたのか、ユディーアの目をもってしても捉えきれなかった。
確かなことは、砂の精霊が勢いを失ってただの塵と化したこと。
黒檀の民がよろめいて落下していったことだけだ。
実況の声は黒檀の民が地上で救出されたこと、気絶しているが命に別条がないことを知られてくれたが、だとしても今のはただごとではない。
『砂紋の拳士』アサブと言えばガルズやイアテム、セラメルといった準英雄級の探索者と並び称される達人だ。それをあの一瞬で倒すとは、ロードデンドロンはただ者ではない。
異常事態はそれだけに留まらなかった。
未知なる言語による、意味の分からない歌。
その響きに変化が生まれていた。
正確には、断片的な意味が周囲に伝わり始めていたのだ。
理解不能な現象。
風の温度が上昇する。ティリビナ人を取り巻いていた未知なる空気、知らないものに対する恐れや興味がその色彩を変えていく。
それは伝承だった。古い信仰、神への祈り。
大いなる母、あらゆる恵みをもたらす春への喜び。
祝祭の祈り。
ティリビナ人の歌はこの場に相応しい文脈を踏まえた加速呪文だったのだ。
その理解が聴衆に浸透した瞬間、ロードデンドロンが纏っていた風が二位と三位を大きく突き放す。前方に形成された門を一瞬で潜り抜けたティリビナ人は『飛躍』する。
ここに勝敗は決した。
圧倒的な存在感を保ったまま、ティリビナ人組織の代表者として参加する自称『緑天主』は一位でゴールに向かおうとしていた。喝采はすぐそこだ。
流れを変えることができなかった。やはりクナータを確保しているのは『ティリビナ同胞団』なのか? いずれにせよ、次の本選に備えて気持ちを切り替えなければ。
ジュティアとミナを確保したまま二位三位をキープできているのは大きい。
この二人と共闘してレースでの暗殺者探しに専念する決意を固めたユディーアは、間近に迫ったゴールに向かって加速する。すぐ前方でこちらの箒をさりげなく誘導・牽引してくれている二人組は頼もしい味方だ。報酬に色を付けた甲斐があった。
ユディーアが次のレースで二人組をどう活用していくかの算段を練りながらゴールしようとしたその時だった。
矢のように一陣の風が吹き、衝撃でユディーアの髪房が大きく真横に揺れる。
抜かれた。予兆や気配を一切感じさせない圧倒的な『劇的』が全てを一変させた。
オルガンローデの威圧感にも怯まず、その真横を更に強大な呪力を纏って飛翔していく選手がいた。夜の民さながらの黒マントで全身を隠した典型的な『ダークホース戦略』。
ユディーアが束ねていた後方集団の更に後ろでずっとチャンスを待っていたのだ。
『ごぼう抜き』。『一気に何人を抜き去ったか』などと言う記録は着順を競うレースにおいて何の意味もない。演出に懲りたければわざとゆっくり走って最下位から全力を出せばいいのだから。真面目に勝利を狙うのであればわざと後方につけたりはしない。
だが、テキストベースサーキットにおいては『逆転の流れ』や『劇的さ』を意識することも重要になる。ユディーアの演出もそのひとつだが、この黒マントは更に極端な手を使ってきた。後方で密かにオルガンローデの詠唱をしながら力を蓄え、最後の最後で一人ずつまくっていく。ひとり抜くごとに観客と実況は興奮を煽り、膨れ上がる期待感が『劇的』を呼び込んで大逆転勝利を引き寄せるのだ。
黒いマントが宙を舞う。
明らかになった華やかな姿に人々が魅了され、場は完全に支配された。
箒に刻まれたエンブレムが輝き影を走らせる。スポンサーは『シェイドラン』。
額に派手なサングラスをかけ、大きな目で挑戦的に前を見据える姿は美しさよりも凛々しさや力強さが印象的。長い前髪に派手なピンクパープルのメッシュを入れており、頬のダイヤシールが朱色を纏って夢を描く。ポシェットと髪留めはキャラもので、私的なセンスを隠さない性格の持ち主だとわかる。
その姿を見た瞬間、ユディーアは完全に思考を停止させていた。
自分が纏った集団構築オルガンローデを遥かに凌駕する強度の呪文竜による大飛躍。
個人で実現可能な規模としては破格のそれは、呪文的な精度や複雑さにおいてハルベルトが用いるような優れたものには遠く及ばない。
にもかかわらず、それは明らかにユディーアが知るどんなオルガンローデよりも力強かった。彼女の両手に宿る『鉤爪』よりも更に。
当然だ。あの『オルゴーの滅びの呪文』はオリジナル。
「信じられない、まさか彼女が出てくるなんて」
驚嘆すべき加速を続ける女、その華奢な身体が纏っているのは大きく改造されてはいるが、ユディーアが良く知る『竜導師』の祭服。
それも創世竜の神託を受ける者だけが身に着けることを許された巫女服だった。
竜の如き神話的飛翔で全ての参加者を抜き去った巫女が、トップを独走していたロードデンドロンに並び、ほぼ同時にゴールする。
全ての物語を強引に完結させる圧倒的な存在感。
このレースは彼女の活躍を引き立てるためにあったのだと万人に思わせる疾走。
決着は確定した。語るべきことは語られた。
他の選手たちは余白や数行の地の文で次々とゴールしたとだけ記されて終わり。その他は全て消化試合、それまでの結果から予想される順当な予定調和でしかない。
それほどの些事でしかないのだと思い知らせる力。それが主役が持つ『完結させる』力だった。テキストベースサーキットにおける展開とはそれほどまでに『主役中心』の物語だけを重視している。当然だろう、これは空の主役である『空使い』のためのレースなのだから。主役以外に価値は無いし、主役の座を奪えない者に割り振られる役や描写は必要ない。
これは圧倒的な速度と演出で物語を支配する主役のためのレース。
展開を支配していたのはロードデンドロンでもユディーアでもない。
『最も盛り上がる締めくくり方』だけを狙っていた竜の駆り手こそが物語を完結させるに相応しい強者だったのだ。かくして予選レースは終わりを迎えた。上位三名が決定し、物語は次のステージへと進む。上位三名。こちらを振り向いて何とも言えない表情をしている二人組との間に横たわるのは気まずい沈黙。ユディーアは瞬きして口を開いた。
「えっ?」
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