↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

3章ー9 「戦力外通告ではない in葉牡丹」

「━━ご、ゴメン、姉さン。ちょっと、ぼーっとしてたッ。」


 気まずそうに、けれど必死に虚勢を張ろうとする蕾。普段の彼からは、このような惨めな虚勢は滅多に見れない。


(……戸隠を発ってから、ろくに休息を取れてなかった。身体的にも精神的にも、相当、疲弊してるな。)


「━━━あとは僕に任せて、少し休んでいろ。大丈夫だから。」

 葉牡丹はただ、蕾を護りたかった。限界を超えて張り詰め切った彼の心を、少しでも休ませてあげたかった。だからこそ紡いだ言葉だった。

 しかし、彼女のその言葉を受けた瞬間、蕾の顔から一切の血の気が引いていた。


 蕾は言葉を失ったように呆然と葉牡丹を見ていた。

 その瞳の奥に広がっていたのは、純粋な『絶望』だった。


(……っ、しまった……!)


 その時、自分が犯してしまったことに気づく。

 蕾を労うつもりで、戦力外通告を出してしまったのだ。

 いつだって隣に立ち、お互いを護る対等な存在でありたいと願っていた彼に対して、「お前はもう役に立たないから引っ込んでいろ」と言ったも同然の言葉を投げてしまった。


 蕾の心が急速に崩壊していくのが分かった。


 またやってしまった、姉さンの足を引っ張った、姉さンに失望された、捨てられる━━彼の頭の中を埋め尽くしているであろう恐怖が、目に見えるように伝わってくる。


「ヒュッ……、ハァ、ハァ……ッ」


 突然、蕾が胸を押さえて激しく過呼吸を引き起こした。


「蕾!? 蕾、落ち着いて、僕を見るんだ! 違う、僕は君を━━!」


 慌てて蕾の肩を掴もうとした。しかし、手足を拘束する鎖が邪魔で身動きが取れない。


(クソっ!これさえなければ……!)


「━━ごめん、なさい。母さン」


苦しみと恐怖に顔を歪ませ、ガタガタと全身を震わせながら、彼はかすれた声で呟いた。


「……え?」


 それを耳にした瞬間、頭が真っ白になった。

 なぜ、今、そう呼ぶのか━━━。


 しかし、その疑問に答える間もなく、蕾の身体から完全に力が抜けた。グルン、と彼の青い瞳が上を向き、そのまま床へと崩れ落ちていく。


「蕾ッ!!」


 尋問室に、引き裂かれるような叫び声が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。