表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハプニングバーで人生が狂って、やっと普通になれた』  作者: こうた
第一章 「何者でもない日々」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/32

第31話「名前を呼ばれるだけで」

月曜日だった。



---


休日明けの会社は静かだった。



---


誰もが少しだけ疲れた顔をしている。



---



---


日高も同じだった。



---


だが以前と違うのは、



---


休日の記憶が少し残っていることだった。



---



---


真白の言葉。



---


「今の方が好きかも」



---



---


たったそれだけ。



---



---


社交辞令かもしれない。



---


何気ない一言かもしれない。



---



---


それなのに。



---


頭から離れなかった。



---



---


「おい日高」



---



---


田辺の声で我に返る。



---



---


「聞いてるか?」



---



---


「あ、すみません」



---



---


田辺は笑う。



---



---


「珍しいな」



---



---


「恋でもしたか?」



---



---


冗談のはずだった。



---



---


でも日高は笑えなかった。



---



---



---


夜。



---


駅前。



---


ネオン。



---



---


気づけば足はいつもの方向へ向かう。



---



---


エレベーター。



---



---


上昇。



---



---


扉が開く。



---



---


音。


光。


空気。



---



---


そして。



---



---


「こんばんは、日高くん」



---



---


真白の声。



---



---


名前。



---



---


ただ名前を呼ばれただけ。



---



---


なのに、



---


少しだけ嬉しい。



---



---


「こんばんは」



---



---


真白は笑う。



---



---


「今日は元気なさそう」



---



---


「そうですか?」



---



---


「うん」



---



---


少し考えて、



---


真白は続ける。



---



---


「疲れた日?」



---



---


日高は答えに迷う。



---



---


疲れているのかもしれない。



---



---


でも本当は。



---



---


別のことで頭がいっぱいだった。



---



---


「まあ、ちょっと」



---



---


真白はそれ以上聞かなかった。



---



---


ただ隣の席を軽く指す。



---



---


「座る?」



---



---


その仕草が自然すぎて、



---


日高も自然に腰を下ろす。



---



---


少し近い。



---



---


でも不思議と落ち着く。



---



---


店内では誰かが笑っている。



---


グラスの音がする。



---



---


その中で、



---


二人の間だけ少し静かだった。



---



---


「日高くんさ」



---



---


真白が言う。



---



---


「最初の頃と全然違うね」



---



---


「そうですか?」



---



---


「うん」



---



---


真白は少し笑う。



---



---


「最初はずっと周り見てた」



---



---


「今はちゃんと人を見る」



---



---


その言葉に、



---


日高は少しだけ驚く。



---



---


自分では気づいていなかった。



---



---



---


奥の席。



---


美玲が煙草をくわえながらこちらを見る。



---



---


「真白」



---



---


「また日高いじめてる」



---



---


「いじめてないよ」



---



---


真白は笑う。



---



---


「褒めてるの」



---



---


その会話。



---



---


ただそれだけなのに、



---


日高の胸は少しだけ落ち着かなくなる。



---



---



---


時間が過ぎる。



---



---


帰る時間。



---



---


立ち上がろうとした時だった。



---



---


「日高くん」



---



---


真白が呼ぶ。



---



---


「はい」



---



---


真白は少し考えてから言った。



---



---


「無理しないでね」



---



---


たったそれだけ。



---



---


でも。



---



---


最近、



---


そんな言葉をかけてくれる人は少なかった。



---



---


会社では成果の話。



---


仕事の話。



---


失敗の話。



---



---


誰も、



---


無理しているかなんて聞かない。



---



---


だからこそ。



---



---


その一言が、



---


妙に心に残った。



---



---


帰りの電車。



---


窓に映る自分を見る。



---



---


少しだけ笑っている。



---



---


それに気づいて、



---


日高は小さくため息をついた。



---



---


(俺、何考えてるんだろうな)



---



---


答えは出ない。



---



---


だが確かなのは、



---


この場所がただの居場所ではなくなり始めていることだった。



---


第31話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ