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『ハプニングバーで人生が狂って、やっと普通になれた』  作者: こうた
第一章 「何者でもない日々」

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第29話「変わりたいと思った、その瞬間」

日高 mootummaa 一本道は、朝から少しだけ眠かった。



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理由は分かっている。



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夜更かし。



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それだけ。



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でも以前なら、



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「まぁいいか」



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で終わっていた。



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今は違った。



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(このままでいいのか)



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そんな考えが、少しだけ残る。



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会社。



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朝礼。



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十五が通り過ぎる。



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「日高、今日帰り飯行かない?」



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その言葉に、



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日高は一瞬止まる。



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昔なら嬉しかった。



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誰かに誘われること自体、



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珍しかったから。



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「いいな」



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そう答えかける。



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でも。



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頭に浮かんだのは、



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別の予定だった。



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夜の場所。



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「ごめん、今日は……」



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そこまで言って、



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言葉が止まる。



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理由を言えない。



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「用事ある」



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そう答えた。



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十五は笑う。



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「そっか」



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ただそれだけ。



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でも日高の中では、



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小さな違和感になった。



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昼休み。



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田辺が言う。



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「最近さ」



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「お前、ちょっと変わったよな」



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「前はもっと悩んでた感じした」



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日高は箸を止める。



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「そうですか?」



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田辺は頷く。



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「うん」



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「今のお前、楽しそうだけど」



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少し間。



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「なんか危うい」



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その言葉は、



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思った以上に刺さった。



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夜。



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駅前。



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いつものビル。



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いつもの道。



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でも今日は、



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昨日より少しだけゆっくり歩いた。



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エレベーター。



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ボタンを押す。



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上昇。



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扉が開く。



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いつもの空気。



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真白が笑う。



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「こんばんは」



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「こんばんは」



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その瞬間。



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いつもの安心が来る。



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でも。



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今日はそれだけじゃなかった。



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奥で美玲が言う。



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「今日、考え事してるね」



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日高は苦笑する。



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「最近よく言われます」



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美玲は少し笑う。



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「考えるようになったんだよ」



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「前は流されてただけ」



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その言葉に、



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日高は黙る。



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流されていた。



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否定できない。



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席に座る。



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会話。



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笑い。



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いつも通り。



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でも頭の片隅に、



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昼間の十五の顔が浮かぶ。



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資格。



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仕事。



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彼女。



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未来。



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自分には何がある?



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その問い。



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今までなら、



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考えないようにしていた。



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でも今日は違った。



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帰り道。



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田辺と歩く。



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田辺が言う。



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「なぁ日高」



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「俺らさ」



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「このままでいいのかな」



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珍しい言葉だった。



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いつも明るく、



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博打の話ばかりする田辺が。



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そんなことを言った。



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日高は驚く。



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「急にどうしたんですか」



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田辺は笑う。



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「いや」



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「なんとなく」



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その“なんとなく”が、



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妙にリアルだった。



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人生を変えるのは、



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大きな決意じゃない。



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ふとした瞬間の、



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小さな違和感。



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日高はまだ知らない。



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この夜が、



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第一章の終わりに向かう始まりになることを。



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第29話 終

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