表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハプニングバーで人生が狂って、やっと普通になれた』  作者: こうた
第一章 「何者でもない日々」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/32

第21話「“普通の自分”がどれか分からなくなる」

日高 恒一は、朝の電車でふと違和感に気づいた。



---


昨日の夜の記憶が、少しだけ曖昧だった。



---



---


(ちゃんと帰ったよな)



---



---


帰宅したことは覚えている。



---


でも、その“途中”が抜け落ちているような感覚があった。



---



---


スマホを見る。



---


特に記録はない。



---



---


それでも不安はない。



---


むしろ、いつも通りだと思ってしまう。



---



---



---


会社。



---


朝礼。



---


資料。



---



---


田辺が隣で欠伸をする。



---



---


「昨日どうだった?」



---



---


その質問が一瞬だけ重い。



---



---


(昨日……)



---



---


思い出そうとする。



---



---


だが輪郭がぼやけている。



---



---


「普通でした」



---



---


そう答えるしかなかった。



---



---


田辺は笑う。



---



---


「お前、そればっかだな」



---



---



---


昼休み。



---


平岡がスマホを見ながら言う。



---



---


「最近さ、時間飛ぶよな」



---



---


岡本が頷く。



---



---


「楽しいと早いんだよ」



---



---


日高はその会話を聞きながら、



---


少しだけ引っかかる。



---



---


(楽しい?)



---



---


本当にそうなのか。



---



---


でも否定できない。



---



---



---


夜。



---


駅前。



---


ネオン。



---



---


エレベーター。



---



---


もう“行くかどうか”ではない。



---



---


“行くもの”になっている。



---



---


扉が開く。



---



---


音。


光。


空気。



---



---


その瞬間、



---


身体が軽くなる。



---



---


真白がいる。



---



---


「こんばんは」



---



---


「こんばんは」



---



---


そのやり取りが完全に習慣化している。



---



---


真白は少しだけ笑う。



---



---


「今日、ちょっとぼーっとしてる?」



---



---


「そうですか?」



---



---


「うん。いつもより遠い感じ」



---



---


日高は言葉に詰まる。



---



---


遠い。



---



---


どこから?



---



---


会社?



---


ここ?



---


自分?



---



---


答えは出ない。



---



---


奥の席。



---


美玲が煙草を吸いながら言う。



---



---


「もう“どっちが本当の自分か”分からなくなってるでしょ」



---



---


その言葉に、



---


日高は少しだけ固まる。



---



---


否定したい。



---



---


でもできない。



---



---


最近、



---


会社にいる自分が“作り物”に感じる瞬間がある。



---



---


一方で、



---


ここにいる自分の方が自然だとも思う。



---



---


その矛盾が、



---


少しずつ崩れ始めていた。



---



---


席に座る。



---


会話。



---


笑い声。



---


距離。



---



---


その空気の中で、



---


日高は小さく思う。



---



---


(こっちが普通かもしれない)



---



---


その考えが浮かんだ瞬間、



---


少しだけ怖くなる。



---



---


でもすぐに、



---


その怖さも薄れていく。



---



---



---


帰り道。



---


終電。



---



---


窓の外。



---


ネオンが流れる。



---



---


その光を見ながら思う。



---



---


(普通って、どれだっけ)



---



---


答えは出ない。



---



---


ただ一つだけ確かなのは、



---



---


選び続けていたつもりの人生が、



---


いつの間にか“流れ”に変わっているということだった。



---


第21話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ