表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ハプニングバーで人生が狂って、やっと普通になれた』  作者: こうた
第一章 「何者でもない日々」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/32

第17話「少しずつ、現実が遠くなる」

日高 恒一は、朝のアラームを三回止めた。



---


身体が重い。



---


眠い。



---


だが理由は分かっている。



---


帰宅が遅くなった。



---


それだけだ。



---



---


以前なら、



---


「こんな生活まずいな」と思ったはずだった。



---



---


でも最近は違う。



---



---


(まぁ、まだ大丈夫か)



---



---


その“まだ”が増えている。



---



---


会社。



---


朝礼。



---


上司の声。



---


資料確認。



---



---


いつも通り。



---


なのに、どこか現実感が薄い。



---



---


田辺が小声で言う。



---


「眠いな」



---



---


平岡も笑う。



---


「昨日ちょっと長かったですからね」



---



---


岡本は缶コーヒーを開ける。



---


「まぁ若いうちはいける」



---



---


その会話に、



---


日高も自然に混ざっている。



---



---


少し前まで、



---


こういう話題に自分がいること自体、不思議だった。



---



---



---


昼休み。



---


同期の十五とすれ違う。



---



---


「日高、最近忙しい?」



---



---


その言葉に少し詰まる。



---



---


「まぁ、普通かな」



---



---


十五は頷く。



---



---


「そっか」



---



---


それだけ。



---



---


だが日高は少しだけ気まずくなる。



---



---


十五は資格勉強を続けている。



---


彼女もいる。



---


休日は旅行に行くらしい。



---



---


一方、自分は。



---



---


夜。



---


店。



---


帰宅。



---


睡眠。



---



---


その繰り返し。



---



---


(何やってるんだろ)



---



---


一瞬だけ思う。



---



---


だが、その思考は長く続かない。



---



---


夜になれば、



---


また身体が自然に動くから。



---



---



---


ハプニングバー。



---


エレベーター。



---



---


最近はもう、



---


“向かっている感覚”すらない。



---



---


ただ移動しているだけ。



---



---


扉が開く。



---



---


音。


光。


空気。



---



---


その瞬間、



---


少しだけ安心する。



---



---


真白が笑う。



---



---


「こんばんは」



---



---


「こんばんは」



---



---


もう自然すぎる。



---



---


真白は少しだけ日高を見る。



---



---


「疲れてる?」



---



---


「まぁ、ちょっと」



---



---


「仕事?」



---



---


日高は少し考える。



---



---


「……分からないです」



---



---


真白は何も言わない。



---



---


ただ静かに頷く。



---



---


その沈黙が逆に楽だった。



---



---


奥の席。



---


美玲が煙草を吸っている。



---



---


こちらを見て言う。



---



---


「現実薄くなってきた?」



---



---


日高は笑おうとする。



---



---


「そんなことないです」



---



---


でも声が弱い。



---



---


美玲は煙を吐く。



---



---


「みんな最初そう言うんだよね」



---



---


「“まだ大丈夫”って」



---



---


その言葉に、



---


少しだけ胸がざわつく。



---



---


でも否定できない。



---



---


最近、



---


会社にいる時間の方が“仮の自分”みたいだった。



---



---


ここでは笑える。



---


ここでは話せる。



---


ここでは孤独じゃない。



---



---


その差が危険だった。



---



---


帰り道。



---


終電。



---


窓の外のネオン。



---



---


ぼんやり流れていく光を見ながら、



---


ふと思う。



---



---


(もしここを知ってなかったら、俺どうなってたんだろ)



---



---


その問いに、



---


答えは出ない。



---



---


だが同時に。



---



---


(知ってしまったから、戻れないのかもしれない)



---



---


そんな考えも、



---


少しずつ現実味を帯び始めていた。



---


第17話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ