人生の日は長く
いつも通りゲハイムトスでクレープを買い、ついでに人参パイを試作品として渡されてから俺は事務所に向かった。
「今日は簡易スタジオ借りますね。」
「あ、今日は前言っていたモデルの事だっけ?」
「はい。まぁ、量が多いんですけどね………何枚分やらせるんだよ………。」
簡易スタジオは、まぁ、空間プロジェクターと呼べる物を使いリアルな背景を映し出す。事務所の簡単な広告の写真を作るときに使ったり、こうしてモデルなどで使うための部屋だ。近くにはメイク室とかかれた部屋もある。
俺は送られてきた段ボールを三個、往復しながら持ってきた。
「確か、ヘルト君のお母さんに服のモデルを交換条件に幼なじみさんと妹さんにバレないように口裏合わせてくれるって話だったよね……。」
「今度からはここに送られるようにしているので………。」
家から持ってくると滅茶苦茶疲れる。それに、悟られたらアウトだし。
今事務所には花音と牧村さん、最近知り合った同じ事務所の傘村 葉さんがいた。
まぁ、同じ事務所というか芸能関係の人には知られていても問題ないのですぐに招待を明かしたけど。
女優になってから6年の葉さんは21歳で女優を終えてからドラマのカメラマンや監督の方に就くのが夢らしい。今は女優の気持ちを知るために女優として活動している。まぁ、そのまま続けても良いんじゃないかと思ってしまうほど演技力や魅力がある。ちなみに、海外ロケなどでしょっちゅう外国にいることが多い。飛行機は平気なのにジェットコースターは苦手らしい。
ちなみに、髪はおさげにしていて胸はB。
「そういえばファッションデザイナーでしたよね。ヘルトさんのお母さん。なんていうブランドですか?」
「ゾマーゾゾヴァネンデですね。ドイツ語で夏至という意味で、母さんは人生の輝く時間が長くなるようにという感じでつけてましたね。」
その言葉に、その場にいた花音と葉さんが固まった。
「ゾマーゾゾヴァネンデってあれですよね?海外では専門店が何軒かあって日本には少ししか来ないですけど有名な……。」
花音がそう言った後黙り込む。
「………ヘルト君、そのブランド…………有名なのかしら?」
牧村さんが不思議そうに聞いてくる。
「俺とはあんまり話しませんから有名どころなのか分からないんですけどね。」
そう言ってると花音が固まっていたと思ったら急にしゃべり出した。
「そのブランドは発売当初から海外で人気があってそれでほとんど売れてしまうので日本に渡ることがあまりなく、日本で扱っている店が少ない事もあって私達は憧れるしかない代物で海外には専門店があるのに日本には無いということで海外にそれを買うためだけに旅行する人も少なくなく、かといって高級品ではなく、たたえられているのはデザイン性の………?」
「ブランドに詳しくない私でも知ってるぞ。妹が欲しがることが多いんだ。私は海外に行くことも多いから頼まれるんだよ。」
二人の言葉に俺は唖然とした。
「………そこまで有名だったのか………あの自由奔放な母さんのブランド………。というか日本にも専門店できるらしいけど。」
「「ほんとう(です)か!!?」」
というよりその店の資金に仕送り分が使われたせいで忙しくなっているのだけど。
「とりあえずモデル用に撮った後は自由にしていいと言われてるから着れる物だったらやれるんだけど……。」
まず身長が違うしな………。
羽織るようなものならなんとかなるかもしれないが、身長の関係で無理な物が多いし。
「そういえば牧村さんは俺と同じぐらいの身長ですよね………。」
「そうなるわね………。」
ということで、使えそうな物は牧村さんに譲ることになった。羽織るのは残りの二人と火恋に。
「え~っと、一個目に入っているのは…………メイク道具、あ、説明書も………まぁ、やっておかないと女性に見えそうに無いしなぁ………。」
自分一人でもできるメイクなのでサクッとやってしまう。
「カメラは私にやらせてくれないか?カメラマンとしての練習も兼ねられるいい機会だからな。」
数時間後…………………。
「はぁ…………。パッドを外したり、髪をスプレーで染めたり………辛かった………。」
「一人三役ですからね……………。モデルだけで。」
「シュバルツの時は男の格好だから良いんだけどね………。」
「正確には一人六役よ。しかも明日から高校始まるし………。」
その言葉に、さらに疲れが出る。
「忘れてた………明日から高校にも行かないと行けないんだった………。」
「私もアイドルの仕事楽しくて忘れてました……。」
もういっそのこと高校を辞めようかとも思ってしまう。
この調子だと体が保つか…………。
「まぁ、高校には行くものだよ?私も体育祭や文化祭は思いっ切り遊んだし。」
「多分叔父さんのせいでこの二人はサプライズライブ入れられそうだけどね………。」
………もうやけくそにやるしかないか………。
………風呂が事務所にあるっ素晴らしいと感じるのはまた別の話。




