チェンバロサークルの優雅な生活
「さてと、行くか………。」
そう言って向かったのはサークルの活動場所であるアパートの事だ。
アパートの個室に入った瞬間、
「はぁ……急な用事はなんだったんだ?ヘル?」
との第一声だった。ちなみに、ヘルというのは俺のチェンバロサークル内での呼び方だ。
「色々とありまして………。」
まさかアイドルとしてドラマにでるためのレッスンしてたなんて言えない。
「ま、とりあえずトトに頼まれていたものは持ってきたんだな?黒城一夜のフィギィア。」
「はい………一昨日店にあったやつ全部穫れました。」
「よくやった。ところで、その髪はなんだ?」
あ、九条さんに言われた通りネコミミヘアにしたままだった。
「まぁ、問題ないだろう。とりあえず、一つは私がもらい、残りはトトに渡してやれ。」
「分かりました。」
この人は、ユカナさんという、チェンバロサークルのリーダーだ。年は今年で24で、同じサークルのヤオさんと婚約している。ちなみに本業はネット上のカリスマ塾講師だ。ちなみにチェンバロサークルは合計で4人だ。
役割については、全員の紹介をしてからにする。
とりあえずトトの作業部屋に向かった。
「なんで昨日こないんです?一昨日もです。あのコスプレ見損ねたです。」
そう言ってそっぽを向くのはトトこと、戸塚トルシェントだ。ハーフらしく、雪のような銀髪に青い瞳という、俺の翠のオッドアイとは違って自然な瞳の色である。
ちなみに、俺とトトは同い年だ。
「綾埜葉風の衣装は子供っぽいのです。お仕置きには十分なのです。」
あぁ~、ほんっとうに一昨日来なかったのを根に持っているな…………。
「悪かったって。ほら、黒城一夜のフィギィア。」
そう言って俺はフィギィアをトトに渡した。
「これもまた着てもらうのですよ。ふふ、恥ずかしがるがあいいですよです!!」
「…………こいつのもやんの!?」
トトはニヤリと笑っていた。
トトはこれでもお嬢様らしく、その伝手を使って良い生地をできるだけ安く買っているらしい。
ちなみに給料はそのコスプレ(私服に使えるデザイン)と彼女のお小遣いから出される。
「作中でも一夜は嫌がってますからねです。それを当日いきなり着ることになればヘルも疲れるです!!」
「とゆーか時期的に夏コミと重なるんだけど!!それメチャクチャ暑そうなんだけど!!」
「大丈夫です……。ちゃんと涼しくなる素材で作るです。………別にヘルにネッチューで倒れてほしくないからであって、心配だからじゃねーですよです。」
「ネッチューにならないと気遣ってくれてありがとう、トト。」
そう言いながらトトの頭を撫でる。
丁度いい頭の位置なんだよなぁ……。
それが5分ぐらい続いた。
手を離すと、トトが「べ、別に撫でられて嬉しかった訳じゃないですからねです。言い出すタイミング無かったんです!!」と言ってきた。
そんなとき、ガラガラーと、海さんが目に隈を作りながらこちらを見ていた。
「はぁ………カップル二組に挟まれながらやる作業ほどめんどくさく苦痛な物はない……………。」
「わ、私とヘルは………まだ…カップルじゃねーですよです!!」
「はぁ~。じゃあ夫婦漫才でいいや。」
「め、夫婦!?違うですぅ~。」
「それがムカつくんだよ。私なんか妹と同じようにモテないんだよ。つーかどっかのアイドルのメイク担当になったとか聞いたがな………。人の魅力を最大限に引き出すことだけがメイクじゃねぇんただ。コスプレよりメイクを目立たせることは邪道出し、圧化粧なんかしてみろ。服に付いたら台無しなんだ。」
そう言って、コスプレするときにメイクしてくれる砂月 海さんが言った。
それにしても、俺をフェアにメイクした人と瓜二つな所が特徴だ。ちなみに海さんは俺の他にもトトやユカナさんにもメイクをしている。
「とゆーか次のネタは決まらないのか?ユカナが書き始めないんだが………。」
「ヤオの親が結婚認めてくれないからそれを抗議しにヤオが行っちまってさ………。」
「そういえばなんで反対されてるんですか?」
これは俺がサークルに入った時からの事だ。
ちなみに、俺の前にトト、その前に海さんが入ったらしい。
「私の家とヤオの家は結構裕福な家庭でな……。私の母は大学教授、父は通信教育教材(ベネ○セのチャ○ンジみたいなやつ。)の高三の部門の英語担当。それでヤオの両親に私はネット塾の講師………私はまず落ちこぼれだと思われている。まぁ、私はこれでもネット塾使用者の偏差値を最低でも10は底上げする実力だが。一科目だけじゃなく、全部の教科で毎日かなりの量の質問に的確に返すという事をしているからな………。落ちこぼれではないが、ぱっと見では、下手したらただのニートみたく見えるのかもな……。」
まぁ、この人に教わってから段々とサークルに来れる時間が増えるぐらい成績は良くなっていたけれど、いつ仕事してるのかが分かりづらい。
「とりあえず描きためた奴のトーン貼り頼むぞ、ヘル。」
と言われて俺はトーン貼りを始めたのだった。




