演技力強化のための生活の変化
「おはようございまーす。」
「あ、九条さん。もう来てたんですか?あれ?その子は?」
「あ、この子アイドル志望の……………。そういえば名前を聞いていませんでしたね………。」
「ここには逸材が集まるのかしらね………。」
「いや、俺なんですけど………牧村さん……。」
「も、もしかしてヘルト君!?」
最初から俺ですよ……。
「はい……………。」
「ヘルト君って女装も出きるのね………。」
牧村さんがやや呆れながら言った。
「いや、全く持って似合わないと思うんですが。」
「いえ、私が女性と間違えるほどですから…………それにしでも、あなたがフェアの正体だとは………。」
「……………そ、それよりも、レッスンのこと………。」
花音がそう言ったので、とりあえずやってみることになった。
レッスンというか、ドラマでは、アイドルユニットとして花音と二人で踊りながらデュエットするものだ。
「………歌は合わせられるんですけど、ダンスとかは難しいです………。そーゆーことあんまりやってこなかったので………。」
花音とのデュエットは上手く合わせられても、いれられるダンスが上手く踊れない。
「この先ドラマなんかで仕事の依頼が来たときに演技が出きるようになっておかないと………。何か良い練習法は無いかしら……。」
牧村さんがそう言った。
元々俺は成り行きでアイドルになったわけで、なにかの演技をしたことはあまりない。声真似やコスプレは出きるのだけど、演技とかは………。
「あら、それならいい方法がありますよ。牧村さん。」
そう言ったのは九条と呼ばれた人だった。
「まず、私の名前を言ってませんでしたね………私は九条 弧鉄。まぁ、本当の名字は蜂村ですけど………。今は高校二年生です。」
「それで九条さん、その方法って………。」
「女装ですね。高校などでの。」
「それは確かにいい方法だと思うけど………ヘルト君がやってくれるのかしら?」
「フェアの正体は秘密でしたよね?しかし、社長以外の男の人がこの事務所に入っていると、まず確実に疑われますね。この子がフェアではないか?と。」
確かに……………。
「それに、養成所の子が何人か来て練習すると言うこともあります。その中に混じることも可能ですよ。」
「そうね………ここに入る子が定期的にここであなた達とレッスンすることもあるしね………。」
「まぁ、それには高校にも女装して行くことを意味しますが………。」
「それも手配すれば間に合うわ。」
「なら、ヘルト君を少し借りますね。メイクの仕方と、髪型について説明しておきますので………後、一日だと女性としての動きをマスターしきれそうに無いので、しばらくはここに通うように言っておきますね。」
「分かったわ。」
そして、しばらく女性としての事を教わった。
メイクはかなり安い化粧水をパンパンとするだけでいいのだけど、髪が大変だった。とりあえず輪ゴムで留めなければそれでいいらしい。
声については、女装中は少しだけ声を高くすることを言われた。
まぁ、演技力が付くのなら問題はないのだが、なんで女装なんだ…………。と嘆いた。
「明日は私は仕事がありますので…。」
「あ、俺も明日は来れないかもしれません。サークルの集まりがあって……。」
サークルとはもちろんチェンバロサークルの事だ。
なるべく早くトーン100枚と、トトのコスプレにつき合わなければならないのだ。
「ならヘルト君、少しサイズ計るわよ。」
そんなこんなで一日が終わると、ふと冷蔵庫に入れていたあれの存在に気づいた。
「そういえばあれまだ食べてなかったな……。」
冷蔵庫を開けてみると、そこにあの箱は無かった。
ゴミ箱にあの箱の残骸が………。
「な、なんで無いんだ………。俺のケーキが………。」
まさか全部食べられてるとは思わなかった。
「そういえば、お二方がレッスンしてる間に私は何個か食べましたね。」
九条さんがそう言う。
「ヘルトさんが九条さんに連れて行かれたときに疲れてて甘いものないかな~って開けたらあったのでつい………。」
花音は一個、また一個とやってる内に止まらなくなっていたと言っていた。
「ヘルト君、この冷蔵庫の中は基本的に領域がないの。叔父さんがプリン入れてたら誰かが平らげるなんて日常茶飯事よ。」
牧村さんがそう言いながら口を拭いている。
あなたも食べたんですね…………。
「でもこのケーキ隣では売ってませんよね?」
「そうですね………あれだけシンプルなのは初めてみました………。」
「となりは梨を使ったケーキはないから、別の所ですよね………。」
「………そこのオーナーは場所は秘密にしてくれって言われてるから、教えませんよ。」
そう言うと、九条さんの姿が陽炎のように揺れる。
「………授業料です………。」
「へ?」
「私が直々に演技を教えますのでその授業料にそのケーキを持ってきなさい!!いいですね!!」
物凄い迫力だった。
「ケーキの力をなめない方がいいわよ、ヘルト君。」
「どんなレッスンもケーキひとつというご褒美のために耐えることができる………魔性の食べ物ですからね………対価は大きいですけど………。」
とりあえず、できるかぎりここに持ってこれる日は持ってくるようにしよう。
そう心に誓った今日だった
って、明日から女装してここに来ないといけないのか………と、思い出したのは、家に帰ったあとだった。




