僕っ子は初恋の感情を知る
僕という一人称だけど、僕は女の子だ。
名前は白井 氷室。
今結構話題になっているアイドルグループのコロナの一人だ。コロナは、グラツィオーゾ・ヘッロ所属のグループだ。
事務所の名前の由来はイタリア語で美しいとかわいい立ったと思う。
コロナの名前の由来は、グループの三人の名前の下の文字だ。僕はロの字にあたる。
僕は、男の子が欲しかった両親がせめて一人称だけでも男の子っぽくという願望の影響だけど、今はあまりなにも感じない。
昨日までツアーで結構遠くまで行った帰りで、打ち上げ兼休みということになっていたのだった。
久しぶりの午後だけのオフを貰った僕は、ゲームセンターに来ていた。
ここに来るのは初めてで、お菓子を買ってくる係なのを少し忘れて僕はゲームセンターの中を歩いていた。
「あ、このゲーム面白そう。でも、かなり待つことになるなぁ………。」
軽快なリズムで動いているダンスゲーム?は、並んでる人が多く、多分やろうと思ったら帰るのが遅くなるだろうなぁ………と思いながら、その場所から離れた。
聞いていると、知らない曲も知ってる曲も流れている。
なんでゲームセンターに太鼓が置いてあるんだろう?と疑問も感じながら、歩いてみると、クレーンゲームの中にお菓子の詰め合わせの入っている物を見つけた。
「これやれば少しは出費が減るかなぁ………。」
財布を開いて中を覗くと、最近新しい漫画を買ったばかりだからか、小銭があまりなかった。
お札は何枚かあるんだけど。
その時、急に怒鳴られた。
「おい、お前金持ってんなぁ。渡せよ。どうせ対したことに使わねぇんだろ?」
「や、やめ…………。」
「うっせぇ!!しばくぞこらぁぁぁぁぁぁ!!」
そう言いながら男は僕が背を向けた筐体にドンと片手を突き出し、僕の逃げ道を塞いだ。
それからほんの何分か………いや、何十秒かたったとき、
「あ、あの~。」
誰かが、僕のそばに来た。助けにきたのかは分からないけど。その人は、灰色の長い髪で、顔は見えづらい。だけど、今はこの人を見ると、不思議と心の中に安心感ができた。
でも、恐怖のためか、あまり耳が聞こえない。
脳が聞くことを拒否している。だから、うまく聞こえなかった。
そして、男があの人の手首を掴みながら何か叫んだ。
その後、あの人はその男の股を蹴り上げた。
そして、警察の人が来て、その男を連れて行った。
その後、あの人は僕に近づいてこう言った。
その声は耳も、脳も拒否しなかった。
「大丈夫だったか?」
その言葉を聞いたときに、凄く安心した。
心が安らぐような感じだった。
気がつくと、僕はその人に泣きながら抱きついていた。
クレーンゲームの所から休憩所に移動して、僕が落ち着くのを待っているみたいだけど、中々落ち着けない。
あの人は僕を落ち着かせようとしてか頭を撫でてきた。
あぁ、優しくて、落ち着いて、温かくて…………。
しばらくして、僕が泣きやむと、撫でられていた手も止まってしまった。少しだけ残念だった。
それから、クレーンゲームの所まで一緒に行って、僕はクレーンゲームに挑戦した。
だけど、お菓子は中々取れず、あまり入ってなかった100円玉はすぐに無くなってしまった。
お札を両替すればやれるけど、崩してやっても取れないかもしれない。
そんな葛藤を繰り返していると………。
「はぁ………ちょっと貸して見ろ。あ、金はいらないから。」
と、あの人は………いや、彼は僕のやっていたクレーンをプレイする。
途中、どれを取ればいいか聞かれたので、お菓子の詰め合わせにして貰う。
彼はとても上手くて、三つも取ってくれた。
「このぐらいあれば足りるか?」
「う、うん………僕もちょっと多めに食べるからね………。」
太らないかって?いや、かなり動くので多分太らないはず……。だから、あまり気にしない。仲間の一人は食べても太らないなで羨ましいんだけど。僕も女の子だからこういうのは気にするのだ。
「そうか、なら良かった。ちょっと待ってろ。袋持ってきてやるから。」
袋を持ってきて貰っている時、僕の目は別の物を写していた。猫だるまのぬいぐるみがクレーンの中にある。
僕はそれに見とれていた。
すると、彼はそれを取ってくれると言ったのだ。
僕は遠慮したのだけど、その人は素早くとって、僕に渡したのだ。
僕はその猫だるまを両手で抱いた。フカフカモフモフしていて、凄く気持ちよかった。
そして、危ないからと送って貰うことになった。
その時に、商店街を通るんだけど、ちょうど、あのポスターを見つけた。
コロナの3thアルバムの発売を宣伝するポスターだった。
それに、凄くドキドキしていた。
そして、僕は彼に、見返り目当てで僕を助けたんじゃないか?と問いつめた。でも………。
僕を助けたのは、見返りも何も求めず、純粋に助けただけと、彼は言ったのだ。
その時に、さっきから芽生えていたであろう感情の正体に確信を持った。これは………恋だ。
でも、結局彼の名前を聞くことはできなかった。
はぁ………なんて不甲斐ないんだろう………。僕はそのまま事務所に入ろうと思った………けど、何かが落ちていた。
「………なんだろう?これ?」
それは、小さい風見鳥のついた、ネックレスだった。
彼が落としたのだろうか?でも、その時にはすでに彼の姿は見えなくなっていた。
僕は事務所に入って、仲間の二人とお菓子を食べて、今日は終わる。まぁ、彼のことは話したけどね。
あぁ、また会えないかなぁ……。
第一章 終了
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