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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第二章
28/55

国王交代

「ねえ、ねえ聞いた?カリンちゃん。国王様が退位なさってアルベリヒ殿下に王位を譲られるそうよ。」


「えぇっ⁉︎本当ですか!」


初日に入って以来食事の定番となっていたボナパ亭の看板娘シャイナがある朝ニュースを届けてきた。


(え・・・それって不味いな、不味いぞ。休み返上になる。)


内心穏やかでないが表面上は平静を保っているルディの向いで、年頃の女性二人が話しを弾ませている。


「なんでもね、この数年色々と面倒ごとがあったから王太子のままにしておいたけれどそろそろ事態も落ち着いてきたからここらで譲ってあとは王妃様とゆっくり過ごしたいんですって。まだお若いのにねぇ、55歳ですって。」


「はぁ、キリがいいと言えば確かに譲り時かもしれませんね。」


「でも殿下も35歳になられたでしょう?現国王様はもっと若くして即位なさっていたから早くお譲りしたいのかしらね。」


「妃殿下も娶られてお世継ぎも誕生なさっていらっしゃるし、確かにいつお譲りされても安泰ですね。じゃあ、都は賑やかになるのかしら・・・」


「そうね!まずお祭りモードになるわよっ。この辺だって今の話しが流れてきてからもう準備を始めているもの。」


「カリン。」


「あ、はい。じゃあシャイナさん、また明日。」


「あら、今日はもう来ないの?」


「ええ、たまには自炊してみようかと思って。ボナパ亭の味には負けますけど。」


「へぇ〜、カリンちゃんもやっぱり奥さんなんだね。わかった、じゃあこれ持って帰ってよ殿下のご成婚祝いの年のワインだけど甘口だからカリンちゃんも大丈夫だと思うよ。いつも来てくれるからおまけしちゃう!」


鼻歌交じりにワインを割れない様紙で包みついでにとチーズを付け足してくれた。


「ありがとう!頑張って美味しいご飯作るわね。」


じゃあねと別れて途中の店で食材を買い込む。そして別荘に帰り着いた二人はとりあえず荷物を置き、居間のソファに落ち着く。


「・・・ごめん。」


「まだ招集がかからないなんておかしくないですか?」


「ホンットごめん‼︎」


平謝りするルディを仕方ないなぁと顔を上げさせる。


「あのね、この辺で噂になってるのにまだ招集きてないでしょ?それに十分休んだし、何にしても秋にはオルボアヘ帰る気だったの。で、この話が本当だとしてもルディは何にも悪くないじゃない。」


「でも、僕が殿下付き魔法師だからこれが本当なら忙しくなってまた王宮詰めになるんだよ?君に寂しい思いをこれからまたさせるんだ、申し訳ないよ。」


がっくりと肩を落として大陸一の魔法師が申し訳なさげに話す姿が不謹慎にも可愛らしいと思ってしまった。


「じゃあ、お昼はパンとチーズを持って前々から行きたかった川原に行ってくれる?」


「そりゃもちろん・・・まさか、君泳ぐ気じゃないよね?」


恐る恐るルディが尋ねる。その問いに満面の笑みで立ち上がり、カリンが答えた。


「その、まさかです!あのね、ちょっとだけ深くて流れも緩やかないい場所を町の子に教えてもらったの。」


旅先でも地元の子どもと交流しているのは知っていたがまさか、そんな場所まで見つけてくるとは・・・。だかしかし、子ども達は下着姿などで泳いでいるのだろうがカリンはどうやって泳ぐつもりなのか?そんな心配をよそに既にいそいそと昼食の準備を始めている妻を見て不安になる。


「え、泳ぐ格好ですか?んーとね、ちゃんと準備してます。やーねぇ、下着でなんか泳がないわよもぉ。あ、でも着替える時には魔法で隠してもらえますか?さすがに誰が見てるかわからないから、天下の魔法師ガウス様の妻が川原でお着替えしてたら世間の恥ですからね!」


いや、そう思うなら泳ぐのやめようよ・・・。


「はい、準備できましたー。じゃ、行きましょうか。」


嬉しげに荷物を下げる妻を見て、今更やめてくれとは言えなかったし普通に育てば子ども時代に川遊びなどしていたかもしれない。これは彼女の得られなかった子ども時代を体験するいい機会なのだと自分に言い聞かせ、彼女の手から荷物を受け取る。海辺で買ったサンダルとワンピースの出で立ちで軽やかな足取りに日傘を差して前を歩くカリンは我が妻ながらまだ未婚の少女の様で眩しくて、それは夏の陽射しのせいだと思い込ませながら後ろをついて行く。


その後、彼女の言う「穴場」に辿り着き一度溺れかけながらも泳ぎをマスターしたカリンに水中に引き込まれ二人でずぶ濡れになりながら童心に帰ってたっぷりと水遊びを堪能した後、昼食を食べるとカリンはくったりと敷物の上に横になり寝息を立て始めた、水遊びは体力を使うのだ。そこまでは予想外だったのだろう、子どもの様にあどけない寝顔を見ながら荷物をまとめると魔法陣を描き移動魔法で荷物を先に別荘に送る。黙って連れて帰ったら気を悪くするだろうとカリンが起きるまでの間、その傍らで目覚めるのを待つことにした。多分、あと少しで終わるだろう長い休みの終わりを感じながら。

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