王族の故郷
デアルスツは現王家のルーツであるから街中には王族の絵姿や紋章をあしらった土産物がたくさん置いてある。特に王家の血筋ではないものの、現王妃と王太子妃の人気は絶大でそれぞれの紋章をあしらった品々や王太子妃がデザインした衣服や小物が土産物としてよく出ているらしい。
「これじゃあ殿下へのお土産にはなりませんね。」
オーランドの姿が描かれた品を手に取りカリンがため息をつく。確かにどれも王族つながりの品ばかりなので今更近所への土産としても必要ないだろう、しかし髪飾りなどファンテーヌの印が入った可愛らしいものは女の子たちが喜ぶかもしれないし酒類ならば男性陣に喜ばれるだろう。そう言いながら土産物を選んだあと昼前になったので手近な店に入り食事を取ることになった。
「お客さんどちらから?」
気さくな娘が注文時に話しかけてくる。
「アデーレから避暑に来ました。」
「へぇ〜、首都からね。じゃあこの辺の土産物屋じゃ選ぶの苦労するでしょ?みんな王族大好きだから。あ、ほらあそこには王太子様達がお小さい頃の絵姿が飾ってあるの、食事ができるまで暇だったら見て行って。」
注文票を書き込むとそう言い残し厨房に立ち去る。
「私見てきます。ルディは?」
「うん、行こうか。」
壁にはアルベリヒの小さい頃から段々と妹弟が増えていく様がわかる並びだった。離宮で実の母親に抱かれる赤ん坊の頃、それから現王妃と父王に挟まれちょこんと座る5〜6歳、更にヴィルヘルミナが加わりその後にオーランド、双子の姫君が加わっていく。最後は近年この地を訪れた際の王太子夫妻の絵が飾られていた。どうやらここはアルベリヒ贔屓の店の様だ。
「はーい、おまたせしました!どう?お客さん、殿下方の絵姿は。」
「とても興味深く拝見させていただきました。殿下はこちらのお店にもいらっしゃったことが?」
カリンが尋ねる。
「そうなの、あのご夫婦って凄く気さくな方なのね。この店にほら、あの一番最初の赤ちゃんの頃の絵姿があると聞いて訪ねて来てくださってうちの料理も召し上がられたわ。殿下はあの絵の前でしばらく感慨深げに見入ってらっしゃったわね。やっぱり実のお母様と幼くしてお別れされているから懐かしいのでしょうねって思ったんだけど。」
「そうですね。あ、でもあの最後の絵は?首都でも見覚えがないのですが。」
ふふっと笑って娘が少し自慢気に話す。
「殿下と前王妃様の絵は離宮に置いてあって数も少ないんですって。だからここでまさかその数少ない絵を見られるとは思ってなくて、貴重な絵を見られた記念にと急遽この店で絵描きに描かせて下さったの。そして、他の絵と一緒に飾って欲しいって。この土地は王族所縁の土地だけれど最近は訪れる王族の方も少なくてご兄妹の中でもアルベリヒ様だけがこちらに初めておいでになったのよ、だから私達はアルベリヒ様が大好き。気取ったところがなくて、近隣の子どもとも遊んでくださって・・・妃殿下も素敵な方よね貴族の出だけれどやっぱり気取ってなくて、お二人ともこの辺りの困りごとや作物の出来に観光資源までつぶさに聞いて帰られて、土産物屋に妃殿下デザインのご当地限定の品が入る様になったり古くなっていた遊覧船も新しくなったし。まあ、聞いた話しじゃここだけ特別ってわけじゃなくて他の土地にも色々されているそうだけど国民の事を思ってくださる気持ちは何にしても嬉しいわ。あらやだ、喋り過ぎたわねごゆっくり。」
食事を終え店を出る時に帰るまでに一度は遊覧船に乗ってみてと、勧められて娘と別れた。
「殿下、実のお母様の絵姿は離宮に置いてあるんですね・・・。」
「うん、今の王妃様がいらっしゃってすぐに殿下がそうさせたらしいよ。でも、僕も前王妃様の絵姿は初めて見たなぁ離宮は何度も行ってるのに。」
「ご遠慮されて仕舞われているのでしょうね、本当はお優しい方ですもの。」
「ちょ、カリン最後の発言は・・・あ〜確かにカリンは酷い扱いされてるからねぇ。いやでも本当は仕事も出来るし真面目で優しい方なんだよって、なんで僕が弁解しなきゃいけないんだろう・・・。」
「それはあなたがあの方の側近中の側近だからです、ふふ。あの方の下でお仕事なんて本当に大変でしょう?ね、殿下の子供時代ってどんなだったんでしょうね。」
「うーん、僕と10歳も離れてるからね。僕が屋敷預かりになるまでだから5歳くらいか離宮によく行っていたのは。既に成年されていたからね、僕もあまり覚えてないや可愛がって頂いたらしいらしいけど。」
「ふーん、私も離宮に薬草学と体術を習いに通ってましたが確かに絵姿はなかったですね。あの時は変わった王子様と思ってましたがファンテーヌ様のお陰でしょうか最近は落ち着いてらっしゃいますよね。お子様も三人になられて、不思議。殿下もお父様なんですね。」
「うん、あのお二人はお似合いだよね。さすがハーヴェイ様の祝福の花嫁だけあって。」
「最高の贈り物でしたね。」
王太子妃が主神ハーヴェイの祝福を受けた時を懐かしく思い出しながら二人は遊覧船乗り場へと歩いて行った。




