夢の途中
気がつくとルディは自宅の門の前に立っていた。しかしよく見れば、自宅は以前の見覚えのある小さな平屋建ての家で周りは畑に囲まれている。ああ、これは夢なんだとその時漠然と意識すると門を開け敷地に入る。裏手に回ると黒髪の青年が畑を耕していた。
「お父さん?」
青年はルディの存在に一向に気づかず黙々と仕事をしている。その傍らでは若い女性が草引きをしていた。
「あれが、お母さん・・・」
栗毛の髪を後ろで束ねやはりルディに気づかずに一心に草引きをしている。と、その時家の中から赤ん坊の鳴き声がした。
「ああ、起きたな。」
「ごめんなさい、見てくるわ。」
「ゆっくり坊主の相手してやってくれよ。」
「ふふ、ありがとう。」
母親が裏口から中に入りルディは表に移動する、しばらくして母親が表に出てくるとデッキにある揺り椅子に赤ん坊を抱いて腰をかけユラユラと椅子を揺らしながらあやし始める。ふと、人の気配を感じ門の方を見るとカリンがその様子を見ている。
「カリン!」
カリンは全く反応せずに、門を開け敷地に入るとまっすぐ親子に近づいて行った。これはどちらの夢なんだろう?カリンが優しい顔で赤ん坊を覗き込む。
「カリン?聞こえないのかい。」
ルディも親子に近づくがあと少しでカリンは消えてしまい、自分も目が覚めた。隣を見るとカリンは静かな寝息を立てて眠っている。薄っすらと明るくなりかけている窓の外を見て、夜明け前だとわかる。ルディはベッドから降りて服に着替えるとカリンの頭を撫で額に口付けを落とすと階下へ降りて行った。
桶に水を汲み顔を洗い、サッパリとした頭で考える。どちらがどちらに行っていたのかは解らないが、とにかくカリンは夢の中にいた。物音がしたので覗くと養母が起きてきた様だ、今までなんとなく聞きづらくて放っておいた問題を、この際片付けることに決めるとルディは中に入って行った。
「おはよう、養母さん。」
「あら、おはよう。まだ休んでればいいのに、どうカリンは?」
「うん、チラッと見かけたけど捕まえられなかったんだ。それでさ、今までなんとなく、まあどうでもいいかと後回しにしてたんだけど・・・あの、僕の実の両親て容姿はどんなだったかわかるかな?」
「やれやれ、そのことかい?やっと聞いてきたね。まあお座りよ。」
ルディは養母の前に腰掛ける。ツェツィーリアは優しく養息子の顔を眺めると話し始めた。
「あたしはもちろん会ったことはないから記録にあったことを話すね?父親は黒髪に緑の瞳のあんたみたいに背の高いちょっと痩せ型の人だった、母親は栗毛の髪に茶色の瞳色白の可愛らしい人だったらしいよ。で、なんで容姿なんか聞くのさ?」
「夢をみたんだ。いや、夢の中にいた・・・それがカリンの夢か僕の夢かわからなくて。カリンも僕の両親の容姿は知らないからもしかして、僕の夢に入ってきたのかなと思って。」
「夢の中にカリンがいたのかい⁉︎」
「うん。でも声をかけても反応がなかった。」
「カリンはどうしてたんだい?」
「表の揺り椅子に母親に抱かれている僕を見て笑ってた。」
「そう・・・記憶は残るんだねぇ。他に聞いときたいことはないのかい?・・・あんたの本当の名前とか。」
「いや、いいよ。僕には養母さんがつけてくれた名前がある、本当の両親には感謝しているしもっと色々知っておいた方がいいのかもしれないけど・・・それは、もういいんだ。」
ツェツィーリアは立ち上がってルディの頭を優しく撫でると、居間の窓を開け始めた。それから使い魔をだし、王宮のアルベリヒの元へ送り出すとルディの方に向き直した。
「あたしもあんたの両親には感謝しているよ。さぞや心残りだったろうに、あたしなんかに授けてもらえてね。母親っていうのはさ、色々と複雑なもんだよ。」
母親っていうのは・・・カリンもはっきりと口に出してはまだ言われていないが一度は胎内に子どもを宿しているはずだ、だから彼女も母親・・・それ故に今回の事件の内容に腹が立ちそれを消化しきれないから僕を拒むのだろうか?でも、夫婦なのだからそこはきちんと吐き出してくれればいいのに・・・。
「養母さん、僕はカリンにとってそんなに頼りない男かな?」
「は?いやそんなことはないさ、あの子はあんたをそりゃ小さい時から慕ってきてそれがお互い愛情に変わって結ばれてさ。あんたと一緒になった時のあの子はそりゃ嬉しそうだったじゃないか!一体なんでそんなことを言うんだい?」
「うん、だけど肝心なことを打ち明けてもらえないのはやっぱりそういう事かなって自信がなくなってさ。」
「ばっ、馬鹿だねぇあんたは。あんたがそれだけ大事だから言えない事もあるってもんさ。あんたがカリンを信じなくてどうするんだい、そんな弱気でさ。」
呆れたように養母が言う。
「カリンを信じる・・・そうか、僕が自身ないから交流も上手くいかないのかも。ありがとう養母さん、もう一度試してみるよ。」
そう言い残しルディが二階に上がる頃、外はすっかり明るくなっていた。




