手探り
同窓会会場から帰った後、魔法で湯を沸かしカリンの身体を清める準備をしている間に養父母が文字通り飛んできた。カリンを養母に任せ自分もまるで今日の穢れを落とすかの様に湯を浴びた。養父から事の詳細を問われ取り急ぎ話すと養父は魔法省へと飛んで行った。ベッドの上にはカリンが新しい夜着を着せられ横たわっている、その傍らでは養母が深刻な顔をして手を握っていた。
「いつもの様にいくかねぇ・・・・・」
珍しく不安で弱気な養母の発言にカリンの様子を見る。浅い呼吸、弱い脈拍、いつもより一層白い肌。養母が魔法で髪も綺麗にしてくれたのだろうその額にかかる前髪を撫でつけるとルディはカリンの隣に横になる。
「養母さん、いつもより時間がかかるかも知れない。あと、ここには誰も近づけないで。」
「わかった。ねぇ、カリンは何を隠しているのさ?意識に触れようとしても跳ね返されるんだよ。」
「それは・・・まだ言えない。カリンが自分で打ち明けてくれないと多分ダメなんだ。」
「・・・そうかい。わかったよ、あんたも相当魔力を消費しただろうからとりあえずお眠り。二人で必ず戻るんだよ、いいね!」
「うん、わかってる。」
ルディはカリンの手を握り何時もの様に交流を始めた・・・しかし、
「駄目だ養母さん、僕まで弾かれてる。」
「なんだって⁉︎」
「上手く交流できないんだ、初めてだこんな事。カリンに・・・拒まれるなんて・・・」
「解った、とりあえずあんたにも休養は必要だからしばらく寝てな。交流はあんたが疲れから回復したら考えよう。」
「どうしよう、養母さん!このまま目を覚まさなかったら・・・っ。」
「とにかく今は休養だよ、ほら、これ飲んで。カリンのことは癒術の方からも考えるから、大丈夫!信じるんだよ。」
養母の薬がすぐに効きルディはそのまま眠りについた。
「カリン、頼むよ帰って来ておくれ。」
その後すぐにオブリーがやって来てツエツィーリアに今夜の詳細を話し、アルベリヒからの伝言を伝えた。
「カリンに子どもがいた?」
「いえ、まだ憶測ですが。」
「そう、ルディもそれを考えてるのかもしれないね。気づいてる様だけれど、カリン自身がルディに話してくれるまで待ったんだろう。」
「仮にそうだとしていつ頃の話かはわかりませんが、ルディ様も忙しく煩わせたくなかったのでしょう。ましてや、私どもには次々と子どもに恵まれ話しにくい環境でした。その中で少しも気どらせずに周りの子どもの面倒をよく見てくれた・・・全く申し訳がない。どんなにか辛かっただろうに・・・。」
「そういう娘だからね、あの子は。いつも自分より周りを大事にし過ぎるよ、可哀想に。ああ!多分こんな風にも思われたくなかったんだろうね・・・わかるよ、私も子どもには恵まれず辛い時期があったから。」
「とにかく、うちの家内やいつもの奥方連中にはしばらく見舞いはしない様、話しておきます。では、何かあれば王宮に連絡をお願いします。」
「わかった。ところでそのエリカって魔女はどうなんだい?」
「なかなか強情で暗部も手を焼いています。なにしろ下手に禁術を使われてもたまりませんしね、まあしばらくは時間がかかりますよ。」
「オーランド殿下に何事もなくなによりだったね。」
「それもカリンのお陰です。では、失礼します。」
オブリーが帰り静まり返ったルディの家の居間にあるソファに身を沈めツェツィーリアは両手で顔を覆い静かに、カリンの哀しみを思って泣いた。自分の過去とカリンの体験したであろう事を重ね合わせるとまるでカリンがもう二度と目を覚まさない様で恐ろしかった。カリンは侍女の年数の方がまだ長いからどうしてもルディに遠慮があるのだろうか?自分は夫に支えてもらいながら回復した、そして諦めた頃にルディという宝物が目の前に現れた・・・。
「駄目だ、やっぱりルディじゃないとこの傷は癒せないね。でもあそこまで拒絶されてると、どうやって意識に入り込めるんだか・・・。」
立ち上がり窓を開け夜空を見上げる、そして神に祈りを捧げる。
どうか、あの娘が無事に目を覚まします様に。
そして窓を閉めると明かりを消した。




