銀と金の双璧
エリカ・ペインの計画が解ってきて幾分か対処を考えられる限り考え抜いた。オーランドには魔法省に近衛隊、そして影の組織「鴉」が付いている。問題はカリンだ、まずはこれから一切飲食をしないこと当たり前だが重要だった。そして、エリカにどうやって尻尾を出させるか・・・。
「テーブルに戻りましょうルディ、クラーク夫妻が心配していると思うから。」
「いやでも危険じゃないかな。」
「こういう人はまず尻尾を出しません。私たちに対する嫌がらせは諦めても、オーランド殿下を諦めることはしないと思います。だから、真っ向勝負で行かないと。」
「え・・・君まさか正面から挑むつもりかい⁈」
「ルディ、私は飲食をせずいれば薬は盛られません。でも彼女は私のグラスに魔法師二人の目の前で方法はわからないけど巧妙に薬を入れました。オーランド殿下を安全な場所に隠して私にも手が出せなければ次は私達が留守にしている間に殿下が狙われるんじゃないかと思うと、せっかくの休暇も楽しめません。それに、あなたは魔法師です。国に一大事があれば駆け付ける、魔法魔術技師学校でその誓いをしているんですよね皆さん。だから、衣食住保証され貧富の差なく安心して勉学に励み立派な魔法師になる・・・エリカ・ペインも同じ誓いを立てたはず、なのに不届きにも国に私利私欲のために仇なそうとしているそれを黙って見過ごせません。彼女の正体は私が引き摺り出します。」
そう言ってカリンは椅子から立ち上がり、ルディの手を取ると歩き始めた。
「・・・ごめんなさい。私の口からあなたに言わなければならないことがあります・・・」
「それは後でいいよ。君は僕にも言えないほど辛過ぎて今まで一人で抱え込んでいたんだ。僕こそなんとなく気づいていたのに、どうしていいかわからずに今迄君に任せておいてごめん・・・ごめんね、カリン。」
「はい。わかっていました、ちゃんとあなたの気持ち届いていました。だから、どうしても彼女のやろうとすることが生命を軽んじている様に思えて私・・・許せません。」
「うん・・・そうだね。はぁ、久しぶりだな君の勇姿を見るのは。今宵は殿下のために一肌脱ぐか・・・」
「ですね。あ〜でもこのドレスダメにしちゃうだろうなぁ・・・シア様達に怒られますね。」
「はは、それ言うなら僕も相当怒られるだろうな。」
二人は笑いながらテーブルに戻った。
「随分遅かったわね、そんなに踊っていたの?」
「いや、エリカ踊ったのは一曲だけだよ。あとは王太子ご夫妻にそれぞれご挨拶してたんだ。」
「長い休暇を無理を言って頂いているのでやはりご挨拶しないと失礼ですから。お待たせしてごめんなさい。ところでエリカ様は今日は踊られました?このあと主人と踊ってきませんこと?ねぇ、あなたも久しぶりの級友とダンスなんていいと思わない?」
いきなりダンスを振られたルディだがカリンの考えがあるのだろうと、了承した。
「まぁ!いいのかしら?あなたの旦那様取っちゃうかもよ。」
くすくす笑いながらエリカが言う。そうか、その手もあるな・・・。
「大丈夫ですよ、エリカ様。残念ですが私達はハーヴェイ神の前で誓ってからずっと繋がってますから、彼が邪な考えを起こせばすぐにわかります。だから馬鹿なことはしないと信じています、ご心配なくどうぞダンスを楽しんで来てくださいませ。」
にっこりと、大胆不敵な発言をするカリンに対し些か目を釣り上げていたがこちらもすぐに魅惑的な微笑を浮かべるとでは失礼と、ルディにこれ見よがしに腕を組み輪の中へ消えて行った。カリンの言動に呆気に取られていたクラーク夫妻だが、先にルリが正気に返りカリンにデザート皿を勧めた。
「エリカ様がカリンさんの分をわざわざ取り置いてくださったのですよ、お腹が空いた頃じゃございません?」
「まあ、エリカ様が本当に取り置いて下さったなんて。で、いかがでした?王室御用達の菓子職人のデザートは。」
「もう、さすが御用達という感じでしたわ!どれを食べても普段口にする街の菓子屋のケーキとは大違い。でも、たまにですからいいですけど私はやっぱり庶民派なので近所のケーキが恋しくなりました。」
「ふふ、ですよね。では、頂く前に・・・失礼しまーす。」
カリンはドレスに隠しておいた銀の短刀で目の前のケーキを二つに切った、途端に怪しげな深緑の煙を出しながらケーキが溶けていく。
「っ⁉︎」
「禁術だ・・・!」
驚きデザート皿とカリンを見る夫妻にカリンは、
「いけませんねぇ、貴重なケーキにこんな事を仕込んじゃ台無しですわ。あ、お二人ともこの事はご内密にお願い致しますね。」
と、悪戯をした子どもの様な顔で言った。
「・・・!」
それと同時期にエリカが何かを感じ取った。
これは、カリンがデザートに手を付けた感触。やった、やったわ!何がルディと繋がっているよ、今にみていなさいあなた達夫婦の仲はもう終わりよ。
「どうかしたかい?エリカ。」
踊りながらほくそ笑む表情を見逃さなかったルディが尋ねた。おそらくカリンが例の惚れ薬に何かしたのだろう、エリカは計画がうまく行っているといった顔をしている。
「いいえ、なんでも。ところであなた達本当なの?繋がっているって、アレはどういう意味かしら?」
「ああ、元は結婚前からなんだけど僕の不安定だった魔力を制御する能力がカリンにはあってね。彼女が8つの時かな、対の魔具を作ったんだ。それ以来お互い何かあるとすぐに伝わる仕組みになってるんだよ。」
「・・・それ、今もつけているの・・・?」
「今は結婚指輪がその役割をしているね。」
「そう、ね?いま何か異変を感じる?」
「いや、なんで?」
「ふふ、彼女強気だったけれどヤキモチ焼いてたらそれも伝わるかと思って。」
ーバレてない、そりゃそうだわ。その為の禁術を危険を犯してまで使ったんだもの。今頃薬が聞いてきているはず、そしてその効果に導かれて見知らぬ男性が寄ってきて私達が戻る頃には二人は恋に堕ちているはずだわ。ははっ、帰るのが楽しみ。ー
確かにカリンがケーキを切った後、見知らぬ魔法師が訪れた。彼はアニエスに挨拶もそこそこにカリンの手にあるデザート皿に釘付けだった。カリンは近衛兵を呼び魔法師と皿を預け王太子に知らせる様言うと目の前の夫妻には自分はケーキを食べた後、ある男性とダンスを踊りに行ったとエリカとルディに伝えるよう言い残すと、近衛兵の後を追いかける様に会場を抜け出した。




