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小話 狩矢兄弟たちの苦悩

久しぶりの更新です!

はい、サボりすぎですね。体たらくですみません……。

気づいたら、前回の更新から一か月以上…自分でもびっくりです。


今回、京は出てきません。

 オレには妹の他に年子の兄貴がいる。


 京は兄貴によく懐いている。オレのことは呼び捨てなのに兄貴はちゃんと「兄さん」と呼んでるし、態度もオレと兄貴とでは雲泥の差だ。

 京曰く「兄さんは大人っぽいけど、円は大人げないから」らしい。オレまだ中学生だし大人じゃねえし。…まあ、兄貴も中学生だけどさ。

 つーか、京は兄貴が大人っぽいって言うけど、オレはそうは思わない。念のために言っとくと、大人げないって言われたことに対する反発ではない。


 兄貴――――狩矢扇かりや・おうぎは、弟のオレが言うのもなんだけど顔も頭も良いしスポーツだって万能だし、教師の評判もいい。

 いわゆる万能型とか勝ち組って言われるようなたぐいの人間だ。けど、そういったことをまったく鼻にかけないから、兄貴の人気は高まる一方だ。

 一見すると……つーか、どう聞いても完璧な兄貴だ。オレも何も知らなかったら、きっとそう思ってただろう。が、悲しいことにオレは兄貴の本性を知っている。


 だから言いたい。

 京も学校の奴らも、兄貴に夢を見すぎだ。


 実際の兄貴はこんな感じだ。


「ねえ円、最近また京に群がるコバエが増えたんだけど、どうやって駆除しよう? 今度のもまた冥間と同じように無駄に血統書付きなんだ。社会的抹殺はちょっと難しいから他の方法にしたいんだけど……」

「…………」


 精神攻撃にしようか物理攻撃にしようか、と悩む兄貴の話をオレはひきつった顔で聞いていた。


 もう言わなくてもわかるだろう。――――兄貴は重度のシスコンだ。それも病的なまでに。

 オレは兄貴がシスコンだって知った時ほど、この世に完璧な人間なんかいねえって思ったことはない。「天は二物を与えず」って、まさにその通りだ。

 むしろ兄貴の場合、先に挙げた美点がすべてこの欠点によって塗りつぶされてる。ってか、塗りつぶして余りあるほどひどい。

 小学生相手に社会的抹殺とか精神攻撃とか物理攻撃とか、企てる中学生(来年高校生)って、それこそ大人げねえだろ。というか、中学生の言うことじゃねえよ。


 兄貴の性質の悪いところって、それをやれるだけの権力と頭があることだよな。今まで兄貴のターゲットになった奴で、生き残ってんの冥間くらいだっつーの。

 あいつもまた小学生ガキとは思えないくらい性質悪い性格してっから兄貴と張り合えたけど、ほかの奴は無理だろ。絶対。


「――――というわけで、どう思う? 円」


 いきなり、兄貴に話を振られた。

 やっべ、聞いてなかった……って、どうせ駆除方法の相談だよな。

 

「あー……とりあえずやめね? 京の好きにさせてやりゃいいじゃん」

「……円は、僕たちの可愛い可愛い京に悪い虫がついてもいいの?」

「悪い虫ってか、そう決まったわけじゃねーし……というかさ、兄貴って京のこと可愛い可愛い言うけど、あいつって可愛いって顔してるか? むしろ年々、なんか男らしくなっていってるような気がすんだけど」


 最近は学校で「僕」って言ってるみたいだし、髪を伸ばすのも嫌がるし女っぽい恰好も嫌がるし……兄貴の妨害のせいでそっち系の趣味に目覚めちゃってたらどうしようって心配なんだけど。


「京はどんな格好をしていても可愛いよ。それに僕は京が今みたいになってくれて本当にうれしいよ」

「えっ?」


 意外だった。

 オレはてっきり、兄貴は京に女らしい言動とか恰好をしてほしいんだと思ってた。


「だって、あれならコバエも湧きにくいから」


 ……兄貴シスコンはやっぱり兄貴シスコンだった。

 

 もしかしたら兄貴がシスコンであるかぎり、京は一生結婚できないかもしれない。兄貴も兄貴で、シスコンをどうにかしないと結婚が危うい。兄貴、一応あれでも狩矢家うちの跡取りなのに。


「…………」


 延々と”京の可愛さ”について語り続ける兄貴を見つめ、オレがしっかりしなければ、とある種の責任感めいたものを感じた。


 京と狩矢家いえのためにも、兄貴のシスコン矯正を頑張ろう。……かなり見込みは薄いけど。

 

実は狩矢家ティーンズの中で、一番まともでしっかりしてるのは円だって話です。

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