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あいつのせいで最近不幸。

 月翔九十九転入から、半年が経過した。

 私は小学五年生になった。案の定、月翔九十九も同じクラスだ。

 それはいい。予想していた。

 だがしかし、なぜ幽まで同じクラスなのだろうか。

 先生たちは今まで面倒事を集束させるなど御免だとばかりに私と幽を別々にしていた。なのになぜ今年は一緒にしたのか。

 それも面倒事+αだ。月翔九十九も一緒だしね。というか先生たち、私たちに粗相でもしようものなら潰されるとでも思っているのだろうか。

 さすがにそれはテレビや漫画の見すぎだよ。……そう思ってたんだけどね。


 初っ端から私ら三人席が前後左右で(普通は出席番号順)、担任の先生はなんか悲哀と絶望が混在したような顔してるし、幽は始終機嫌よさげにニコニコしてる(きもい)し。

 このバカなんか仕組んだな、と思ってたら案の定だよ。

 どうやら教師陣の弱味を掌握したバカが、お願いという名の脅迫をして私たち三人を同じクラスにしたみたいだ。

 それを知った瞬間、私のせいではないのに申し訳ない気持ちになった。あのバカ、やることが年々、年不相応且つ悪質になっていっているのだが。

 

 とりあえず、殴れない先生たちの代わりに私が殴っておいたよ。全力で。  

 大丈夫。奴も一応武道を嗜んでいる身だから、受け身はとった。   

 まあ、ものすごく痛がってたけど。ざまあ。

 とにかく、幽のせいで先生たちは非現実を現実リアルに感じちゃったんだね。

 その後のくじ引き(席替え)、月翔九十九の隣の席を狙う女子も多かったのに、私たち三人は不参加で窓際の一番後ろの席になっていた。

 ……先生、相当私たち(主に幽だろう)を視界に入れたくないんだね。ここ、先生の机からはギリギリ見えない位置なんだよ。


 バ幽の愚行の話はこのくらいにしておいて(挙げはじめるとキリがない)、月翔九十九の話をしようと思う。

 LED作戦だが、まあまあそれなりに順調なのではないだろうかと思うたぶん。

 いまいち煮え切れないのは、色々と理由がある。

 私は彼に他の子たちとも交流をはかるようにそれとなく諭してみた。だが、月翔九十九の返答はノー。まるで興味を示してくれない。

 なので他の子たちに月翔九十九と仲良くしてくれないかと頼んでみた。   

 なかには快く引き受けてくれた子もいたんだけど、みんな惨敗。会話に誘っても遊びに誘ってもすべて断られてしまい、みんな挫折してしまった。

 そのかわり、私たちのところにはよく来る。友達認定は嬉しいのだが、執着は困る。


 だがしかし、こちらにはバ幽がいるのでそんなことにはならないだろう絶対。

 そもそも私自身、彼が執着するに足るなにかを持っているとは思えない。ヒロイン適性も皆無だしね。

 いいところ男友達くらいの認識になるだろうとは思う。そうなってることを願ってる。

 

 そろそろ今現在の話に移行しよう。

 私の通うこの小学校では、五月に宿泊学習がある。それも四泊五日。修学旅行よりも長い。

 いわゆる林間学校のようなもので、山間部近くの宿泊施設に泊まって、自然や地域社会と触れあうのが目的らしい。

 それは別にいいんだ。この時期は虫が多いとか施設周辺ではマムシが出るとか言ってるけど、そんなのは問題じゃない。


 問題なのはね、グループ分けだよ。私は当然の如く、月翔九十九とバ幽と同じグループに分けられた。ただね、グループは男女三名ずつで組まなきゃいけないんだよ。

 お忘れかもしれないが、私はこれでも女。そして月翔九十九とバ幽は男。女の子二人と男子一人、足りないのだ。

 今、残りのメンバーを決めているのだが、これがひどい。もとい、凄まじい。

 なにって? もちろん、彼女たちの情熱だよ。


 男子のほうはすぐにメンバーが決まった。これはすごかったよ。ある意味。

 残りの男子十数名でいっぺんにじゃんけんをしたんだが、岸山くんという男子の一人負けだった。全員がグーを出す中、ただひとりチョキを出して負けていた。

 グーを出した男子曰く、ある漫画でチョキが一番出やすい手だから、最初にグーを出すといいと書いてあったらしい。

 彼はその漫画を読んでいなかったのだろうな。岸山くんが一人勝ちする可能性もあったのに、彼はよほど運がないんだな。

 見るからに気が弱そうだけど、私たちのグループで大丈夫だろうか。胃痛とか十円ハゲとか若白髪とかにならないといいけど。


 女の子たちはというと、男子のようにじゃんけんはせずに、話し合いという方法で決めている。が、言うまでもなく決まるはずがない。

 ほとんどの女の子が、月翔九十九それから稀有な人種で幽のいるこのグループがいいと言っているのだ。

 最終的にしびれを切らした先生が、あみだくじで決めることにした。

 これもまたすごい。

 彼女たちは今までに見たことがない真剣な表情で、慎重に場所を選んでいた。

 先生は呆れた表情で彼女たちを見ていた。そしてきっと、私も同じ表情をしていたのだろう。先生と目が合うと、先生は幽を気にしながら私を手招きした。

 なんだと思いながら行ってみる。幸い、みんな迫力満点のあみだくじ大会に夢中で私たちに気づいていない。


「なんですか?」


 正直、先生には幽同様いい印象は持たれてないと思ってたよ(主に幽のせいでね)。


「あのね、この後グループごとに役割を決めることになってるでしょう?」

「はい……なってますね」


 六人グループが決定したら、それぞれの班員に役割が割り振られる。班長・副班長・保健(二名)・行事(二名)のどれかひとつにならなければいけない。

 保健はその名の通り、班員たちの体調管理に気を配る役割だ。それから泊まった部屋の美化にも務めなくてはならないらしい。布団を出したら綺麗に畳んで押し入れにしまうとかね。

 行事は宿泊学習で催されるオリエンテーリングやキャンプファイアーなど、主に遊びに関して班員を誘導したり、その準備を手伝ったりする役割だ。

 楽しそうだから、私はこれがやりたい。

 班長? え、嫌だけど? だってバ幽がいるんだよ?

 もうそれだけでいろいろ終わってんでしょ。あのトラブルメーカー・迷惑の権化の世話なんて冗談じゃない。今現在もそんな感じ?

 だがそれでも否と答える!


「悪いんだけど、狩矢さん、班長やってくれない……?」

「…………どうしてですか?」


 先生の言葉に「嫌です」と即答しなかった私を褒めてくれ。正直、役割の話が出た時点でこんな予感はしていた。

 でも、先生の頼みだからとはいえ、嫌なものは嫌だ。


「ほら、他の子たちじゃ冥間くんを止められないでしょう……?」


 ……いや、私にも止められないんだけど。

 ブレーキぶっ壊れた暴走機関車と一緒だよ。自分の欲を満たすまで止まらないよ、あのバカは。


「……先生、僕にも幽は止められないと思うのですが……」

「そんなことないわ! 冥間くん、あなたの言うことしか聞いてくれないもの!」


 遠回しに断ろうとしたら、先生は興奮気味に声を荒げた。どんだけ幽に苦労させられてんですか……。

 バカのせいなのに、なぜか私が罪悪感でいっぱいになる。

 突然、ギュッと手を握られた。驚いて顔をあげると、目尻に涙を浮かべた先生のドアップが目の前いっぱいに広がった。


「お願い! あなたにしかできないの!」

「は……はい……」


 ――――結局、先生の迫力に気おされて引き受けてしまった。先生には、涙を浮かべて感謝された。まったく嬉しくない。

 多少の疲れを感じながら戻ると、月翔九十九が怪訝な顔で声をかけてきた。


「おまえ、なにしてたんだ?」

「どっかのバカのせいで、面倒事を押し付けられたんだよ」


 彼にはほぼ本性で接している。バ幽のせいでかなり最初らへんでバレたしね。

 それだけ言うと、彼は半目になって幽に視線を向けた。

 そう、そのバカだよ。

 幽は興味なさげにあみだくじの様子を眺めていたが、私たちの冷たい視線に気づき、ふてぶてしい態度で「なに?」と聞いてきた。

 私は極めて爽やかに笑んだ。


「いや、別に。ただ、一回くらい往来激しい廊下でバナナの皮とか踏んで盛大に後頭部を強打してくれないかなと思ってただけだよ」

「なに、悪意にまみれたこと考えてんの」

「年中無休で悪意にまみれた行為しかしてない奴に言われたくない」


 悪意にまみれた云々て、こいつが一番言っちゃいけないと思う。あと、できれば強打した後、人格が百八十度変わってほしい。

 神社で祈れば叶えてくれるだろうか。……ムリっぽいな。

 あいつの性格、前世のをまんま引きずってきて年季入ってそう。性根の悪さが魂レベルで滲みついていそうだ。

 神様でも、きっと治せない。あれは不治の病だ。――――結論、バカは死んでも治らない。


「……それよりまだ続いてたんだね、あみだくじ」


 私が先生に呼ばれたりなんだりして、結構時間が経ったと思うのだが、まだあみだくじの列が途切れない。待たされている他のグループの男子たちもうんざり顔だ。


「……ひとりひとりがいちいち長いんだよ」

「全員、呪いかけんのに必死みたいだなー」

「呪いって……せめておまじないと言ってあげなさい」

「漢字一緒だろー? あ、漢字わかる?」

「殴っていい? 顔面」

「……落ち着け」


 月翔九十九に諭されて、私は渋々振り上げた拳を下ろした。

 私と幽が言い争いを始めると、月翔九十九がそれを止めるようになった。今まではこのまま舌戦が続いてたんだけど、これも変化だね。

 教卓のほうから断末魔……もとい、女の子たちの悲痛な叫び声があがった。どうやら、ようやく決まったらしい。

 さてさて、これから顔合わせあーんど役割分担の話をせねば……。


 なんだか胃がキリキリと痛むけど、気張って頑張ろう。……うん。

中途半端な感じが否めないですけど、更新です!

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