{縛り戦闘}
「”雷槍”」
魔法名を唱える。するとルゼの手のひらに、直径一メートルほどのその名の通りの雷の槍が現れた。
軽く振ると、雷の槍はまっすぐに正面の壁に突き刺さり、霧散した。”雷槍”が突き刺さった場所には、小さな焦げ跡がついている。
続いて空中を見つめて集中する。ルゼの魔力が雷の槍に形を変えた。ただし直径五メートルほどもあり、幅も先ほどの槍が五センチほどなら今回のやりは十センチはあるだろう巨大さだ。
「むむむ…っ」
ルゼは眉間に皺を寄せながら”雷槍”を圧縮しようとするものの、槍はぐにゃぐにゃと不安定に形を変えるのみで、大きさ自体はほとんど変わらない。諦めてその状態で飛ばすと、二十メートルほど離れた辺りでパッと霧散してしまった。
「はぁー…むっず」
ルゼは大きくため息をつくと、その場に大の字で寝転がった。
魔法の特訓を始めて一週間。グレンから覚えてる限りの魔法を教えてもらい、片っ端から試してみるのに二日。曲がりなりにも使えるようになったら、再度片っ端から直接魔力を練って作ってみるのに五日。特訓は少しずつ実を結んでいる、ような気がする。否、実を結んでいる。
当初は魔力が圧縮する途中で霧散してしまったり、そもそも圧縮できずに頭上に巨大な火の玉ができてしまって消せなくなったり、飛ばした瞬間に爆発したりと散々だった。それが圧縮しきれていないものの、爆発もすることなくある程度の距離まで形を維持できるようになったのだ。大進歩である。実践で使用できるレベルではないが、このまま練習を続けていけばいずれ意識せずとも使えるようになるだろう。
「いいや、休憩休憩。鬼の居ぬ間に洗濯もとい昼寝~」
ぐっと伸びをして腕を枕に昼寝を始めるルゼ。この一週間、どこぞの暇鬼のせいで食事と睡眠以外の時はずーっとここで魔法の訓練をしていた。ドゥルグたちが拠点を絶賛改良中だが、魔力を提供する以外にできることがないのも訓練付けになっている要因だろう。なまじ魔力量が膨大なせいで魔力切れによる強制休憩とかもないので、比喩表現一切なく休みなしだったのだ。
ルゼにスパルタ特訓を強いた暇鬼も今はドゥルグたちに呼ばれていてここにはいない。地竜たちのようなモンスターに遭遇した時のことを考え、一週間ずっと真面目に訓練してきたが、少しくらい休憩してもいいだろう。
ゆっくりとやってくる睡魔に身を委ね――、
「おい、サボるな」
「うひゃっ!?」
ようとしたところで、暇鬼さんが帰ってきてしまった。
完全な不意打ちに飛び上がって驚くルゼ。反射的にゴロゴロ転がってグレンから距離を取り、バクバクと早鐘を打つ心臓を両手で押さえる。
「いいいいつの間に!?」
「たった今だ。サボってるってことは、少しはマシになったんだろうな?」
「もちろん!」
勢いよく返事をしつつサムズアップする。嘘はついていない。飛距離が一メートルも伸びたのだ。十分マシになっているだろう。グレンはルゼの激しく泳ぎまくる目をじっと睨みつけ、徐に距離を詰めるとひょいとルゼを小脇に抱えた。
「んん?」
無言で転移部屋から闘技場への通路に入る。
「…おい、まさか」
嫌な予感がしてグレンを見上げた瞬間、闘技場入り口の踊り場に出た。刹那、ぽいっと投げ捨てられた。もちろん底には、地竜さんがスタンバイしている。
「この鬼畜ド外道ーッ!」
「グルアァァアアアアアアア!!」
ルゼ渾身の罵倒は、いつかにも聞いた地竜の咆哮にかき消された。飛んでくる岩の弾丸を、翼を広げて風の抵抗を受けることによってくるりと回転して避ける。鬼畜ド外道鬼のほうをキッと睨みつけると、鬼さんはのんびり手すりに腰を下ろして観戦モードに入っていた。その間にも飛んでくる岩の弾丸を避けながら、ルゼはグレンをビシィッと指さして声を張り上げた。
「私ばっか攻撃してないで、あっちも攻撃しろよ!」
地竜に抗議をすると、意外にもルゼの言いたいことは伝わったらしくグレンをちらりと見やり、しかしすぐに何も見なかった! とばかりに目をそらした。そして誤魔化すかのように、さらに激しく岩の弾丸を飛ばしてくる。
「目をそらすな! 戦え!」
「無駄だ。”威圧”で地竜の本能に直接圧をかけてる。モンスターは本能に忠実だからな。明らかな上位者に襲い掛かることはねえ」
「理不尽!!」
「ああ、それと息吹禁止な。竜晶も纏うの以外は禁止だ」
「もっと理不尽!?」
グレンに気を取られた瞬間、頭上に影が差した。ハッとして見上げると、眼前に地竜の爪が迫っていた。翼を一打ち。間一髪、爪は目の前を通り過ぎ、飛べない地竜もそのまま落ちていく。
「”大波”!」
地竜が空中にいて攻撃できない今がチャンスとばかりに、今一番慣れ親しんでいるであろう魔法名を口にする。ルゼの周囲から滝のような水があふれだし、落下中の地竜とその周辺の空間丸ごとを水浸しにしていく。
”大波”は対象を押し流す魔法であるがゆえに、地竜にほとんどダメージは入っていない。そんなことは織り込み済みなので、ルゼも急速に高度を下げ、地竜の後を追いながら次の魔法名を叫んだ。
「”凍波”!」
冷気の波によって周囲を凍てつかせる魔法”凍波”は、水浸しになった空間を一瞬のうちに凍らせた。もちろん、ちょうど地面に着地した地竜もその例にもれず、地竜の氷のオブジェクトが出来上がる。が、この程度では地竜が死ぬことはない。ピキピキと音を立てて、徐々に氷にひびが入っていく。
ルゼは右足を竜晶化させ、落下の速度と合わせて渾身のかかと落としを地竜の頭に叩き込んだ。落下の速度、そして竜晶の硬さなどが加わったところでルゼの体術レベルでは大ダメージは厳しいだろうなんて思いつつ、次の手を考える。
だが、ルゼにとって予想外の事態が起きる。
かかと落としの衝撃で地竜の頭を凍り付かせていた氷が砕け飛び、なおかつ、地面に頭が叩きつけられたのだ。地竜の口から鮮血が舞うのを、目を丸くしながら見つめるルゼ。
体重数百キロはあるだろう地竜とたかだか数十キロしかないルゼ。少女であるため筋力レベルもたかが知れているというのに、地面にちょっぴりクレーターもできている。どういうことだ? と少し頭が混乱してきたところに、グレンの声が響いた。
「固有スキルの竜晶化〔攻撃・防御〕の影響で、竜晶化した部位には攻撃力と防御力アップの恩恵がある。ついでに身体能力も多少向上しているはずだ」
ルゼはもっぱら杭を飛ばしたり直接壁を作ったりしていたために気づかなかったことである。
「結晶竜自体、もともと防御力の高い種族だ。試しに岩か尻尾。どっちかに適当に当たってみろ」
「嫌に決まってんでしょうが! それでうっかり体のどっかがちぎれ飛んだりしたらどうするつもりだ!」
「知らん」
「腹立つ!!」
なんてグレンに気を取られた隙に、怒りで体の氷を砕いた地竜が砕いた時の反動を利用して体を回転させた。たっぷり遠心力の乗った尻尾がルゼの体の側面をしたたかに打ち付け、ルゼの体は簡単に吹っ飛ぶと地面をゴロゴロと転がり、仰向けに倒れた。
「いっっったい!!」
がばっとすぐに起き上がったルゼは悪態を吐くが、その体に傷らしい傷はほとんどない。せいぜい地面をゴロゴロしたせいで、多少体が汚れたかな? くらいだ。
「無強化状態でそれならいいほうだろ」
「どこが!? すっごい痛かったんだけど!」
怪我らしい怪我はないが、衝撃は体に伝わるし、お腹に当たった時は息が詰まって胃の中身が口からこんにちはするところだった。グレンは地面をダァンッダァンッと怒りのまま踏みしめるルゼにふんと鼻を鳴らすと、
「痛いで済んでるならマシだ」
そう言って”威圧”を解いて、ルゼの近くに着地した。瞬間、地面からルゼ目掛けて強襲した尻尾を、無造作に伸ばした左腕で受け止めた。ボキッと背筋が震えそうな嫌な音が響いた。見ると、グレンの左腕が折れていた。おおよそ曲がるはずのない方向に折れ曲がる腕に絶句するルゼに、グレンは平然とした様子で言った。
「普通ならこうなる」
「わかったけど、あえて実演する!? 純粋に怖いわ! 大丈夫なのか、それ!?」
「問題ない」
グレンは折れた腕を正しい方向に曲げながら、跳躍して元々いた場所に戻った。全然大丈夫ではなさそうだが、以前〈自動修復〉なるスキルがあると言っていたので、どのくらい時間がかかるかわからないがいずれ治るのだろう。
それにしても、だ。
「戦闘狂マジ怖い」
説明のために、自分の腕すら折ってみせた。自分には理解できない思考回路の生き物に戦慄していると、地竜の咆哮が轟く。所々で存在を忘却しているので、お怒りなのかもしれない。
先ほどのルゼのように地面をダァンッと何度か踏みしめた地竜が突進してくる。同時に現れた岩の弾丸が、ルゼの行動を阻害するかのような軌道を見せながら飛んでくる。
ルゼは意を決して、体を竜晶化させて地竜に向かって走り出した。弾丸がルゼの頭や腕、足、お腹などにあたるが、衝撃は来るもののダメージはほとんどない。効かないならばと一気に距離を詰める。
地竜が右腕を叩きつけるかのように振り下ろすのを、半身になって避け、腕を足場に駆け上がると地竜の左側頭部を蹴りつけた。血と竜鱗が飛び散る。頭が横に弾かれたかと思うと、地竜は蹴りの体勢のままのルゼをギッと睨みつけ、大口を開けぱくりとルゼの上半身に嚙みついた。
次の瞬間には、ルゼの上半身と下半身が泣き別れか、と思われたが、間一髪間に合った竜晶防御によって牙が体にあたった瞬間にガキンッと音を立てて牙が砕けた。歯が折れた痛みに思わずといった様子で口を離す地竜。ルゼは地竜の口が離れた瞬間に、右腕を竜晶化させ、渾身のアッパーカットを無防備な顎に向かって突き上げた。綺麗に放たれた拳が地竜の顎を砕き、衝撃によって脳を破壊するとそのまま仰向けに倒れ、地竜は動かなくなった。
ルゼは残心を解くと、ばっくばっく高速に動き回る心臓を手で押さえた。ぱっくりされた瞬間に、「あ、死んだ」と少しだけ死を覚悟した。竜晶防御が間に合っていなければ、実際に死んでいただろう。冷や汗を手で拭うと、上からグレンの声が降ってきた。
「油断しすぎだ」
「やかましいわ! 初心者に優しくなれ!」
反射で怒鳴り返し、ふぅっと息を吐きだす。
「もう、今日はこれで」
終わりにしよう、と言いかけた瞬間、魔法陣がきらめき、白狼が召喚された。
「早くない!? 今ので終わりじゃないの!?」
「なわけあるか。戦え」
「こんの鬼ぃーッ!!!」
「アオオオオオオオォン!」
ルゼの絶叫は、白狼の遠吠えにかき消された。
***
そして、特訓開始から早二か月。
ルゼは、地竜と対峙していた。
地竜は咆哮をあげると、軽いジャブだと言わんばかりに岩の弾丸を放ってきた。以前は竜晶バリアで防いだ攻撃だが、ルゼは避けない。両腕を顔の前に掲げて防御の姿勢をとったのみ。弾丸はルゼの腕や肩、腹などに命中し、カァンッというおおよそ人体から響くことのない音をあげて砕け散った。驚くべきことに、ルゼは傷一つ負っていない。
地竜は攻撃を無傷で防がれた怒りからか、再度咆哮をあげ、弾丸が効かないなら直接その体を食いちぎってやるとばかりに突進してくる。ルゼは目前に地竜が迫ると、翼を一瞬はためかせて飛び上がり、代わりに竜晶の壁を作った。咄嗟に避けることのできない地竜が壁に激突する。ガアアンッと音が響き、跳ね返されたのは地竜のほう。竜晶には一切の傷がついていないが、地竜はその自慢の牙が折れていた。ルゼは空中で一回転すると右足を分厚い竜晶で覆った。かかとが槍のように鋭い。
「”重可”」
魔法名を口にする。自然にかかる重力に、さらに負荷を追加して、重量級のかかと落としが地竜の頭に落とされた。鋭く尖らせた竜晶が地竜の頭を貫通して地面に到達し、放射線状に亀裂が走る。竜晶を解除して飛びのくと、地竜は絶命していた。
続いて現れるのは白狼だ。召喚された白狼は獣系の特徴なのか、遠吠えをあげると、体から冷気があふれ出し、空間が凍結し始める。
「”炎波”」
自分の周囲に到達する前に、火の波を発生させて凍り付いた地面等を溶かすとともに空間の温度を上げる。白狼は凍結攻撃が効かないと気づくと、火の波を避けて疾走を開始した。縦横無尽に闘技場を駆け回り、ルゼを攪乱せんとする。ルゼは地竜の時同様動かない。壁を蹴り、白狼がルゼの背後から迫る。
「”封獄”」
ルゼまであと三メートルという距離で、白狼の速度が落ちた。【力魔法】”封獄”。一定周囲の重力密度をあげる魔法だ。ルゼは振り返りざま、右腕を竜晶化させて大きく振りかぶった。大きく肥大化させた竜晶の拳を握り締め、振り下ろす。白露の右顔面を捉えた拳は、ズドンと重苦しい音を響かせて白狼の頭蓋骨を粉砕し、ベシャッと血肉が周囲に飛び散った。
続いて、蝶と蜘蛛が出現する。例のごとく、蝶は鱗粉を風魔法に乗せ、蜘蛛は防御のための蜘蛛の巣と小蜘蛛を召喚する。ルゼとロッドが苦労した波状攻撃が放たれる。慌てず騒がず、初戦で役に立った魔法の名を口にする。
「”大波”」
ルゼの周りから水があふれ出し、迫る鱗粉も小蜘蛛もなにもかもを押し流す。”大波”が蝶と蜘蛛に当たる直前、案の定小蜘蛛たちが重なり合って防壁を作るものの、ルゼはすでに次の準備を終えていた。
「”凍波”」
ルゼの周囲から発生した波が、同じく息吹のごとく放たれた冷気の波によって一瞬で凍り付いていく。蝶も蜘蛛も小蜘蛛の防壁により凍り付いてはいないものの、凍り付いた波が壁となり、すぐには動けない。蝶は即座に火魔法によって凍り付いた壁を溶かそうとするが、そのたびに”大波”が炎を消し去り、”凍波”が壁を作る。蝶と蜘蛛を完全に転封することに成功したルゼは、両腕を広げ、手を空へ向けた。
「”雷槍”」
両手の平に、雷の槍が出現する。槍はちょうど蝶の火魔法によって氷の壁が溶かされた瞬間に、小蜘蛛の壁に突き刺さった。小蜘蛛の能力によって雷槍が分解されていくが、矢継ぎ早に放たれ突き刺さる雷槍によってついに防壁に穴が開き、蝶と蜘蛛の頭を貫いた。
最後は陸亀(水)だ。亀が召喚された瞬間に走り出し、亀の数歩手前で地面が陥没するほどの跳躍をして亀の上をとると、両足を下に向けてそろえた。
「”重可”」
自身にかかる重力を何十倍に引き上げて、一瞬の停滞のち落下。亀の甲羅は魔法攻撃をはじくが、それは直接受けた場合に限る。自身の体重を上げているだけの”重可”が、はじかれることはない。数百キロにまで引き上げられた一撃は、さながら隕石のごとく。貫通力をあげるため両足を覆う様に変化した竜晶(槍バージョン)は頑丈な甲羅を突き破って地面に到達。体に大穴が開いた亀は、なにをすることもできずズウウウンッと思い音を響かせて地面に沈んだ。
フッと亀の姿が掻き消える。おかわりが召喚されてこないのを確認すると、ルゼは肩の力を抜いた。時間を確認する。地竜から陸亀を倒すまで三十分と経っていない。
「はあー、ノルマ終わり! 疲れたー!」
肩をぐるぐる回して、ほっと一息つく。この二ヶ月、魔法と竜晶(纏)だけで四体のモンスターと戦いまくり、一通り勝てるようになると今度は時間制限を設けられと、戦いにどっぷり浸かった日々だった。
魔法に関しても、当初は制御がなかなかうまくいかなかったものの、魔法名を言うことで脳内のイメージを鮮明にすることができると気づいてからは上達が早かった。ほとんどが初級からいいところ中級くらいの魔法ばかりであるものの、極度の集中状態にならずとも発動できるようになった。大進歩である。
手を握ってぐーっと伸びをしていると、背後でトンという軽い音が聞こえた。伸びのまま振り返ると、グレンがいた。
「あ、私もう帰るから~。今日、ドゥルグが私達用の居住スペース作るって言ってたし、見学しにい」
殺気。
全身総毛立つような殺気を感じ、伸び状態の腕を顔の前で構え、反射的に竜晶で体を覆う。直後、ガアンッとグレンの拳が腕に突き刺さった。が、痺れは感じるものの痛みはない。ルゼは腕の隙間からグレンをキッと睨みつけて言った。
「怖いわ! 急に殺気を放つな! 攻撃してくるな!」
「気を抜くな」
「常在戦場も大概にしろ!」
なおこんなやり取りが多々あり、たった二ヶ月程度で気配察知の精度も爆上がりした。正直、最近ではグレンの気配を感じるだけで気持ちが戦闘モードに移行されるようになってきた。通常生活時も気が抜けないという状況なので、戦闘訓練時以外は傍に寄りたくないのが本音だ。
「二ヶ月経ったが、一切覚醒する気配がねえな」
「あー…まあ、確かに?」
言われて、なんとなく”鑑定”の水晶に魔力を通す。ステータスはこのように表示された。
===================
【名前】ルゼ=フェンドル=リンドアルヴ
【年齢】13歳
【性別】女
【種族】結晶竜(混血)
【固有スキル】息吹、竜晶化〔攻撃・防御〕、竜晶生成・操作・分解、気配察知
【特殊スキル】竜玉作成〔中品質〕
【進化状態】無能力
*
【魔力】51000
【火魔法】Lv3(上限Lv5)
【水魔法】Lv3(上限Lv3)
【土魔法】Lv2(上限Lv3)
【風魔法】Lv2(上限Lv5)
【光魔法】Lv2(上限Lv3)
【闇魔法】Lv2(上限Lv3)
【力魔法】Lv3(上限Lv5)
【時空魔法】Lv2(上限Lv3)
【生物魔法】Lv5(上限Lv5)
【創造魔法】Lv3(上限Lv3)
===================
当初の目的である、【火魔法】【力魔法】Lv3、【生物魔法】Lv5までは達成していた。それ以外の魔法も一通りの練習を繰り返したためにLv2に上がっている。なお、Lv1からLv2はわりと上がりやすいらしい。Lv3以降になってくると、当人の資質によるところになってくるのだとか。
「条件は達しているはずだが、何が悪いのか…」
顎に手を当てて考え込むグレンから視線をそらし、そっとため息を吐く。最近、あまり強くなりすぎると本気でグレンの相手をしなければならないのでは? と思い始めてきたので、ギリギリ相手する必要がないかなくらいに留めておきたいと思っているのは内緒だ。ルゼは痛いのも怖いのも嫌いである。そのあたりの感覚が麻痺している戦闘狂と本気で戦うなんてまっぴらごめんだった。
やれやれと肩を竦め…本当に何気なしに前を向くと、目の前に白刃が迫っていた。鳥肌が立つ暇もなく、ほぼほぼ反射で全力で硬度を引き上げた竜晶を展開。ギィンッと鋭い音が鳴った。刃は竜晶と接触すると派手に火花を上げた。
大太刀が振り抜かれると同時に切り裂かれる竜晶の壁。本当にギリギリ、硬度を上げまくったおかげで一センチほどを残して完全に斬られることはなかった。ルゼは信じられないものを見る目でグレンをギッと睨みつけた。今の攻撃、完全に”本気”だったと理解したのだ。
「死ぬわ!」
遅れて、心臓がばくばくと早鐘を打つ。一瞬でも展開が遅ければ、今頃ルゼの首は胴体から離れていたことだろう。もちろん、誇張でも比喩でもない。殺す気の一撃だった。グレンはルゼの抗議が聞こえてないのか、いつも通りの表情でルゼの腕を指さした。
「竜鱗が出たぞ」
「へっ?」
つられて腕を見る。確かに鱗のようなものがところどころに現れていた。
「おまえ、本気で命の危機を感じないと強くなれないタイプだな」
言われて思い出す。初めて息吹を使ったとき、強く死の恐怖を感じていた。あの時は人間の強さもわからず、まともに戦ったこともなく、見つかれば死ぬと思っていたのだ。
そこまで思い出して、だらりと嫌な汗が噴き出した。
「まさか……」
嘘だよね? と綴るような目でグレンを見つめると、グレンは大太刀を肩でトントンしながら絶望的な言葉を発した。
「殺す気でいくから、全力で防御しろ」
「そうくると思ったよ、くそがッッ!!!」
淑女にあるまじき悪態を吐きながらも、ルゼの地獄の特訓は続いたのだった。
***
「おぉ、おまえさんら戻ったか……って、なにがあった!?」
ドゥルグはグレンの横でふよふよしている見るからに仏頂面のミニドラゴンを見て目を剝いた。もちろん、ルゼである。竜化には、一応成功した。が、サイズがとっても小さい。せいぜい五十センチほどしかないだろう。
なお、ステータスはこうなった。
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【名前】ルゼ=フェンドル=リンドアルヴ
【年齢】13歳
【性別】女
【種族】結晶竜(混血)
【固有スキル】息吹、竜晶化〔攻撃・防御〕、竜晶生成・操作・分解、竜化
【特殊スキル】竜玉作成〔中品質〕
【進化状態】不完全覚醒
*
【魔力】51000
【火魔法】Lv3(上限Lv5)
【水魔法】Lv3(上限Lv3)
【土魔法】Lv2(上限Lv3)
【風魔法】Lv2(上限Lv5)
【光魔法】Lv2(上限Lv3)
【闇魔法】Lv2(上限Lv3)
【力魔法】Lv3(上限Lv5)
【時空魔法】Lv2(上限Lv3)
【生物魔法】Lv5(上限Lv5)
【創造魔法】Lv3(上限Lv3)
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「不完全だな。なにが悪いのか」
「全部だろ」
ジロリとグレンを睨みつけるルゼ。今ミニドラ姿をさらしているのは、なにもドゥルグに見せに来たからではない。戻れないのだ。
死への危機感から竜化できるようになったはいいものの、強制的に呼び覚ましたようなものなので、自分でもどうやって竜になっているのかよくわかっていない。おそらくそれが戻れない理由だろう。
尻尾でバシバシとグレンの背中を叩きまくるが、一切気にした様子もないので疲れて叩くのをやめると、ふと足元に小人たちが集まってきていた。皆一様にキラキラとした目でルゼを見上げている。ルゼはなんだろう? と首を傾げ、程なく理由に思い至り、手をポンと叩いた。
「……乗る?」
「「「乗る!!!」」」
小人たちの元気のいい声がこだました。
今や重力操作の魔道具で様々な乗り物に乗っている小人たちではあるが、生のしかも安全なドラゴンに乗れるというのは、また別のロマンなのだろう。ルゼの大きさでは一人ずつしか乗れないので、順番に背に乗せながら拠点内を一周して戻ってくる。小人たち、大はしゃぎである。ドゥルグですら、ちゃっかり順番待ちの列にならんでいたほどだ。
結局、1週間ほどで元の姿に戻れるようにはなるのだが、完全覚醒することはなぜかできなかった。




