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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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94.守り方



「私は、自分が『王家の巫女』だと公表した方がいいのではないかと思っています。

それが最も安全にヴァレン様をお守りできるのではないかと思うのです。」


「忠誠の魔法」が成功して王族のような白銀の髪に変わったことに加えて、ヴァレン様と過ごしていると日に日に魔力が増えていくのを実感して、やはり自分が「王家の巫女」なのだと確信した。


第一王子殿下が「王家の魔法」を使って人を操っているのなら、ステラが「王家の巫女」であることを公表すれば無駄な争いはせずに、ヴァレン様に王位を継いでいただくことができるのではないかと思ったのだ。


恐れ多くて言い出せなかったが、これほど襲撃が続くのなら、ヴァレン様をお守りするには自分が名乗り出た方がいいのではないかと考えるようになった。



ヴァレン様は厳しい口調でステラにはっきりと言った。


「だめだ。ステラの身に危険が及ぶ。」

「ヴァレン様、私は王国魔術師です。危険を怖いとは思いません。そして自分の身を守る術は心得ております。」


ステラが跪こうとして体を起こそうとすると、ヴァレン様に押さえつけられた。


「今の私にはステラを守るだけの十分な力がない。君に危険が及ぶのは耐えられない。」

「ヴァレン様、私の使命はヴァレン様をお守りすることです。私を守っていただく必要はありません。」


濃い金色の瞳が歪められて胸が痛むが、ステラも折れる気はなかった。


「とにかくだめだ。」

「ヴァレン様。」


起き上がろうとするステラを押さえつけるヴァレン様の手が緩んだかと思うと、代わりにその金色の目が深紅に染まってステラを捉え、重厚な威圧感がヴァレン様から放たれて身動きが取れなくなる。


「今はならぬ。わかったか。」

「……はい、ヴァレン殿下。」


胸に響く声で命令されると逆らえない。

ステラが体の力を抜くと、ヴァレン様はそのままぎゅっとステラを抱き締めた。




◇◇◇




翌朝、ぐっすり眠ったステラはすっかり魔力が回復していた。


「おはようございます、ヴァレン様。」

「おはよう、ステラ。すっかり元気だね。」

「昨日はご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」

「元気になったならよかったよ。」


むしろ昨日よりも元気になったステラを見てヴァレン様は苦笑いしている。




ヴァレン様を執務室に送り届けた後、王国魔術師団の本部に向かう。

師団長室をノックすると、すぐに返事が返ってきた。


「失礼いたします。ステラが参りました。」

「入れ。」


入室して敬礼をすると父が微笑んでいた。


「魔力は戻ったんだな。」

「はい、師団長。ご心配をおかけしました。」


ステラはまた一礼する。


父はさっと防音結界を張った後、椅子を指したので腰かける。


「ヴァレン殿下は何かおっしゃっていたか。」

「何の魔法を使ったのか聞かれましたが、それよりも私の体を心配されていました。」

「そうか。陛下はあの後ステラのことを褒めちぎっておられたよ。」

「そ、そんな…。お父様が助けてくださったお陰です。」

「私は手が空いたから手伝っただけだ。ステラの実力だよ。」

「あ、ありがとうございます、お父様。」


師団長に褒められたと思うと照れてしまって目を逸らした。




すると、父が今度は真剣な声で話し始める。


「ステラが捕らえた罪人を尋問にかけたのだが、問題があってな。」

「…はい、何でしょうか。」

「第二王子殿下の指示で王族を襲ったと言っている。」


ステラはその言葉に目を丸くして息を飲む。


「そんな、あり得ません。」

「そうだとしたらステラが敵を捕らえるメリットはないし、私も信じていないよ。

昨日、国王陛下自ら尋問されてステラが《真実》を述べたとお考えだから、陛下も信じておられない。」

「よ、よかったです…。」


やはり自分は尋問されていたのだと知って冷や汗をかくが、王族を襲うなどというとんでもない罪をヴァレン様が犯すなんて考えられないので、ほっと胸を撫で下ろす。


父は国王陛下の「王家の魔法」がステラには効かないことを知っているが、父の《真実を見抜く》片眼鏡はステラが《真実》を述べたことを見抜いてくれているだろう。



「ただ、罪人の尋問の内容はいずれ公表されるから、第一王子派の貴族は騒ぎ立てるだろうな。

そうなるとヴァレン殿下の立場は危うくなる。」

「はい…。」


ステラは、父にもあの話を聞いてみようと思った。


「お父様、ヴァレン殿下には反対されたのですが、私が『王家の巫女』だと公表するというのは早計でしょうか。」


父がステラをじっと見つめるので話を続ける。


「私が『王家の巫女』だと言えば、神が定めた王位継承者はヴァレン殿下だということになります。

そうなれば第一王子殿下もこの争いから手を引くのではないでしょうか。」


父は特に動じずに、静かに話し出す。


「ステラはそれをどうやって証明するんだ?

ステラの出自は証明できないし、髪の色とその魔力だけでは言い切れないだろう?

『忠誠の魔法』もその効果も、国の中枢を担う重臣でさえ知らない。

今の状況でステラが『王家の巫女』だと名乗り出たとしても、国王陛下にお話しする前に貴族達がお前を潰すだろうな。」


父の言葉には反論する余地がなかった。

ヴァレン様がおっしゃっていた、「守る力がない」という言葉の意味がやっとわかった。


「…わかりました、お父様。やめておきます。」

「それがいいだろうな。」




どうしたらヴァレン様をお守りできるのかまた考えなければいけないと思っていると、父が立ち上がり、ステラの横に腰かけた。


「ステラはずっと近衛魔術師を続けるのか?」

「はい。ヴァレン様には伝えていませんが、第一王妃陛下にはご許可をいただきました。」


その言葉に父は目を瞠ると、なぜか笑い出した。


「そうか、ステラは第一王妃陛下にも気に入られているんだもんな。」

「お父様は学院の同級生だったと伺いましたわ。」

「そんなことまで聞いたのか。」

「私が知らなかったので、ヴァレン殿下がお父様は徹底していたんだなとおっしゃっていました。」

「まあな。大事な娘を盗られないようにね。…結局奪われてしまったが。」

「お、お父様…っ!」


睨み付けるような表情を浮かべた父に慌てると父はまた笑って言った。



「それなら私のところまで昇ってこい。」



今度は父の言葉にステラが目を瞠った。


「ヴァレン殿下に力が足りないのなら、お前が力をつければいい。そうだろう?」

「…はい!師団長!」


父はぽんぽんと優しくステラの頭を撫でる。

憧れの父に夢を認めてもらえたのが嬉しくてステラはにこっと微笑む。


「どうすれば師団長のように強くなれますか?」

「とりあえず体力をつけて魔力を自分の物にすることだな。魔力切れになるようじゃ鍛練が足りない。」

「わかりました、師団長。」


ステラは父の言葉に燃え上がった。


「では、訓練に行って参ります。」

「そうか。励めよ。」


ステラはピシッと敬礼をして扉を出ると、意気揚々と訓練場に走って向かった。




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