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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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72.豊穣の魔法※

※軽いR15注意



入学式が始まり、ヴァレン殿下も入場される。


ステラは壇を下りたところで会場を見回して警戒した。

父が殿下の隣にいるので壇上は安全だと判断して、ステラは会場の警備に集中することにしたのだ。


ファンクラブの先輩方がステラを見て頬を赤くしていたが、悲鳴を上げるのはやめてくれたようで安心した。




式は厳かに、つつがなく進行していく。

ステラの魔術も相変わらず微弱な反応は示したが、強い反応はない。


「それでは、新入生代表による宣誓と王家による『豊穣の魔法』を執り行います。」


その声に、会場に意識を向けたまま壇上を見る。


今年の首席入学の男子生徒が祭壇に上がって跪くと、ヴァレン殿下も静かに歩いて魔方陣の中に立つ。不思議な威圧感が会場を満たす。


「面を上げよ。」


胸を震わせるその声に、ステラの心臓は掴まれたように大きく脈打ち、ぎゅーっと胸が痛くなる。



「シリル・ゴードン。我と王国に誓いを述べよ。」


ステラはその声に引き寄せられて目が離せない。




「……この力が王国の大地を満たし、民に豊穣をもたらすよう願います。」


首席入学生が宣誓を終えて魔力を込めると、魔方陣が赤く光った。


ヴァレン殿下の瞳がさっと深紅に染まると、その手を魔方陣にかざして魔方陣を金色に染めた。

「王家の魔法」の魔力に反応して、ステラの血管がぞわぞわする。

魔方陣は金色に輝いているが、一年前に経験したようなうねりはやはり起きていなかった。



ヴァレン殿下が詠唱を終えると、光の柱が大聖堂の天井に向けて放たれた。

ステラの時は天井を突き抜けていたけど、魔力を込めすぎたのかもしれないと気づいた。


指輪の輝く手をふわっと上に掲げると光の柱が波となって、ステラの足元にも柔らかく降り注ぐ。



光の波が体を包むと、そこに宿る魔力がステラの魔力と共鳴する。

それに加えてステラの体に残るヴァレン殿下の魔力が光の波に宿る魔力に共鳴して体中の血管が喜びに沸き立つような感覚になる。


その感覚に驚いて再び壇上に目を向けると、ヴァレン殿下もステラを見ていて、微かに微笑んでくれた。

その紅い瞳に目が離せなくなっていると、瞬きの間にまた瞳が金色に戻り、魔法が終わった。



はっとしてまた会場を見回すと、皆が幻想的な光景に目を輝かせていた。

気を引き締めて警備に戻り、無事に入学式を終えた。


退場されるヴァレン殿下の後ろについて、ステラも大聖堂を後にした。




◇◇◇




帰りの馬車で、横に座るヴァレン様を見られなくて顔を伏せていた。


先程の魔法で一年前のことを思い出して、自分がお隣にいて、ローブに王家の紋章が輝いて、左手の薬指に指輪が収まっている事実がまた恐れ多くなっていたのだ。



「去年のことを思い出すな。」


ヴァレン様に静かに呟く。

ステラはその声にそっと顔を上げる。

金色の瞳がステラを優しく見つめていた。


「…私は何度でもヴァレン様のことをお慕いしてしまいます。」


ヴァレン様の神秘的な瞳を見つめながら呟く。


魔力のうねりがなくても、「王家の巫女」でなくても、あの場でヴァレン様のその瞳を見てしまったらステラは何度でもヴァレン様に恋に落ちて、求めてしまうだろう。



「今お隣にいさせていただいて、本当に幸せです。」


王族の証が輝いているヴァレン様の右手に、同じ指輪が輝く自分の左手をそっと重ねる。

恐れ多くもその手に触れられる幸せが、いつも以上に尊く感じられた。



ステラが再び顔を上げてヴァレン様に微笑むとヴァレン様は驚いたようにステラを見つめていたが、目が合うと不敵に微笑んだ。


肩を抱き寄せられて、あっという間に唇を奪われる。


「んっ…ヴァレン様…そ、外で…す……はぅ……」

「ステラが悪い。」

「な、にか…ふっ……んんっ……」


何か悪いことをしたのかと慌てるが、唇が離される気配はなく、その手が体の際どいところを優しく撫でてステラは震える。



よろよろしながら馬車から降りてそのまま私室に連れていかれると、明るい日の光が差す部屋の中で何度も意識を飛ばすことになった。


執務室に戻るのが遅くなってレオナルドから冷ややかな目を向けられたが、ヴァレン様はその分夜までご機嫌で公務に取り組まれたので文句は言われなかった。





◇◇◇




入学式の翌日から授業が始まったので、ステラは毎日慌ただしく動いていた。


ヴァレン様が執務室にいらっしゃる間に学院に行き、謁見などで人と会う予定があるときは急いで帰って護衛をする。

天覧試合の予選もあったので、合間に戦ってまた学院に戻る。



「ステラ、ちゃんと眠れてる?」


執務室でヴァレン様が打ち合わせをされているので護衛をしていると、隣に立っていたレオナルドに小声で聞かれる。


「レオ様、ご存知でしょう。私は田舎育ちなので丈夫です。」

「それならいいけど、眠れるときに寝るんだよ。」

「お気遣いありがとうございます、レオ様。」


相変わらずレオナルドはステラに甘い。

ステラは田舎にいるときはもっと朝早くから起きて魔法の練習をして、昼間には家令とダンスやマナーのレッスンをしたり勉強したり畑の世話をして、夕方には騎士と鍛練をしていたので丈夫なのだ。


でも高貴なお育ちのヴァレン様やレオナルドにはよく心配されていた。

最近はヴァレン様もステラを寝かせることにしてくれたらしく、おかげさまでむしろ前よりも生き生きと過ごせていた。





そうやって過ごしていたある日の夕方、天覧試合の予選を終えて無事に勝ち抜いたステラは、戦闘部隊の皆と一緒に慰労会と称して本部でお酒や軽食をつまんでいた。


お酒はヴァレン様に禁止されているのでジュースをちびちびと飲んでいると、初めて戦って以来仲良くしてもらっているディーンに話しかけられる。


「なんか最近ステラの魔力って質が変わったよな。」

「そうですか?」

「元々隙がなかったけど力が漲っているというか。元気だよな。」

「確かに不思議なくらい元気です。」

「学院にも通っているんだろ?どこにそんな体力があるんだ。」

「たくさん寝ているから成長期なのかもしれません。」

「そうか、若いな。」


ディーンも周りの魔術師もお酒が入っているからか、お腹を抱えて笑っている。



ステラには実は思い当たる節があった。

ヴァレン様に「忠誠の魔法」をかけてもらってから、日に日に魔力が増しているのだ。

ヴァレン様と婚約してからはいくらでも魔力が湧いてくるような気さえしている。


学院を襲撃されたときにあれだけ大規模な魔術を使ったのに軽い魔力切れで済んだのもきっとそのおかげだ。


自分の中に残っているヴァレン様の魔力のおかげなのか、「王家の巫女」の力を引き出してもらったおかげなのかわからないが、元気に過ごせているので有り難く力を使わせてもらっていた。



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