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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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71/112

71.誕生日



翌朝、王家の紋章が入った馬車で学院に向かう。

学院のローブ姿ではないのが寂しいが、護衛とはいえヴァレン様と一緒に学院に行ける方が嬉しくて、胸が高鳴ってしまう。


「ステラ、今日は元気そうだね。」

「よ、よく眠れたので…。」

「そう。」


今日あくまでも任務なので、ヴァレン様と一緒に行くのが嬉しいとは言えなくて誤魔化す。

それに実際、昨日はステラが先に眠ってしまったので睡眠に集中できた。




「…ステラ。」


急に真剣な声で呼ばれて驚いてヴァレン様を見つめると、にこっと微笑まれた。


「誕生日、おめでとう。」


その言葉にはっと息を飲む。


「あっ…ありがとうございます。」

「もしかして忘れていたの?」

「き、昨日の魔法戦ですっかり飛んでしまって…でも、ヴァレン様にお祝いしていただくなんて、あっ」


馬車の中なので跪けないが、慌てて姿勢を正して頭を下げる。


「身に余る光栄、恐悦至極でございます。ヴァレン殿下。」

「…っ、ステラ…」


なぜか笑われてしまって慌てる。


「あ、あの、ヴァレン様にお祝いいただけるなんて夢のようです。ありがとうございます。」

「それでいいよ。」


まだ笑いの余韻が残ってあどけなくも見えるヴァレン様を見て、こんなに麗しくて尊い方に誕生日を祝ってもらえる幸せに微笑んだ。



すると、ヴァレン様が上着から小さな袋を取り出して、ステラに手渡した。


「こ、れは…?」

「私からのお祝い。よかったら使って。」

「あ、あ、あ、ありがとうございます…!あっ、有り難き光栄に存じます。ヴァレン殿下。」

「っ本当に何度も笑わせないでくれ…。」


ヴァレン様に突然下賜いただいて恐れ多くて手は震え、頭はパニックになる。

ヴァレン様はそれを見てまた吹き出しそうになるのを耐えている。



どうしようと思いながらもヴァレン様の視線に促されてそっと袋を開けると、そこには金で出来たローブの留め具がきらきらと輝いていた。


「……すごく綺麗です。わ、私がいただいていいんでしょうか。」

「ステラのために用意したから、使ってくれたら嬉しい。」

「ありがとうございます、ヴァレン様。嬉しいです。」


早速王国魔術師のローブにつけていた父のお古の留め具を外して、いただいた物をつけようと袋から出して固まる。



ローブにつけるためにピンになっている部分に王家の紋章が入っていた。

王族のための特注品だ。


「ヴァ、ヴァレン様…わ、わ、私には不相応です…!」

「どうして?」

「こ、こ、これはお、王族の方々の…」

「ステラも王族だって言ってるでしょう。」

「ひっ…」


ヴァレン様はクスクス笑うと、ステラの震える手から留め具を取って、さっとローブに着けてくれた。


王家の紋章が入った金の留め具が金の鎖で繋がれていて、赤い宝石が垂れている。


改めて見るとその精巧な作りと眩い輝きに、ステラが身につけていいようなものではないような気がする。


「似合ってる。」

「あ、ありがとうございます…。」


でも確かに金色の縁取りが縫いとられている王国魔術師のローブにぴったり合っていて、ステラも素直に嬉しくなってきた。


「嬉しいです。大切にします。ありがとうございます、ヴァレン様。」

「喜んでもらえたならよかった。」


お礼の気持ちを伝えたくて恐る恐るヴァレン様の胸に顔を寄せると、優しい手付きで抱き締めて頭を撫でてくれた。




馬車が学院に到着する。

一年前のように、王家の紋章の入った馬車に周囲がざわめく。

今度は本物の王族が降りてくるんだから騒ぎになるんだろうなと諦めの気持ちでヴァレン様を見ると、またクスクス笑われた。


「ご婚約者様だわ。噂通り麗しくていらっしゃるわ…。」

「『氷の殿下』もあんなに優しそうに微笑まれるのね。」

「婚約式を急がれたようだからご寵愛が深いんだろう。」


(わ、私は護衛。気のせいよ。誰も見てないわ。)


ヴァレン様のエスコートで馬車を降りると新入生の父兄であろう貴族達の声が聞こえてきて赤面しそうになるが、今日は護衛なので自分に言い聞かせてなんとか耐える。



護衛らしく一歩下がろうとしたが許されず、腰を抱かれる。

だけど、学院だと落ち着いてしまう懐かしい距離に嬉しくなって思わずヴァレン様を見上げると、ヴァレン様も微笑み返してくれた。


「まぁ、お二人で微笑まれると美しすぎて絵画のようだわ。」

「ご結婚はいつされるんだ。」

「わからないけどあんなに仲睦まじいんだもの、きっと早いわ。」


また貴族の噂が聞こえてしまって、微笑むのをやめて護衛に徹することにしたステラを見て、ヴァレン様が笑いを耐えて肩を震わせていた。




ヴァレン様は来賓だが、先に魔方陣を用意するので生徒や保護者が集まる前に大聖堂に入場する。


「《敵を現せ》」


人が集まるので一応空間魔術をかけておく。


ヴァレン様が入場されると在校生は見慣れているので落ち着いているが、埋まり始めていた保護者席がざわめいた。


杖は持ったまま、ヴァレン様の一歩後ろについて祭壇に進む。



ヴァレン様は祭壇の中心に立つと、その瞳を深紅に染めて床に手をかざす。

金色の魔方陣が現れたが、すぐに光が収まって床に魔方陣が描かれた。


自分のときもこのように準備されていたのだと感慨深く見ていたら、先程の魔術がなんとなく反応しているような気がする。


「《場所を示せ》」


小声で詠唱するが、もやもやしていて反応が鈍い。


(明確に攻撃の意思があれば反応するはずだけど、これは一体…)

ステラが警戒している間にヴァレン様が確認を終えられたのでステラも後をついていく。



「ヴァレン殿下、《敵を現す》魔術が反応しました。

ただし反応が鈍く場所は不明です。攻撃があれば応戦しますが、一旦様子を見ます。」


歩きながら耳元で囁くと、気にしていないように軽く頷いてまた前を向かれた。



ヴァレン殿下を庇うように歩きながら大聖堂の裏手に回ると、来賓が既に集まっていた。

ステラの父と目が合ったので、もらった指輪に短く少しだけ魔力を込める。


すぐにこちらにきてくれたので小声で報告する。


「何かあったのか?」

「師団長、大聖堂内に展開した《敵を現す》魔術が微かに反応しました。場所は不明です。念のため警戒します。」

「承知した。無理はするな。」

「承知しました、師団長。」


ステラは、第一王子殿下の「王家の魔法」の影響を受けた者がいるのではないかと疑っていた。


きっと父にも伝わっているはずなので、それだけ伝えると敬礼して、またヴァレン殿下を庇う体勢に戻った。

近衛騎士達もステラの様子を見て警戒をしてくれている。



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