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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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68/133

68.護衛対象※

※軽いR15注意



恥ずかしい思いをしながらどうにか準備を終えて、ヴァレン様の私室に繋がる扉をノックする。


「ヴァレン様、お待たせしました。」

「入って。」

「…はい。失礼します。」


いつもヴァレン様がステラの部屋に来るばかりで入ったことはなかったので本当にいいのかなと不安になるが、恐る恐る扉を開けて入室して頭を下げる。


「おいで。」


顔を上げるとヴァレン様はステラの部屋にもあるようなカウチに腰掛けていた。



ヴァレン様の部屋はステラの部屋よりももっと広くて、天井まである本棚がいくつも置かれていた。

天蓋はないけどふかふかそうなベッドに、シャワールームまでついている。


ここがヴァレン様のお部屋かと思うと急に鼓動が高鳴ってしまい、待たせているのにこれではだめだと慌ててヴァレン様に駆け寄って跪く。



「お待たせして申し訳ありませんでした。」

「大丈夫だよ。それ、隠したんだ。」


首元を指されてステラは赤面する。


「侍女が頑張ってくれました…。」

「それは残念。」


ステラは恥ずかしくてヴァレン様と目が合わせられない。



すると、ヴァレン様がステラの顎をくいっと上げてあっという間に唇を奪った。


「私の物だと皆に教えようと思ったのに」

「…っヴァレン様。」


昨日の名残なのかステラの幻覚なのか、ヴァレン様からは色気が滲み出ている。



致死量の色気に見ていられなくて顔を伏せると、左手に赤い宝石が輝いているのに気付いてはっとする。

ヴァレン様もその輝きが目に入ったのか、ステラの左手をとって薬指の指輪にそっと口付ける。


「ずっとここを埋めたかった。ステラに先を越されてしまったけどね。」


ステラは恥ずかしくなってまた赤面する。


「あ、あの、こんな恐れ多い物を私がいただいていいのでしょうか…。」

「国王陛下がステラに下賜されたんだ。陛下が認められたんだから、ステラにはこれを身に付ける資格がある。」

「ひっ……。」


あまりにも恐れ多くて手が震えてきた。


「これも慣れるよ。」


ヴァレン様は微笑んでまた指輪に唇を落とした。




◇◇◇




それからは、恐れ多くも夜もヴァレン様と一緒に過ごすようになった。


夜のヴァレン様は甘く、どこまでもステラを蕩けさせて、寝た記憶もないまま気付いたら朝を迎え、また致死量の色気を浴びる。



毎朝その麗しいお顔が目の前で微笑んでいることに信じられない気持ちになりながら、寝不足気味の目を擦り、重い腰をどうにか立たせてヴァレン様の公務の護衛をする。


毎日ヴァレン様とずっと一緒にいられる生活が幸せで、溶けるように時間が過ぎていった。




そして今日は、修了式のため久しぶりに学院に向かう日だ。


「今日は学院に行くんだよね?」

「…はい。」


朝日を浴びてキラキラと輝く白銀の髪に目を細めながら、ヴァレン様と学院を歩くことはもうないことを実感する。


ヴァレン様と一緒にいられないのが恐れ多くも寂しいと思ってしまって、つい声が沈んでしまう。


「帰ってきたらまた一緒にいられるよ。」

「す、すみませんっ……ひゃっ…。 」


不相応な願いが見透かされてしまったと思って慌てて謝ると、ヴァレン様が急にステラの首筋に顔を埋めた。

チクッとした痛みに何をされたのか気付いて耳まで赤くなる。


「ヴァ、ヴァレン様…っ!そこは……」

「こうしておけばいつでも私を思い出せるよ。」

「……っ!」


不敵に微笑むヴァレン様からは致死量の色気が出ていてステラは何も言えなくなる。


時間になったので重い体を無理矢理起こして学院の制服とローブに着替えるが、色づいたばかりの赤い跡を隠すのに侍女が頬を染めているのが見えてステラはぼぼぼっと沸騰した。






ヴァレン様を執務室まで護衛した後、ステラも学院に向かう。


四頭立ての馬車はあまりにも恐れ多すぎたのでステラが懇願して、二頭立ての、入学式の時に使わせていただいた馬車にしてもらった。


最初はこの馬車にも膝から崩れ落ちたことを思い出し、だんだん慣れてきてしまっている自分に気付いて恐ろしくなる。



車窓の景色が王立学園と王立魔法学院を囲む白亜の外壁に染まり、卒業式からまだ二週間ほどなのに懐かしさを感じた。



馬車が門の前に到着して従者にお礼を言ってから敷地に入ると、ヴァレン様の近衛騎士のメーデンが、ステラの護衛で後ろからついてくる。


王城の中でも護衛がついているらしいが全く気配がないので、目の前で自分の動きに合わせてくれる騎士に改めて申し訳なくなってしまう。

ヴァレン様はいつもたくさんの騎士や侍従や侍女を連れているけど窮屈ではないのだろうか。



ヴァレン様のことを考えてしまい、学院を一人で歩くことにまた寂しくなっていると大聖堂が見えてきた。


まだ式まで時間があるので、外で話している生徒で賑わっていた。



「あ、ステラ様だわ!」


一年生も集まっていたのでそちらに向かおうとすると、急に見知らぬ先輩が叫んで、十人ほどの生徒がこちらに駆け寄ってくる。

その声でファンクラブのことを思い出してステラは後ずさる。


今日は王国魔術師のローブではないので、素の弱いステラが逃げようとおろおろしていると、近衛騎士のメーデンがステラを庇うように前に立って言った。



「この御方は第二王子殿下のご婚約者様であられる。尊きお体に気安く触れるでない。」



迫力のあるその声に生徒達はピタッと止まって一斉に頭を下げる。


「申し訳ございません、騎士様。ご無礼をお許しください、ステラ様。」

「い、いいんです…!今後はこういった活動はやめていただけたら嬉しいです。」

「承知しました。ご無礼をお許しください。」

「だ、大丈夫です。」


身を震わせて謝罪する姿に申し訳なくなって、逃げるようにその場を離れた。



生徒の輪から離れたところで気持ちを落ち着かせて、メーデンに向き直ってお礼を言う。


「メーデン様、助かりました。ありがとうございました。」

「殿下に頼まれていたんです。お役に立ててよかったです。

それから、私に様はお止めください、ステラ様。」


その言葉にステラは目を見開く。


「そ、そんな…。私は今も近衛魔術師ですので、おやめください。」

「主君のお妃様になられるのですから当然です。ね、ステラ様。」


口調に合わず、ぐっと親指を立てる動きを見て何を言ってもやめてくれないのだと悟り無駄な抵抗はやめておくことにした。


でもステラは自分だけ住む世界が変わってしまったような、何とも言えない寂しさに胸が痛んだ。



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