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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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67.夕陽に染められて※

※R15注意



「…ステラ、渡したいものがある。」

「はい。」


やっと落ち着きを取り戻したステラはなんだろうと思ってヴァレン様を見上げる。


「ここへ持って参れ。」

「かしこまりました、第二王子殿下。」


ヴァレン様が外に声をかけるとすぐに扉が開かれ、先程の侍従が小さな箱を盆を掲げながら入室する。

ヴァレン様がそれを受け取り、侍従が退出すると、ステラの方に静かに歩いてくる。


「ステラ、そこに腰掛けてくれ。」

「はい、ヴァレン様。」


カウチに目を向けながら言うヴァレン様に従い、腰掛けた。



ヴァレン様はさっと杖を取り出して防音結界を張ると、ステラを見つめた。


立ったままじっとこちらを見るヴァレン様に、不安になって顔を上げる。

ステラの瞳がヴァレン様を映すと、ヴァレン様の濃い金色の瞳に力が込められる。



そして、ステラの前にそっと跪いた。



慌てて止めようとするが、その瞳に力強く見つめられてステラは動けなくなる。



「これを、受け取ってほしい。」



ヴァレン様が手に持っていた箱をそっと開けると、大きな赤い宝石が嵌め込まれた指輪が輝いていた。


ステラにはそれがヴァレン様や王族方がいつもされている指輪だとわかった。



「ヴァレン様…これは…。」

「国王陛下から授かった、王族の証だ。」


その言葉にステラは息を飲む。


「ステラが、私の物だという証だ。」


恐れ多くて背けそうになっていた目が引き戻される。

濃い金色の瞳がステラを真っ直ぐに射貫く。




「ステラ、その指に収めてはくれぬか。」




もう一度、胸に響く声で懇願するように言われるとステラは抗えず、震えながら左手を差し出す。


ヴァレン様がステラの薬指に指輪を通す。


白銀の髪が窓から差し込む夕焼けに照らされて朱く染まっていた。

その美しさにステラは息を飲んでヴァレン様を見つめる。


自分は、本当にこの麗しい方のお妃様になるのだ。



ヴァレン様もステラをじっと見つめて微笑むと、金色の瞳がさっと深紅に染まり、ステラの薬指に収まった指輪にそっと触れた。


指輪を通してヴァレン様の魔力とステラの魔力が共鳴して、体が喜びに沸き立つ。


ステラの左手の薬指にぴったり指輪が嵌まると、顔を上げたヴァレン様とまた目が合った。



夕陽の朱が深紅に溶けて、その神秘的な瞳から目が離せない。


「やっと、私の物になった。」

「…はい、ヴァレン様。」


その瞳に引き寄せられるように唇が重なり、離れられなくなる。


激しい口付けに息が上がると、立ち上がったヴァレン様に手を引かれてベッドに優しく寝かせてもらう。




「…この日をずっと待っていた。」


金色に戻っているけど、夕陽が映り込んで神秘的な色を湛えている瞳を見つめる。


ステラが差し上げたアメジストの指輪が光る左手で優しく首筋をなぞられる。


「ステラ、愛してる。」

「私も愛しています、ヴァレン様。」


意識が自分の物じゃないみたいに強くヴァレン様に引き寄せられ、この尊い御方の全てが欲しいと願ってしまう。



何度も口付けを交わして、その唇がステラの体をなぞる。


覆い被さったヴァレン様の白銀の髪が黄昏の色に染まって綺麗だと思ったが、一瞬で意識が体に引き戻される。


時々チクッと走る痛みも電流が走ったようにステラの体を跳ねさせる。




どこまでもステラを蕩けさせる優しい動きに夢中になり、窓の外の陽が落ちて王都の夜景がきらめき始めたことにも気付かなかった。


ステラはヴァレン様の瞳に囚われたまま何度も夢を見て、夢と現の違いもわからなくなる頃に意識を失った。






◇◇◇





寮の窓から差し込む朝日にしてはやけに眩しい。それになぜか体が重たい。

まだ寝ていたいけど、強く差し込む光にぼんやりと目を開ける。

濃い金色の瞳がステラに微笑みかける。



そこでステラの意識は急激に覚醒した。


飛び起きようとしてシーツがずれると、朝の冷たい空気がやけに肌に突き刺さる。


「…っひゃああああっ」


自分が信じられない格好でいることに気付き、慌ててシーツを引き寄せる。

薄いシュミューズ一枚で、他に何も纏っていなかった。


ヴァレン様の前でなんでこんなことに、とパニックになったステラの脳裏に昨日の出来事が急に鮮明に甦る。


ぼぼぼっと沸騰して、耳どころか足の先まで赤くなる。

どんな顔をすればいいのかわからなくなってシーツに隠れる。


「おはよう、ステラ。」

「おはようございます、ヴァレン様…。」

「《清め》たんだけど、さすがにあのドレスを着させる訳にはいかないからそれで我慢して。」

「も、申し訳ありません……っ」


謝ろうとして顔を出すとクスクスと笑うヴァレン様と目が合ってしまって、いろんな恥ずかしさで居たたまれなくなってまた顔を伏せる。



「昨日のステラ、本当に可愛かった。」

「な、な、な……」


「何をおっしゃるんですか」と言いたいけど言葉が出てこない。


「今からまたする?」


何を、と聞くまでもない。

薄いシュミューズ越しに体をなぞられてビクッと震える。


「だ、だ、だ、大丈夫です!!」


不敵に微笑むヴァレン様の色気に流されかけたが、煌々と差し込む朝日がステラの意識を引き戻してくれた。


今日も早速たくさん公務が入っているのだ。

早く起きて着替えないと、と思っていたらまたヴァレン様に引き寄せられる。


その瞳が深紅に染まり、あっ、と思ったらお臍の下辺りに手を当てられて、ヴァレン様の魔力が流れてくる。

また魔力が呼応して共鳴するような感覚に驚いているとヴァレン様が言った。


「私はいいけど、ステラには早いからね。子はもう少ししてからね。」


(こ……子?!!)


一瞬間が空いて理解が追い付いて、またぼぼぼっと赤面する。



羞恥と混乱でヨレヨレになっているとヴァレン様が言った。


「では、支度をしようか。」

「失礼いたします。」


その言葉に侍女がずらっと並んで入室する。



いつも通り支度をしようとベッドを出て、自分の格好に改めて気付く。


それにヴァレン様と一緒にベッドにいる姿を侍女に見られてしまったことにも気がついて、恥ずかしさが限界を超えたステラは膝から崩れ落ちて侍女に抱き止められた。


ヴァレン様は肩を震わせて笑いを耐えながらさっと支度を整えて、「準備が出来たら教えて」と言って私室に戻られた。



茹で蛸状態でどうにか王国魔術師のローブに着替えた後、侍女がなぜか首元を念入りに化粧をするので不思議に思って姿見を見る。

無数に散らばった赤い跡が王国魔術師のローブを着ても見える位置にも残っているのを見て真っ赤になり、侍女に全てを任せることにした。



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