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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
最終章 卒業編

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293.青春の終わり※

※軽いR15注意



学院で過ごす最後の学期はあっという間に終わりを迎えた。

学院生活最後の授業はカールの防御魔術だった。

教師姿のカールを見るのも最後かと思うと、面白さよりも感慨深さが勝ってなんだかしんみりしてしまう。


感傷に浸りながらぼーっと話を聞いていると、突然頭上に雷が降ってきた。


「っ?!何するのよ!」

「王国魔術師は常に自分に防御魔術を施しているから、このようにぼーっとしていても攻撃を防げる。」


確かに攻撃は防いだが、皆の前で不意打ちを喰らった仕返しでステラも無詠唱でカールに鋼の刃を巻き付けようとした。


「…っ、これは警備部隊が尋問で使う魔法だ。王太子妃殿下は大層気に入っておられて、見ての通りご愛用されている。」

「カール!」


カールは一瞬驚いたような顔をしたがすぐに杖を振った。

ステラの鋼の刃の糸はカールに無詠唱で切り刻まれて、鋼の刃の欠片がクラスメイトの手元に飛んでいった。

尋問の魔法を愛用しているだなんて野蛮な者だと思われたくなかったので睨み付けた。


「殿下の尋問は容赦ないからな。触ると手が切れるから気を付けろ。」


ステラはカールを睨み付けながらも、皆がカールとステラのやり取りに笑いを堪えているのが目に入って顔が赤くなった。



そんな調子で授業を受けていると終鈴が鳴った。


「私は君達が卒業したら正式に王国魔術師団に戻ることとなった。

王国魔術師となった君達とまた会えることを願っている。以上。」


なんだかかっこよく授業を終わらせたカールを女子生徒も男子生徒も恍惚とした顔で見つめていたので腹が立った。

カールにいじられたせいで、最後の授業に感じていた感慨深さもすっかり忘れてしまっていた。




◇◇◇




あっという間に学年末試験を終えて、最後の試験の成績が貼り出される日を迎えた。

見に行かなくても今日中には結果が届けられるのだが、ステラは居ても立ってもいられなくなって学院に貼り出される紙を見に来ていた。


大聖堂に立てられた看板の前でクラスメイトと一緒にその時を待っている時、ふと三年前はここでヴァレン様に抱き締められながら成績を見たことを思い出した。

あの時も場違いだとは思っていたが、最後の成績発表はこれまでになく緊張するからやはりとんでもなく場違いだった。

最後なのにいつも通りだったヴァレン様が特殊なのだ、と心の中でヴァレン様に文句を言っていたら、教師達が試験結果が書かれた紙を持ってきた。


隣にいたアリスと顔を見合わせて手をぎゅっと握ってその瞬間を待った。


『学年別首席

一年生 リアム・ヴィルゴー

四年生 ステラ・レクス』


首席の文字が見えてほっとしかけたが、「賢者の証」がもらえるのは全科目首席を守り抜いたときだけだ。

ステラは息を飲んで残りの結果を待った。


「……よかった…っ!」


全ての教科の成績を確認して、ステラはほっとしてヨレヨレと崩れ落ちた。

隣にいたアリスが笑いながら腰を支えてくれた。


「ステラ、やったわね!入学から全科目首席なんて師団長様以来だと聞いたわ。」

「アリス、ありがとう…。アリスも弟さんもよかったわね。」


『四年生

一位 ステラ・レクス

二位 ドラード・グラディウス

三位 アリス・ヴィルゴー

四位 エリザベス・フォード

五位 クリスフォード・アストラ』


四年生の学年別順位に一緒に勉強した三人の名前が上位に来ていてステラはそれも嬉しかった。

そしてこれまで勉強にさほど興味がなさそうだったエリザベスが上位に来ていることにも内心は驚いていた。


「ステラ!やったな!」

「ステラ!おめでとう!」

「ドラード!クリス!みんなよかったわ!」


少し離れたところにいたドラードとクリスが連れ立ってやってきた。

ステラは名前を呼んでくれたのが嬉しくて二人に思いっきり抱きついた。


「この試験の結果って幹部の方々にも見られるんだよな?」

「そうよ。皆のことを自信を持って推薦できるわ。」


ドラードがステラに聞いたので笑顔で答えた。


「でも筆記試験が不安だわ。筆記試験の結果も見られるのでしょう?」

「筆記試験の結果で魔法戦の順番が決まるけど、皆ならきっと大丈夫よ。」

「…そうよね。頑張るわ。」


不安そうに眉を下げたアリスの手を再びぎゅっと握ると、いつも通りの明るいアリスが戻ってきたのでまた笑みが漏れた。


王立魔法学院で過ごした四年間はステラに大切な主君と仲間を授けてくれた。

学院での青春は終わってしまうけど、これからも王城で仲間と過ごせることを願って、ステラは思い出の溢れる学院を後にした。





その夜、ヴァレン様に試験の結果を報告すると自分のことのように喜んでくれた。


「ステラが魔法伯に追い付いたんだな。」

「追い付いてはいません。でも、嬉しいです。」

「ステラが師団長になる日が楽しみだよ。…でも、何か私に隠していることはない?」

「え?そんな、何も…」

「男に抱きついたね?」

「……あっ…」


勢い余ってドラードとクリスに抱きついたことをステラはすっかり忘れていた。

近衛に見られていることなんて頭になかったのでまさかヴァレン様に伝わるとは思ってもみなくて固まっていると、ヴァレン様はステラを抱きかかえた。


「ヴァ、ヴァレン様、申し訳ございません…」

「お仕置きしなきゃね。」

「な、何を……っ…ん……」


そのままベッドに下ろされて、試験の喜びをすっかり忘れるような熱い口づけを落とされた。


お仕置きとは痛いのだろうかと怯えていたが、足が立たなくなるのではないかと思うくらい溶けさせられた。

終わらない快楽に一周回って怯え始めた頃、ヴァレン様がステラの肌から顔を離した。

濃い金色の瞳には致死量の色気が滲んでいて、既に染まっていた頬がまた熱くなるのがわかった。


「男に触れるなと言ったでしょう?」

「も、申し訳ございませ…んんっ……いやっ……あああっ………」


恐ろしいほどの快感を与えられて、空が白み始めた頃にステラの意識は途切れた。


翌日、訓練の成果でヨレヨレしながらもどうにか立ち上がったステラの横で余裕綽々で準備をするヴァレン様を睨み付けたけど微塵も効果はなくて、優雅にクスクスと笑われただけだった。




◇◇◇




翌週、ステラは久しぶりに王国魔術師の正装のローブに袖を通した。

勲章が増えて心なしか重たくなったローブを着ると自然と背筋が伸びた。

胸に輝く部隊長の階級章を見て、今日は四年間学んだクラスメイトの未来を、そして戦闘部隊の新しい仲間を自分が決めるのだと決意を新たにした。


「張り切ってるね、ステラ。」


今日も白地に金色の装飾が輝く王太子殿下のみに許される軍服を着たヴァレン様を見て、ヴァレン様はいつもこんなに重い決断をしているのだろうか、とふと思った。


「…ヴァレン様はご公務で疲れないのですか?」

「っ、ステラ、急にどうしたの?」


ヴァレン様は目を丸くしながら吹き出して、ステラの頭を優しく撫でた。


「疲れても私にはステラがいるから。」

「そ、そんな…。」


ステラと違って国を背負っているのだからステラとは比べ物にならないくらい立場が重いのだと気付いて、なんだか恐れ多くなって目を合わせられなくなった。


「ステラ、大丈夫だよ。自信を持って。君は魔法伯やリーズ公爵に認められたんだから。」

「ヴァレン様…。 ありがとうございます。」


父や前部隊長の名前を聞くと腑抜けている場合じゃない、と気を引き締めた。

ヴァレン様の濃い金色の瞳と目が合って、優しく口づけを落とされた。


「馬車は手配しなくて大丈夫?」

「だ、大丈夫です!団の馬車で行きます!」


クスクスと笑いながら聞かれて、ステラは慌てて否定した。

去年の試験ではヴァレン様のいたずらで王家の馬車が用意されていたのだ。

楽しそうに目を細めるヴァレン様を見ていたら緊張も恐れ多さも吹き飛んだ。

ステラも一緒になって笑って、時間が来たので貴族用の馬車寄せへと向かった。



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