表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第四章 帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

229/261

229.戦う覚悟



「戦闘部隊は厳しい戦いとなるだろう。くれぐれも命は大切にしてくれ。」

「「「承知しました、師団長。」」」


戦闘部隊長とクリンプトン先生とステラが返事をした。

クリンプトン先生の白いローブ姿を見慣れなくてどぎまぎしてしまうので、ステラはあまり見ないようにした。


「諜報部隊、帝国の状況を報告せよ。」

「はい、師団長。」


諜報部隊長が帝国に派遣している魔術師が得た情報を共有してくれた。


帝国はやはり王国とは根本的に考えが異なる。

既に皇帝陛下と皇太子殿下の近衛魔術師は補充されていて、帝国の臣民に対しては何事もなかったかのように振る舞っているらしい。

そして、それほどまでに固執する理由はわからないが、やはりそもそもの狙いはステラらしい。

自分のせいで戦争が起きる罪悪感に苛まれそうになったが、宣戦布告してきた帝国が悪いという考えにどうにか持っていった。


「人質の安否は不明です。ただ恐らくですが、王太子妃殿下との交渉材料として生かしているのではないかと考えています。」


ステラは諜報部隊長の言葉に目を瞠った。

諜報部隊長はステラの目をじっと見つめながら続けた。


「帝国は王太子妃殿下が戦闘副部隊長であることも掴んでいます。

つまり、貴方が戦場に現れるだろうと踏んでいます。

貴方が戦場に現れたら、恐らく人質を交渉材料に貴方に帝国に来るように要求するでしょう。」


諜報部隊長は心を読む才能でもあるのだろうか。

ステラの心を一歩も二歩も先に読まれているようでステラは戦いた。


「私から言えるのはここまでです。

ただ、どうか無理はしないで下さい。王太子妃殿下。」


諜報部隊長が頭を下げたのでステラは気まずくなって顔を伏せた。

父が厳しい口調で続けた。


「状況はわかった。ステラ、決して帝国の手に落ちてはならない。お前はこの国の弱みだ。それを弁えろ。」

「…承知しました。師団長。諜報部隊長。」


ステラは父や諜報部隊長の言う通り、もし帝国がステラの身柄と引き換えに使者を返してくれると言うのなら従うつもりでいた。

だが、二人の忠告を受けてそんな甘い考えは捨てた方がいいと思い直した。

使者の救い方を考え直していると、父が言った。


「この戦いで無数の命が失われることだろう。

だが我々は歩みを止めてはならない。

この国と王族を守るため、命の犠牲をいとうことなく帝国と対峙せよ。」

「「「承知しました、師団長。」」」


ステラも気を引き締めて返事をして、幹部会議は終わった。





幹部会議を終えて、父と戦闘部隊長はその場に残ったが、クリンプトン先生は退出しようとしたので呼び止めた。


「クリンプトン先生!」

「ここで先生はやめてくれ。」


クリンプトン先生が苦笑いで振り返ったので、ステラはなんだか気が抜けた。


「ふ、副部隊長代行。」

「はい、なんでしょうか。副部隊長。」


わざとらしく敬礼をされたので思わず笑ってしまった。

何と呼べばいいか迷ったが、やっぱりいつも通り呼びかけた。


「せ、先生も残って下さい。話したいことがあります。」

「本当に先生はやめてくれ。私がからかわれる。」

「でも私にとっては先生です。」


確かに幹部達がニヤニヤとクリンプトン先生のことを見ているが、ステラにとっては先生でしかないのだ。

ステラがクリンプトン先生の見慣れない白いローブ姿にどぎまぎしていると、父がクリンプトン先生に話しかけた。


「カール、急に呼び戻してすまない。」

「滅相もございません、師団長。」


やはり父と王国魔術師のローブ姿のクリンプトン先生が話しているのは違和感があってなんとなくドキドキしてしまう。

戦闘部隊長もそんなステラを見て言った。


「君がカールの生徒なのは不思議だな。そもそもまだ学生なのが信じられない。」

「お、恐れ入ります、部隊長…。」


先程までの話が嘘のようにいつも通りの部隊長にたじたじになってしまう。



やがて、他の幹部達が会議室を退出した。


「それで、話とはなんだ?」


父がいつも通りの口調でステラに聞いた。


この部屋には常に防音結界がかけられているので、外で待っているヴァレン様付きの近衛騎士達には聞こえない。

ステラは姿勢を正して、父の目をまっすぐ見つめて言った。


「師団長。私は戦場に向かいます。」


父は表情を変えなかったので、ステラはそのまま続けた。


「クリンプトン先生に、私の魔力を込めた魔道具の指輪を託しました。

クリンプトン先生が戦場に到着されたら、私も転移魔術を使って戦場に向かいます。

私も王国魔術師として、皆と共に戦わせて下さい。」


戦闘部隊長は驚いた表情でステラを見つめたが、やはり父はいつも通り、鷹揚に微笑んでいた。


「それでこそ父様の娘だ。」


父の言葉に、ステラはほっとして力が抜けた。

そして否定されなかったということは、やはりステラがその気になれば戦場まで《転移》することも可能なのだと安心した。


戦闘部隊長は驚いた顔のまま、父に聞いた。


「しかし、副部隊長は…。」

「国王陛下と第一王妃陛下も戦闘副部隊長が戦場に行く許可を出された。」


父の言葉に戦闘部隊長は目を見開いて驚愕の表情を浮かべたが、もう何も言わなかった。

ステラは戦闘部隊長に言った。


「私も戦闘部隊の一員です。責務を全うさせて下さい。」

「…君を見くびっていたよ。そこまでの覚悟があったとは。

勿論歓迎するよ。皆も喜ぶだろう。」


ステラは戦闘部隊長の言葉が嬉しくて、心の底から微笑んだ。

今度はクリンプトン先生が真面目な顔で言った。


「王太子妃殿下が私を脅すので断れませんでした。王太子殿下への反逆罪には問わないでいただけると幸いです。」

「クリンプトン先生!」


今度は父も戦闘部隊長も吹き出した。


「お前はカールを脅したのか。中々やるな。」

「お父様!脅していません!」


ステラは三人を睨み付けたが、三人ともお腹を抱えて笑うばかりでステラのことなど目に入っていなかった。



◇◇◇



ステラは幹部会議の帰りに天文台に寄った。

父の許可は得ていないが、王族として入れるはずだ。

天文台の入口に到着すると、顔見知りの警備部隊の魔術師が訝しそうにステラを見て言った。


「師団長か部隊長の許可は…」

「本日は王族として参った。」

「…失礼しました。どうぞお入り下さい、王太子妃殿下。」


やはり警備部隊の魔術師は入口の結界を解除してくれた。

ステラに続いてヴァレン様付きの近衛騎士も入ってくるが、これを見られたからと言って咎められることはないだろう。


騎士と共に無言で長い階段を上って、観測部屋にたどり着いた。

そのまま、罪人が繋がれている牢へと続く扉を開けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ