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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第四章 帝国編

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215/265

215.秘密※

ブックマーク・リアクション大変励みになります。ありがとうございます。

※軽いR15注意



「王太子殿下のお成り。」


侍従の声がして、ステラは頭を下げながら後ろめたい気持ちになった。


先ほどの弱音も、ヴァレン様がいなかったから話せたのだ。

ヴァレン様にこんなにも大切にしてもらっているのにステラはそれに見合ったお気持ちすら返せないから、自分はやっぱり卑怯者だと思って目を伏せた。



「…何をしていたのだ。」


レオナルドと並んで頭を下げていると、ヴァレン様の冷たい声がした。

昨日からヴァレン様とほとんど話していないこともあって、ステラは怖じ気づきそうな心を押し殺して答えた。


「レオ様に、話を聞いてもらっていました。」

「何の話だ。」

「魔術師団の幹部会議で、国境で起きている危機について聞いたのです。リュクス公爵家の領地と接していて、私が育った領地とも近いのでその話をしていました。」


ステラが顔を伏せたまま答えると、ヴァレン様から威圧感が放たれた。

血管がぞわぞわする感覚があって驚いて顔を上げる。

ヴァレン様は魔術師を捕えてから常に瞳を深紅に染めているから瞳の色ではわからないけど、この感覚は「王家の魔法」を使おうとしているときのものだ。


ステラは咄嗟に心の中でレオナルドを思って祈った。


(この者の尊き心が『王家の魔法』によって暴かれることがありませんように。)



ヴァレン様の見ていないところでステラに触れたことが露見したら、レオナルドと言えど無事ではいられないだろう。

どうかステラの魔法が効いていますように、と祈りながら目を閉じた。


「真実を述べよ。」


ヴァレン様の声がして顔を上げると、ヴァレン様がレオナルドを冷たく睨み付けていた。

レオナルドは動じずにその瞳を見つめ返している。


「はい。」

「そなたは私の妃と話をしていたのか。」

「はい。」

「私の妃の体に触れてはいないか。」

「はい。」


ステラは冷や冷やしながら二人を見つめていたが、二人の表情に変化はなかった。


「私に言えないことはしていないな?」

「はい。」


ヴァレン様から放たれた威圧感が少し収まると、血管のぞわぞわも収まった。



「…ステラ、こちらへ。」

「はい、王太子殿下。」


レオナルドにかけた「巫女の魔法」が効いていたようで心の中でほっと息をつきながら、ちらっとレオナルドを見る。

レオナルドは顔を伏せていて表情はわからなかった。


「本当に何もなかったんだな?」


ヴァレン様の深紅の瞳が鋭くステラを射貫く。

ステラはその瞳をまっすぐ見つめ返して頷いた。


「話を聞いてもらっていただけです。」


ヴァレン様に嘘をつくのは申し訳なかったが、レオナルドがステラに打ち明けてくれた気持ちは絶対に知られてはいけない。

レオナルドへ気持ちを返せなかったせめてもの詫びに、これだけはヴァレン様に隠し通したかった。


「…泣いていたのか。」


ヴァレン様は驚いたような表情を浮かべると、ステラの頬に手を伸ばした。

あれだけ泣いたから酷い顔をしているだろう。


「はい。」

「私以外の男の前で泣かないでくれ。」

「…はい。申し訳ございませんでした。」


あちこちで泣いてしまうステラには無理な気がしたけど、とりあえず頭を下げた。


「先ほどの内容で父上から許可をいただいた。明日使者を出す。今日はもう戻らない。」

「承知しました、王太子殿下。」


ヴァレン様はレオナルドに言いつけると、ステラの手を引いて扉に向かった。

ステラはレオナルドにお礼を言いたかったけど、これ以上ヴァレン様のご機嫌を損ねるのはよくないと思い直して、黙ってそれに従った。




◇◇◇




ステラの私室に到着したと思ったら、そのまま部屋に押し込まれて、手を引かれてベッドに押し倒された。


「レオと何をしていた。」


ステラに覆い被さったヴァレン様から再び威圧感が放たれて、血管をざわめきが襲う。

《真実を見抜く》魔法が使われているのだろうと思った。

ステラは青ざめそうになるのを必死に抑えて、感情を殺して答えた。


「話を聞いてもらっていました。」

「本当にそれだけか。」

「はい。」

「体に触れられてはいないのか。」

「はい。私からもレオ様からも互いの体に触れておりません。」

「…泣いていたステラに触れずにただ話を聞いていたのか。」

「はい。私は恐れ多くも王太子殿下の妃です。殿下のご許可なくこの体に触れることは許しません。

レオ様もそれをよくわかっておいでです。」


ステラは体が震え出しそうな恐怖を必死に抑えて答えた。

なんとなくだけど、ヴァレン様の「王家の魔法」が効いていない気がする。

今まではその魔法をステラを守るために使っていたけど今日はそうではないから、「忠誠の魔法」がステラを守ってくれているのかもしれないと思った。


「…それならいい。怖がらせてすまなかった。」

「い、いえ…。ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。王太子殿下。」


ヴァレン様から放たれていた威圧感が収まって、ステラはやっと呼吸を取り戻した。


「名前を呼べと言っただろう。」

「も、申し訳ございませんでした、ヴァレン様。」


ステラが慌てて頭を下げようとしたら、また体をベッドに押し付けられた。


「ヴァレン様…。」

「本当に何もなかったか、確かめないと気が済まない。」


どうやって確かめるのだろう…と思っていると手早くローブを脱がされて、予想もしていなかった展開にぼぼっと赤面した。


「あ、あの…本当に何もありません。」

「ステラに聞くより体に聞いた方が早い。」

「なっ……」


すっかりいつも通りに戻ったヴァレン様は不敵に微笑むと、首筋を舌でなぞって、そのままステラの胸元に顔を埋めた。


「…レオの匂いがする気がする。」

「い、一緒にいたので移ったのかもしれません。」


そう言って固まったヴァレン様にステラは内心冷や汗をかいたが、慌てて感情を押し殺して答えた。


「…本当に?」

「本当です。」


ステラがブンブンと首を振って頷くとヴァレン様は怪訝な顔をしたが、そのままブラウスの胸元のボタンを外した。


「私の魔法が効いていない気がした。」

「そ、そんなことはないと思います……んっ…」

「私に何か隠していない?」

「ひゃっ……かく…っして、ない……っ…ですっ……」


話しながらその手と口で直接触れられて、ステラは触れ合っている肌から伝わる心臓の鼓動で見抜かれるんじゃないかと思って冷や冷やした。


そのうちに、高鳴る鼓動は胸に抱えた秘密のせいなのかヴァレン様に与えられた刺激のせいなのかわからなくなった。



ヴァレン様は夜まで諦めずにステラに聞き続けたが、ヴァレン様が諦めるよりもステラが気を遣る方が早かったのだろう。

いつの間にか眠りに落ちていて、泣いた疲れもあってステラはこの上なく熟睡した。



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