194.初夜
※R15注意
宴を終えて、またあの幌付きの馬車で王城へと戻ることになった。
煌びやかな夜の王都の街中には昼間以上に民衆が沿道に押し掛けていて、近衛騎士達が剣を抜いて制していた。
宴をしていたようで酒に酔った者も多かったので、野蛮な姿をヴァレン様の目に映していいのだろうかと思いつつ苦笑いで手を振っていると、ヴァレン様に腰を抱き寄せられた。
「ヴァレン様、いかがなさいましたか?」
ステラが見上げると、その目には致死量の色気を纏っていた。
「今日は本当の初夜だね。」
耳元に口を寄せられて囁かれて、民衆の前なのも忘れてステラは瞬時にぼぼっと沸騰した。
婚約した日と結婚した日に初夜を経験していたが、たしかに普通は今日が初夜なのだろう。
すっかり忘れていたが、今更恥ずかしがることもないと言い聞かせて必死に呼吸を落ち着かせていると、ヴァレン様はクスッと笑って再び耳に顔を寄せた。
「皆にもステラの可愛さを教えてあげようか。」
「えっ?!……っ」
そう言ってヴァレン様はステラの顎を掴むと、熱い口付けを落とした。
酔いの回った民衆がわーっと沸き立って歓声が地響きのように馬車に響いたのと同時に、ステラの頭も羞恥で沸騰した。
唇を離したヴァレン様がステラを見てクスクスと笑ったのはわかったが、そこから先どうやって王城まで帰ったのかは全く記憶がなかった。
◇◇◇
記憶もないままいつの間にか王城に到着していて、気がついたらヴァレン様にステラの私室に押し込まれていた。
はっとしてヴァレン様を見上げて言う。
「ヴァ、ヴァレン様、湯浴みを…」
「じゃあ一緒に浴びようか。」
「え?!ふっ……はぁ………」
あれだけ侍女に囲まれていて一緒に湯殿に行くのは不可能だがどういうことだろうと思いながら、また熱い口付けが降ってきたので必死に呼吸をする。
ふと唇が離されると、私室の奥にあるヴァレン様の私室と繋がっている扉の方に手を引かれた。
そのままヴァレン様の私室に連れ込まれると、手を引かれたまま部屋の奥に連れて行かれた。
(い、い、一緒に浴びるってここで一緒に入るってこと?!)
ヴァレン様の私室にはシャワールームがついている。
でもここで一緒に湯を浴びるなんて考えただけで恥ずかしすぎて、ステラはまたぼぼぼっと沸騰した。
「ヴァ、ヴァ、ヴァレン様…わ、私は湯殿に……」
「今日はもうステラを離したくない。」
「せ、清浄魔法を…」
「湯浴みがしたいんでしょう?」
「だ、だ、大丈夫ですっ………」
ちらっと視界に入ったシャワールームには既に二着のバスローブが用意してあることに気付いて、ステラは耳まで茹で蛸になった。
また口付けが降ってきたと思ったら、気付かぬうちに宝石を取り払われて、髪もほどかれていた。
口付けの間にドレスに手を掛けられるとステラは恥ずかしくて身を捩るが、ヴァレン様は手早く編み上げをほどいてドレスとコルセットを下ろした。
太ももに隠していた杖もさっと引き抜かれてあっという間に丸腰にされた。
完璧な軍服姿のヴァレン様の前で下着一枚とガーターベルトという恥ずかしい格好で佇む自分に耐えきれなくなった。
「恥ずかしいです、ヴァレン様……」
体を隠すようにヴァレン様の胸に腕を寄せて見上げると、ヴァレン様は手で口元を抑えて驚いたような顔をした。
「何て可愛いことをするんだ。……本当に我慢できない。」
そこから全てを脱がされるまではあっという間だった。
羞恥に身悶えるステラをぎゅっと抱き締めてから自分の軍服も取り払うと、シャワールームに押し込まれた。
明るい中で見る美しすぎるヴァレン様の体が目の毒で、理性はどこかに飛んでしまった。
「ステラ、愛してる。」
「ヴァ、レン様……愛して、ます……っ……あぁっ……んっ……」
湯の音が響く中で重なった体を引き離すことはできなかった。
いつの間にか清浄魔法で乾かしてもらっていて、気がついたらヴァレン様のベッドに体を押し付けられていた。
ベッドから香る大好きな甘い香りに頭が溶かされたのか、ステラは明け方まで羞恥も理性も失ってヴァレン様を求め続けた。
体を離されたときに、朝焼けに染まるヴァレン様の白銀の髪が目に入った。
その美しい色を見つめながらぼーっとしていたら、いつの間にか深い眠りの世界に落ちていった。
◇◇◇
窓から差し込む日差しが眩しくて、大好きな甘い香りがする胸に顔を埋めた。
体が重くて、もう少し眠っていたい。
「おはよう、ステラ。」
「おはようございます、ヴァレン様…」
麗しい声がするが、目が開かない。
その胸に顔を押し付けると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「まだ足りなかったの?」
…その言葉で、昨日の記憶が急に鮮明に甦ってきて一瞬で耳まで沸騰した。
「ヴァ、ヴァレン様、おはようございます!だ、大丈夫です!!」
慌てて飛び起きようとして、自分が何も纏っていないことに気付いてまた慌ててシーツに潜り込む。
ヴァレン様はまたクスクスと笑うと、ステラの頭を優しく撫でてくれた。
「昨日のステラは可愛すぎたな。」
「も、も、申し訳ございません…」
恥ずかしすぎて、穴があったら入りたいどころか魔法で深穴を掘ってそのまま引きこもりたい。
ヴァレン様を直視できなくてシーツに隠れるが、視界が美しい筋肉の筋で埋め尽くされて目の毒だ。
ちらっとシーツから顔を出すと、致死量の色気を放つヴァレン様がステラを見て愛おしそうに目を細めた。
「こんなに可愛いステラが私の妃だと皆に見せられてよかった。」
今度は昨日皆の前でされたことを思い出してぼぼぼっと沸騰した。
見知らぬ民はまだしも、魔術師と騎士にも見られたし、学院の教師も生徒も皆来ていただろう。
今日からどんな顔をして歩けばいいのかわからなくなって、耳まで茹で蛸になった。
そして、ふと窓の外が目に入って驚愕した。
日が昇りきるどころか、もう傾き始めていた。
「も、も、申し訳ございません…寝過ぎました…ご公務は……」
「今日は何も予定がないから大丈夫だよ。ステラの寝顔を見ていたらあっという間だった。」
「も、申し訳ございません……。」
ヴァレン様の貴重な時間を自分が何時間奪ったのだろうと思うと恐ろしくて青ざめた。
ヴァレン様は笑いながらベッドの横に置いてあったバスローブを手渡してくれた。
「大丈夫だよ。起きられそう?」
「あ、ありがとうございます。起きます。……ひゃっ」
バスローブを羽織り、起き上がろうとしてベッドに腰かけると、腰から崩れ落ちてまたぼふっと横になった。
腰に力が入らなくて愕然とする。
「ステラ、また腰が抜けたの?」
「……っ…」
ヴァレン様が笑いを噛み殺しながら聞くが、今日は絶対ヴァレン様のせいだ。でもそんなことは恥ずかしくて言えない。
ステラは笑いを耐えるヴァレン様を睨み付けた。
「それ、怒ってる?」
全然効果はなかったが、ヴァレン様は肩を震わせながらステラを優しく抱き起こしてくれて、いつの間にかベッドの横に置いてあった簡素なドレスを着付けてくれた。
恥ずかしさが限界を超えてまた腰が抜けそうだったが、これ以上腰を痛め付けないように深く考えるのはやめた。
ステラが動けなかったので、その日は夜までヴァレン様の私室でヴァレン様のノートや本をお借りしてゆっくり話しながら過ごした。
ステラはいつの間にか恥ずかしさを忘れて、幸せで胸がいっぱいになった。




