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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第三章 結婚編

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164.安寧の魔法※



建国祭の当日を迎えた。


今日は王族の中では「王家の巫女」として参加するという認識だが、対外的には王国魔術師として魔法を執り行うことになっているので正装のローブを着る。

ヴァレン様は喜んでローブに袖を通すステラを不満そうに見ていたが、どうせ夜にはドレスを着るので今は自分の機嫌を優先した。



「…まぁお揃いに見えるからいいか。」


ヴァレン様が不満そうに呟いた言葉で、そういえば白地に金の装飾が入った軍服と同じ色合いの王国魔術師のローブで隣に立つとお揃いみたいになってしまうことを思い出して赤面した。


しかも今日は正装なのでステラのローブにもいつもより豪華な金の装飾が入っていて、正式な勲章を身に付けている。

恐れ多くも勲章までお揃いみたいになってしまっていることに気付いて耳まで赤くなった。


ヴァレン様はそんなステラを見てご機嫌を取り戻してくれたのか、クスクスと笑われた。




◇◇◇




去年も驚愕した国王陛下と第一王妃陛下の八頭立ての馬車に続いて、ヴァレン様と二人で四頭立ての馬車に乗り込む。


八頭立ての馬車を見た後ではまだこちらの方が落ち着くと思ったが、これに慣れるのはあまりに不相応すぎる気がして一人で勝手に青ざめた。




王城を出ると、沿道に民衆が集まっていて、馬車の中にいても地響きのような歓声が聞こえてくる。

「王家の巫女様」とか「麗しき王太子妃殿下」とか聞こえた気がするが気のせいだと自分に言い聞かせて、持っていた儀仗を握りしめた。


でも顔色は悪くなっていたのか、ヴァレン様はステラを見て笑いを堪えて肩が震えていた。




民衆の歓声を浴びながら、式典が行われる広場に到着した。

去年と違って国賓を招いているので広場の観客は王国騎士によって締め出されていたが、それでも国王陛下や第一王妃陛下が馬車を降りるとどこかから歓声が聞こえてきたので戦いた。


ヴァレン様が先に降りるとやはり歓声が響いている。

ヴァレン様へ浴びせられる黄色い悲鳴を聞きながら、ステラは自分には関係ないのだとまた必死に言い聞かせて、ヴァレン様が差し出してくれた手をとった。



そして馬車から顔を出した瞬間、地響きのような歓声が紛れもなく自分に向けられた。


「王太子妃殿下ー!」

「王家の巫女様!」

「神の使いだ!!」


とんでもない言葉まで聞こえてきて血の気が引き、腰が抜けそうになる。

王国魔術師としての矜持がステラの顔色を変えさせずに済んでいたが、腰は本当に抜けそうだったのでヴァレン様ががっしり掴んでくれて助かった。


助けて欲しくてヴァレン様を見上げるとクスクスと笑われたが、それにもまた民衆の歓声が起きた。

これ以上目立ちたくないので、ステラは感情を押し殺して、微笑みを無理矢理顔に張り付けながらヴァレン様に従うことにした。




広場には去年と同じように初代レクス王と王妃の像の前に祭壇が組まれているが、今年は去年の倍の広さがあり、既に賓客達は席に着いていた。

賓客の近衛魔術師達が魔力で牽制し合っているのか、祭壇は質量の高い魔力で覆われている。


ステラも自分の魔力の密度を高めて、ヴァレン様を包み込むようにしながら祭壇に上った。




国王陛下のお言葉で式典が始まり、去年は眺めていただけの祈りの時間がやってきた。

初代レクス王と王妃の像に魔力を込めながら祈るのだ。


国王陛下、第一王妃陛下と順に祈りを捧げて、ヴァレン様もその瞳を深紅に染めて像を見つめた後、見惚れてしまうほど美しい姿勢で祈られた。



そして、ステラの番がやってきた。

自分が王族として祈るのだと考えてしまうと恐れ多くて腰が抜けそうになるので感情を押し殺して立ち上がり、初代レクス王と初代王妃の像を見上げる。


初代王妃陛下は初代の「王家の巫女」だということを思い出して不思議な気持ちになりながらも、像を見つめて手を組んだ。


(この王国の安泰と民の安寧が末永く続きますよう、どうかお見守りください。

かつての王家の巫女様、どうか私を正しくお導きください。)


ステラが祈りを込めながら魔力を込めると、彫像に残っていたヴァレン様の魔力と反応したのか、急に像が金色に眩く輝いた。


内心は自分が光らせてしまったことに驚愕して戦き、腰が抜けそうになるが、王族として揺らぐわけにはいかない。


何食わぬ顔を装って祭壇に戻ると、ヴァレン様と目が合った。

ヴァレン様も表情には出ていなかったが僅かに目を見開いていたので驚かれているのだとわかって、同じ気持ちだったことに安心した。




続けて、「安寧の魔法」を披露する。

ステラは王国魔術師の代表として腑抜けるな、と自分を叱咤して立ち上がった。



ヴァレン様が祭壇の中央に向かわれて、ステラはヴァレン様の前で跪く。


去年はこの時に敵襲があったのでステラが儀仗を握りしめて警戒を強めると、ふと自分とヴァレン様を囲うように防御結界が張られた。

強力で隙のない結界を見て、国王陛下の後ろで控えている父が守ってくれているのだとわかった。



ステラは安心して、微笑みながらヴァレン様を見つめた。

身に纏わせていた魔力を一気に解放すると、広場からいくつも延びる道に沿って王都を埋め尽くすような勢いで密度の高い魔力が広がっていく。

祭壇でひしめき合っていた他国の近衛魔術師達の魔力も押し退けられて、ステラの魔力一色で染まる。


ヴァレン様もステラを見下ろしながら優しく微笑むと、その瞳がさっと深紅に染まった。


「《汝が力を我に捧げよ。国の安寧のために我、祈らん》」


ヴァレン様が詠唱すると、ヴァレン様とステラの足元に大きな金色の魔方陣が輝いた。

ヴァレン様の「王家の魔法」の魔力に反応してステラの体中の血管がざわめく。


ステラは足元の魔方陣を儀仗でとん、と叩いた。

金色に輝いていた魔方陣が赤く染まった。


そして、解放していた魔力を一気に引き寄せて儀仗に込めた。

儀仗を通じてステラの魔力がヴァレン様が描いた魔方陣に流れ込み、二つの魔力が合わさる。

金色の光の柱がヴァレン様とステラを包み込み、天まで届きそうなほど高く打ち上がった。



魔力の光に包まれると、体中の血管が喜びと興奮に沸き立ち、瞳が熱くなる感覚になった。

ヴァレン様は一瞬驚いたようにステラを見つめたが、すぐに表情を戻して手をふわっと上に掲げた。


魔力が金色の波となって王都に降り注ぐと、どこまでも広がっていった。



一息おいて、地鳴りのような歓声と拍手が鳴り響いた。

恥ずかしいが、王国魔術師がもじもじするわけにはいかないので笑みを浮かべて応えた。



魔法が成功したことにほっとして息をついていると、ヴァレン様が微笑みながらステラを立ち上がらせてくれた。


そのまま手を取られて一緒に賓客達に一礼した後、元の席に戻った。




◇◇◇





式典が終わり、また民衆の歓声を浴びながら馬車に乗り込むと、扉が閉まった途端にヴァレン様がステラを抱き寄せた。



車窓から見えたのか、外で黄色い悲鳴が上がるのを聞いてステラは慌てて囁く。


「ヴァレン様、民が見ております。」

「見せつければいいよ。国のためにもなる。」


何が国のためなのかはわからないが、そう言われたら何も言い返せない。

抱き締められたまま固まっていると、ヴァレン様がそっと体を離して、ステラの目をじっと見て言った。


「あの魔法を使ったとき、君の瞳が私の色に、紅く染まっていた。」


ステラは驚いて目を見開く。

瞳が熱くなったのはわかったが、まさかヴァレン様の「王家の瞳」と同じ深紅に染まっていただなんて思いもしなかった。


「き、気がつきませんでした…。」

「…美しかった。私の魔力が君を染めたのかと思うと、私の色に染まる君がたまらなく愛おしかった。」


惜し気もなく甘い言葉をかけるヴァレン様に、民衆に見られているのも忘れてぼぼっと沸騰する。



でもその金色の瞳に致死量の色気が滲んでいるのを見て慌てふためいた。


「ヴァレン様、今日は忙しいです。」

「一回は出来るよ。」


何を、と聞かなくてもわかってしまって耳まで赤くなるのがわかった。



王城に戻るとヴァレン様はステラを抱え込んだまま真っ先に私室に向かわれたので、侍従や侍女達が慌ててついてきた。


本当に恥ずかしかったが、こうなってしまったヴァレン様を止めることはできない。

一回だけの約束で、そのままベッドに連れ込まれて蕩けさせられた。



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