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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第三章 結婚編

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160.王室会議



十月に入って建国祭が近づいたある日、ステラは久しぶりにヴァレン様と並んで王城を歩いていた。


王族と王国騎士団長と王国魔術師団長が集まる、王室会議に呼ばれたのだ。

そのような恐れ多い場はご遠慮したかったが、ヴァレン様のご機嫌が久しぶりに麗しかったのでステラは何も言わずに従っていた。


「今日はやけに素直だね。」

「ヴァ、ヴァレン様のお隣にいるのが嬉しいので…。」


ヴァレン様がステラの腰を抱きながら聞くが、まさかヴァレン様のご機嫌取りのためなんて不敬すぎて言えなくて誤魔化した。



すると、ヴァレン様がふと立ち止まった。

そして抵抗する間もなく突然激しく口付けされた。


「ヴァレン様?どうされまし…んっ……ちょっ……はぁ……っ」


口元から零れる水音に、後ろで控えているたくさんの侍従や侍女や騎士達が顔を伏せるのがわかった。


ステラは耳まで真っ赤になりながら抵抗するが、胸を押し返してもびくともしない。


「本当に可愛い、私のステラ。」

「………ヴァレン様…皆の前で恥ずかしいです…」


やっと唇を離してくれたヴァレン様を睨み付けるが、耳まで沸騰した顔では何の効果もないのは明白だった。


その後、ますますご機嫌になったヴァレン様に再び腰を抱かれて、恐れ多い会議に出席するために王城を進んだ。




◇◇◇




王室会議はいつかの昼食会と同じ部屋で開かれるようだった。


今日も王国魔術師のローブを着ているので、置物になりたくて必死に壁に張り付いていた二年前の自分を思い出した。

あの頃の自分が今の自分の姿を知ったらあまりの恐れ多さに卒倒するだろうなと思った。



部屋に到着したが、まだ誰も来ていなかったのでほっと胸を撫で下ろす。

あの時と違ってヴァレン様の横で白銀の髪で普通に座れている自分がなんだか不思議な感じがする。


「ステラが王室に慣れてくれてよかった。」


ヴァレン様もこの部屋に来てあの昼食会を思い出したのか、いたずらっぽくを微笑んで言った。


「な、慣れてはおりません…多分…」


慣れるわけはない…と思いつつ、慣れてきてしまっている自分に気付いて恐ろしくなって青ざめると、ヴァレン様にクスクスと笑われた。




鎧の音がして、ヴァレン様が立ち上がって頭を下げたのでステラもそれに倣う。


国王陛下と第一王妃陛下が、父と王国騎士団長と一緒に入室された。


「面を上げよ。」


第一王妃陛下も頭を下げたので恐れ多くなりつつも、国王陛下の声がしたので顔を上げる。


国王陛下と第一王妃陛下が上座に着席された後、父と王国騎士団長もステラの向かいに腰かけた。


改めて見ると、この恐れ多い空間に自分がいることが場違いな気がして今すぐ退室したい衝動に駆られたが、必死に感情を押し殺した。




「本日は建国祭の件で召集した。

今年は国賓として他国の賓客も招くゆえ、皆で認識を共有しておきたい。」


国王陛下の声が響き、ステラは警備体制について問われたら答えられるようにしておこうと気を引き締める。



「まず儀礼魔法について、本来の伝承通り、神が定めた王位継承者である王太子と王家の巫女が行うべきだと考えるが、魔法伯はどうだ。」


急に自分に関係しそうな話題が出てきて崩れ落ちそうになったのをなんとか耐える。



父は思案するような表情で慎重に言った。


「王家の巫女の魔力を他国に示すべきか、隠すべきかによるかと存じます。

諜報部隊の報告では他国に詳細な情報は伝わっていないようですが、いずれ知られることです。

王太子殿下の地位の安定のためにもその力を示すべきだと考えます。」


ステラはこの場で逆らう勇気などないので黙って父の話を聞くが、内心は真っ青になっていた。


「王太子はどう考える。」

「国王陛下、私はこの者の魔力は他国に示すべきではないと考えます。

他国の王族や魔術師に目をつけられることになっては身の危険が伴います。」


国王陛下の問いに、ヴァレン様がはきはきと答える。

ヴァレン様が恐れているのはステラが第一王子殿下に目をつけられて奪われかけたのと同じように、他国に奪われることだということはわかった。


ステラ自身はなるべく目立ちたくないので、他国の高貴な方々の前で儀礼魔法を使うのは避けたかったが、そんな軽率な理由などとても口に出せない。

ただ黙って話を聞き続けた。



国王陛下は顎に手を当てて僅かに沈黙した後に言った。


「今年の儀礼魔法は王太子と王家の巫女が行うこととする。」

「…承知いたしました、国王陛下。」


ヴァレン様が一瞬間をおいて頷き、頭を下げたのでステラも従う。

そのまま顔が上がらないのではないかと思うくらい目眩がした。



その後は建国祭の警備体制の確認をされたが、父と王国騎士団長が答えたのでステラはただ黙って聞いているだけだった。

そもそも建国祭で儀礼魔法をすることへの緊張と恐れ多さでまともな声など出そうになかったのでちょうどよかった。



「最後に晩餐会だが、王太子と王太子妃は帝国の対応に集中せよ。他国はこちらで対応するゆえ気にするでない。」

「承知しました。有り難きお心遣い痛み入ります、国王陛下。」


ヴァレン様がさっと頭を下げたのでステラもまた慌てて頭を下げるが、またとんでもない任務を与えられた気がして今度こそ青ざめる。


(わ、私が他国の高貴なお方と話すの…?この国の貴族でさえ恐れ多いのにそんなの無理よ…恐れ多さで倒れるわ…)


助けて欲しくて頭を下げながら第一王妃陛下をちらっと見ると、ヴァレン様とそっくりの表情でいたずらっぽく微笑まれた。


知らなかったのが自分だけなことに気付いて項垂れそうになるのを堪える。

抵抗など出来るわけないので、王族のマナーを思い出して、たおやかに顔を上げた。




◇◇◇




会議が終わり、抜けそうな腰をどうにか立たせながらヴァレン様の執務室に向かう。


侍従が執務室の扉を開き、ヴァレン様が入るとステラも潜り込むように入ってそのまま扉を閉めた。

その瞬間に腰が抜け、扉の前で座り込んだ。


「っ、ステラ。また腰が抜けたの?」


ヴァレン様が笑いながら屈んでステラの顔を覗き込んだ。


「ヴァ、ヴァレン様…尊い膝が地面についてしまいます…私のことはお気になさらないで下さい…」


「尊い膝」でヴァレン様が笑いを堪えるように下を向き、執務室で一人仕事をしていたレオナルドが吹き出した。

ヴァレン様が肩を震わせながら膝をついてステラを抱え上げるが、その白い軍服が目に入ってステラは申し訳なさと恐れ多さで余計に体の力が抜けてしまう。



ヴァレン様に抱えられたまま優しくカウチに下ろされて、ステラは恥ずかしすぎて耳まで真っ赤になった。


「も、申し訳ございません……」


不甲斐なさに打ちひしがれていると、レオナルドが笑いながら言った。


「晩餐会のこと、聞いたんだ。」

「レオ様も知っていたのね…!」


知っていたのなら先に教えて欲しかった。

レオナルドを睨み付けるが、麗しく微笑まれただけで何の意味もなかった。


「儀礼魔法は私と行うことになったよ。」

「さようでございますか。…っ、ステラ、頑張って。」


ヴァレン様は不機嫌そうに言うが、レオナルドはわかっていたように笑ったのでどうすればいいかわからなくて顔を伏せることしかできなかった。



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