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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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113/139

113.愛しい人※

※R15注意



魔力を感じる部屋の前に立ち、息を整える。


扉には魔法で鍵がかけられていた。

中に王国魔術師がいたら気絶させようと思って、念のため儀仗を構えながら扉をノックして、鍵の魔法を《解除》した。



「何者だ。」



大好きな胸に響く声がして、堪えきれなくて涙が溢れ落ちた。



「…っ、ステラが、参りました。」



ステラが震える声で答えると、勢いよく扉が開かれた。





少し伸びた白銀の髪を耳にかけた、濃い金色の瞳の、麗しくて尊い御方。


大好きで愛おしくてずっと会いたかった、ヴァレン様がそこにいた。

少しやつれているけど、その美しさは最後に見たときと何一つ変わっていなかった。




驚愕の表情を浮かべて固まるヴァレン様に、ステラは泣きながら微笑んでその名前を呼んだ。



「ヴァレン様。」



ステラの瞳を信じられないというような表情で見つめたヴァレン様は、次の瞬間、ステラを力強く引き寄せて抱き締めた。


ステラの大好きな甘い香りで胸がいっぱいになって、幸せで涙が止まらない。


ずっとずっと会いたかった、愛しい人の腕に自分が収まっている。

ステラもその背中に腕を回して、ぎゅっと抱き締めた。





しばらくして、ヴァレン様がはっとしたように体を離してステラを部屋に押し込むと、厳しい表情でステラに聞いた。


「どうやって来たんだ。」

「父が助けてくれました。第一王子殿下にはわからないようにしてきました。ご安心ください。」


ステラは涙を堪えてヴァレン様の瞳を見つめながら話す。


濃い金色の瞳が安心したように潤むと、またステラを強く抱き締めて、蕩けるような口づけをたくさん浴びさせてくれる。



「ステラ、会いたかった。」

「私も、お会いしたかったです。ヴァレン様。」

「それから、誕生日おめでとう。」

「あ、ありがとうございます。きょ、恐悦至極にございます。」


自分でもすっかり忘れていたので突然祝ってもらって耳まで赤くなってしまう。


でも、溶けそうな熱のこもった濃い金色の瞳に自分が映っている幸せに、ステラはまた涙が止まらなくなった。




ヴァレン様が幽閉されていた部屋は昔魔術師の控え室として使われていた部屋で、シャワールームがついていて、本棚とベッドがあり、鉄格子はついているが窓もあった。


監獄ではないにしても、とても王族が滞在するような部屋ではなくて胸が張り裂けそうになる。



「ステラ、そんな顔をしないでくれ。

君のおかげで無事でいられた。君が私を守ってくれたんだ。」


ヴァレン様の言葉にステラは目を丸くする。


「普通の尋問は受けていないんだけど、兄上から『王家の魔法』による尋問を受けた。」


第一王子殿下からも聞いていたが、実際に行われていたと知ったステラはまた胸が痛くなって頬を涙が伝う。

ステラの涙をヴァレン様が優しく拭ってくれる。


「酷いものだった。何もなければきっと私は私でいられなかった。

でも、ステラが指輪に込めてくれた魔法が私を守ってくれたんだ。

苦しんだり従うふりをしていただけで、兄上の『王家の魔法』が私を傷つけることはなかった。」


ステラは息を飲んで信じられない気持ちで話を聞く。

あの魔法にそんなに強力な効果があるなんて知らなかった。


でも、自分がヴァレン様をお守りできたことが嬉しくてまた涙が溢れる。



「それに、時々ステラの魔力を感じた。温かくて、ステラが私を想ってくれていることが伝わってきたよ。


一度、あの魔力のうねりが体を満たして、ステラがすぐ隣にいてくれるかのように感じたこともあった。


だからこの部屋に閉じ込められていても辛くなかったんだ。

ありがとう、ステラ。」


「ヴァレン様をお守りできて、よかったです。」

「そんなに泣かないで。」


ステラの涙が止まらないのを見てヴァレン様はクスクスと笑う。

そんなヴァレン様が懐かしくて愛おしくて、また涙が溢れてくる。



「…美しい夕焼けだった。それに治癒魔法もありがとう。」


ヴァレン様の手が優しくステラの頭を撫でる。

ずっとこの手に触れてほしかった。

ステラに触れていいのは、この手だけなのだ。


「ヴァレン様にお見せしたかったんです。伝わって嬉しいです。」


本当に嬉しくて、泣きながら微笑むとヴァレン様も微笑み返してくれた。



「ステラがくれた時計も支えになったよ。この部屋には時計がないから。

それに、君が見ている空が映っていると思うと愛おしかった。」

「…お役に立ててよかったです。」


たくさん褒めてもらうとなんだか急に恥ずかしくなって顔が赤くなってしまう。

ヴァレン様がまた幸せそうに笑って、口付けをしてくれる。




「ステラ、愛してる。」

「私も、愛しています。ヴァレン様。」


手を引かれてベッドに優しく押し倒されて、甘い口付けをたくさん落とされる。

その手でもっと触れてほしくて身を捩ると、ヴァレン様が体を離して熱のこもった瞳で聞いた。


「帰らなくていいの?」

「…雨が止むか夜が明けるまでは大丈夫です。」


自分で言って恥ずかしくなってぼぼぼっと沸騰する。


「…っ、かわいい。止めてあげられないけど大丈夫?」


致死量の色気を放つヴァレン様に、首をブンブンと振って頷くことしかできない。



「…ステラ、愛してる。」


別れたときに耳元でかすかに囁かれた言葉を、今はステラの目を見てはっきりと囁かれる。


その濃い金色の瞳に見つめられて、胸に響く声で名前を呼ばれると、これまでの辛い時間も、浴びせられた心ない言葉もどうでもよくなった。


体の奥までヴァレン様を感じて、会えない時間を埋めるように求め合った。





◇◇◇




どうかこの時間が終わらないでほしいと願うが、窓を打ち付ける雨が段々弱まって赤紫に染まり始めた空に、別れのときが近づいているのがわかった。



狭いベッドでヴァレン様の腕に抱かれながら、ステラはその濃い金色の瞳をまっすぐ見つめて伝える。


「ヴァレン様、私が必ずお助けします。どうかもうしばらく、ご辛抱ください。」

「…ステラ。私は大丈夫だから無理はしないでくれ。」


ヴァレン様が気遣わしげにステラの頬を撫でる。


「私、強くなったので大丈夫です。

今度、戦闘部隊の副部隊長になるんですよ。」


ステラがヴァレン様の腕の中で胸を張って微笑むと、ヴァレン様は一瞬驚いたような顔をしてすぐにクスっと笑った。


「それは頼もしいな。ステラを怒らせないように気を引き締めるよ。」

「…ヴァレン様に怒ることなんてあり得ません。」


ステラが怒った姿を散々知られているのでまた恥ずかしくなって縮こまる。




窓の外が明るくなり始めたのでベッドを出た。


侍女がいないので、恐れ多くもヴァレン様に手伝ってもらいながらドレスを身に纏った。

ヴァレン様もご自身で身支度を整えているのを見て、王族とは思えない扱いを実感してまた泣きそうになったが、絶対にすぐに助け出すと決めて涙を堪える。



ステラはヴァレン様の前に跪き、臣下の礼をとって頭を下げた。


「ヴァレン様、どうかご無事でいて下さい。

この命を懸けてお守りさせてください。」


ヴァレン様はステラの手を取って立たせると、ぎゅっと抱き締めて言った。


「君も無事でいてくれ。ありがとう、ステラ。」


目が合ってまた口付けをする。名残惜しくて見上げると、ヴァレン様も切なそうに顔を歪めて、観測部屋まで手を引いて導いてくれた。



ステラが雨避けのために雑に補修をした結界を見てヴァレン様が笑った。


「そこから入ってきたのか。泥棒みたいだな。」

「す、すみません。」


入っていたときは気が急いていたのだが、あまりに適当すぎたと恥ずかしくなって赤面する。


儀仗を握りしめて、張っていた結界を解除するとヴァレン様を振り返った。




ヴァレン様は最後にもう一度ステラを抱き締めて口付けをすると、きっぱりと言った。


「無理はするな。生きていてくれ。」

「はい、ヴァレン様。ヴァレン様もどうかご無事で。」



また頭を下げて、天文台の屋根の上に結界を張った。


「《転移せよ》」


父の結界を今度は素早くきっちりと補修して、またヴァレン様に目礼をする。

ヴァレン様は笑顔でステラを見送ってくれた。




王城の自分の部屋に向かって《転移》して、夢のような時間は終わりを迎えた。



部屋に帰ると誰かが自分のベッドで寝ていてぎょっとしたが、そういえば幻覚魔法で自分を作り出したのだと思い出して解除した。



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