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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫
第二章 婚約者編

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109/135

109.不思議な魔法★

★軽度の無理矢理表現があります。



第一王子殿下に手を繋がれたまま王城の廊下を早足で歩く。

城内ですれ違う人々はぎょっとした顔をして慌てて頭を下げている。




第一王子殿下に逆らったらヴァレン様のお命が危ういのでされるがままでいると、執務室に押し込まれた。



そのままヴァレン様の執務室にもあるような応接用のカウチに体を押し付けられる。

ヴァレン様の婚約者であるステラに手を出すことはないだろうとは思いつつ、その薄い金色の瞳を見上げて厳しい声で告げる。


「殿下、なりません。私は国王陛下にお認めいただいた、第二王子殿下の婚約者です。」


第一王子殿下はその瞳を歪めて呟く。


「君が欲しいんだ。」

「私の心は主君の元にございます。おやめください。」


ローブをほどいて直接体を這い始めた手に鳥肌が立つがヴァレン様を人質にとられているので抵抗はできない。


ステラはされるがままでいながらも、第一王子殿下の瞳を睨み付ける。

その瞳の端は紅く染まっていた。


「…ヴァレンがいなくなればいいのか。」


第一王子殿下の言葉に恐怖で体が硬直するが、敵の前だと奮い立たせる。



「私の命は主君と共にあります。」



声が震えないように、静かに伝える。



ステラの言葉に第一王子殿下は息をつくと、やっと体を離した。

その瞳は深紅に染まっていた。


「今日はもうよい。」

「承知しました。ご不快な念を抱かせてしまい申し訳ございませんでした。失礼いたします。」


ステラも第一王子殿下から一刻も早く離れたかったので、ローブを整えて腰に提げていた杖と剣をその場に置くとすぐに執務室を出て、自分の私室に戻った。





◇◇◇





私室の扉を閉めて一人になると、気が抜けて急に恐怖が襲ってきて体が震え始める。


この体をヴァレン様以外には触れられたくなかった。

天文台に近づいて、そして第一王妃陛下の優しさに触れておかしくなっていた涙腺がまた崩壊する。


ヴァレン様に会いたい。

ヴァレン様に守って欲しかった。

そしてヴァレン様をお守りしたい。


正面の窓から見える天文台に震えながら祈りを捧げていると、段々震えは落ち着いてきた。



あの甘い香りが恋しくなって、ベッドの奥にある扉を開く。

ヴァレン様の残り香はだいぶ薄くなっていたけど、微かに感じられてほっと息をついた。



いつもの本棚の前に座り、久しぶりにヴァレン様の学院時代のノートに手を伸ばす。

夢中でその美しい文字を辿っては、他のノートにも手を伸ばす。



数冊読み終わってふと本棚を見ると、棚の奥にも本が置かれていることに気づいた。

壁に沿って置かれていたから奥行きがあることに気付かなかった。



手前の教科書やノートをよけると、棚の奥からはたくさんの絵本が出てきた。


少し年季が入って色褪せた本を見て、今はステラが使っている部屋からいつの間にか片付けられてしまったと寂しそうに話していた、ヴァレン様の子供の頃のお気に入りだろうと思った。


ステラが読んだ記憶もある、この国の子供達ならよく知っているような絵本が並ぶ。



そのうちの一冊に目が止まり、手に取った。

「ともだちの ふしぎな まほう」という題名の絵本だ。

この絵本をステラは知らない。


表紙を見ると、城を背景に白い髪の女の子が同じく白い髪の男の子と手を繋いで笑顔で立っている絵が描かれていて目を瞠る。

表紙に描かれた子供達に勝手に自分とヴァレン様を重ねてしまってドキドキしながらページをめくった。





~~~



ある国に、白い髪の王子がいました。

王子には、つよくていじわるなおにいさまがいます。

おにいさまは王子のえほんもおもちゃも、みんな自分のものにしてしまいます。


でも王子はさみしくありません。

おなじ白い髪を持つ女の子のともだちがいるからです。

ともだちはいつも王子のそばにいて、おにいさまのいじわるから王子を守ってくれます。



あるとき、王子はおにいさまと一緒に王様によばれました。


「兄王子とおまえの、どちらが王様にふさわしいか、きめるときがきた。」


王子は王様になるつもりはありませんでした。

つよいおにいさまの方が、王様にふさわしいからです。


でも、王子にやさしくしてくれる大人はみんな、王子に王様になってほしいといいました。


王子はおにいさまとけんかはしたくありません。

でも勇気をだしておにいさまのところに行って、


「ぼくも王様になりたい」


といいました。



おにいさまは怒って、王子にやさしくしてくれる大人もみんな自分のものにしてしまいました。


ひとりぼっちになって泣いていると、ともだちが王子の手をにぎっていいました。


「わたしがあなたをまもってあげる。」


ともだちは王子と手をつないで王様のところに行きました。


王様の前でひざまずくと、


「つぎの王様にふさわしいのは、この王子様です。」


といって、おいのりをしました。

すると、ふしぎな金色の光がお城をつつみました。



光がおさまると、おにいさまのものになってしまった大人たちが、王子のところにきていいました。


「わたしたちはまちがっていました。王様にふさわしいのはあなたです。」


王様はともだちにききました。


「きみはなにをしたんだい?」


ともだちはいいました。


「まほうをつかいました。みんながなかよしになるまほうです。」


そしておにいさまもいいました。


「ぼくがまちがっていた。王様にふさわしいのはきみだよ。」



ともだちのふしぎなまほうは、本当にみんなをなかよしにしてしまったのです。


王子がともだちにお礼をいうと、ともだちはにっこりわらいました。


王子はやがて王様になって、国中のみんなとなかよしになりました。



~~~




ステラは読み終わって呆然とした。


これは、きっと「王家の巫女」の話だ。

父は徹底的に王家からステラを遠ざけてきたから、ステラはこの絵本を読んだことがなかったのだ。


ヴァレン様が最初に「王家の巫女」の話をしたとき、民の中でもおとぎ話のように語られていると話していたが、この絵本を読んで納得した。



同時に、もしかしたらこれでヴァレン様を救えるかもしれないと思った。

「王家の巫女」であることを証明する魔法を使えれば、ヴァレン様が王位継承者だと認めてもらえるかもしれない。


絵本の中では祈るだけだったけど、ステラがヴァレン様に祈りを捧げても何も状況は変わっていないから他にも何か条件があるのだろう。


本棚の中に何かヒントがないか探してみたけど、他の棚の奥にあるのは王家の伝承には関係なさそうな普通の本だけだった。



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