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第31話:境界線の捕食者

 第3マッチ、運命のハッチ開放。

 公式配信の同時視聴者数は30万人を超え、画面には暫定1位 Trinity Raid の降下軌道を追う23チームの殺意が可視化されていた。

「……さあ、注目の第3マッチ! 80ポイントで首位を独走する TR、王手まであと20ポイント! 佐藤さん、全チームが彼女たちを初動で潰そうと手ぐすね引いていますよ!」

「……ええ。中央のミリタリーベース周辺には、すでに4チームが降下準備を終えている。……どこへ降りても、そこは地獄の包囲網になるでしょう」

 実況と解説の予想を、レイの静かな独白が塗り替えた。

『……。……。一番安全な場所なんて、どこにもない。……。……なら、一番「私たちらしい」場所へ帰ろう』

 ハッチから躍り出た三つの影。

 その放物線が向かったのは、中央の激戦区ではない。北西の果て。彼女たちに与えられた、本来のランドマーク――「孤島」だった。

「……えっ!? 孤島!? 田中さん、彼女たち、自分たちの固定落下地点へ真っ直ぐに向かいましたよ!!」

「……バカな! あれほど奇襲で盤面を壊してきた彼女たちが、ここに来て定石(セオリー)に戻った!? 逃げたのか、それとも……っ!!」

 深読みしすぎた強豪たちが、逆に孤島への追撃を躊躇する。

 その隙に、三人は見慣れた孤島の砂浜へと着地した。

『……着地成功。……。……。……コーチに言われた「最短」のルートで、この島の物資を根こそぎ回収するわよ』

 ほむらの冷徹な指示。

 だが、今回の彼女たちの目的は、単なる物資漁りではなかった。

 第1パルスが確定した瞬間、安地は南東へと大きく外れた。孤島からは最も遠い、絶望的な距離。

『……ハァ、ハァ……。安地が凄く遠いよぉ……! 本土の検問を通らなきゃ、パルスに飲まれちゃう……っ!』

 ねねの悲鳴に近い声。だが、レイは本土側で自分たちを待ち伏せしようと欲を出して近づいてきた敵の背中を、スコープ越しに静かに見つめていた。

「……大丈夫、ねねちゃん。……。……。……安地(アンチ)に飲まれるのは、私たちじゃない。……。……パルスから逃げ出すあいつらを、私たちが後ろから追いかけるんだから」

『……。……。ええ。……「逃げる獲物」ほど、狙いやすい標的(ターゲット)はないわ。……。……パルスの境界線を、私たちの「処刑場」に変えましょう』

 ほむらの不敵な一言。

 11位の「怪物」たちは、安地へ向かう最短ルートを捨て、あえて死の領域(パルス)と共に進軍する、最悪の追走劇を開始した。

 第2パルスの収縮。青い光の壁が、孤島と本土の境界線を飲み込んでいく。

 本土側の検問所に陣取っていた中堅チーム FORCE は、自分たちが仕掛けた罠に獲物がかからないことに焦りを募らせていた。

「……クソッ、TRはどこだ! 安地に飲まれて自害したのか!?」

「もう限界だ、パルスのダメージが痛すぎる! 全員、車を出せ! 安地へ走るぞ!!」

 背後に敵がいるはずがない。そのプロとしての「常識」が、彼らの致命的な死角となった。

 彼らが安地を目指して加速した、その瞬間。

 ――ガガガガガッ!!

 背後の闇から、容赦ないフルオートの弾丸が、加速し始めたばかりの車両のタイヤを正確に撃ち抜いた。

「……なっ!? 後ろ!? 馬鹿な、パルスの中から撃ってきているのか!?」

 パニックに陥る FORCE。ミラーに映ったのは、青い光を背負い、回復アイテムを叩きながら自分たちを執拗に追いかけてくる、Trinity Raid の車両だった。

『……捉えたわ。……時速 60キロ。……。……。……レイちゃん、ねねちゃん。……安地へ逃がさないで。……この「死の境界線」で、すべて終わらせるわよ』

 ほむらの冷徹な観測。

「……。……。了解。……。……。……バイバイ、先に行ってて」

 レイは、王者から奪ったライフルの銃口を、窓から身を乗り出して固定した。

 ――ッパァァァン!! ッパァァァン!!

 一発、二発。

 パルスに追われ、回復のために足を止められない敵の頭部を、走行中の車内から精密に射抜いていく。

 [ TR_Rei knocked down FORCE_Leader ]

 [ TR_Nene killed FORCE_Support ]

 画面右上に、黄金に輝く特別なアイコンが点灯した。

 [ Trinity Raid REACHED 100 POINTS ]

 [ MATCH POINT STATUS : ACTIVATED (FROM NEXT MATCH) ]

「来たぁぁぁぁーーー!! Trinity Raid、ついに合計100ポイント到達!! 王手! マッチポイント点灯です!!」

 スタジオの実況、田中が身を乗り出して絶叫する。

「……佐藤さん、これ! 彼女たちは安地外のダメージを自ら受けながら、逃げる敵を追い回してポイントをむしり取りましたよ!!」

「……絶句です。……。……プロが最も嫌う『背後からの理不尽』を、彼女たちは意図的に作り出した。……。……これで次戦、第4マッチから、彼女たちがチャンピオンを獲った瞬間に優勝が確定します!!」

 配信の同接は35万人を突破。チャット欄は「安地外追走とかエグすぎ」「死神の追いかけっこだ」という戦慄で埋め尽くされた。

 各自室。レイは、熱を持ったマウスから指を離さず、安地の境界線を見据えた。

『……。……。マッチポイント、点灯よ。……。……レイちゃん、ねねちゃん。……。……。……。……。……準備はいい? ……。……次は、本物の『正解』を刻みに行くわよ』

 三人はボロボロになった車両を捨て、安地の中心へと続く闇へと消えた。

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― 新着の感想 ―
これ、マッチ3で20pキルポだけで稼いで100p確定させた上でマッチ3ドン勝しても優勝確定にはならんって事?
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