第十六話・室内の平均年齢ががくっと急上昇
「はい!みなさんおそろいで!お待ちかね!この世の神秘を解き明かそうぜ!古代の文明とはなにか、今に伝わる伝承の真偽。実証、検証、この世のベールに風穴を!」
「いつにもましてこのやわやわ貴族の男うぜーんですけど」
イルシアの副官、カレドラセルのことを陰険おかっぱメガネなどと揶揄したせいでとってもいたたまれない気持ちに襲われたメルはモードを躁状態にシフトして心の平安をなんとか保った。
「まーまずはアレですよ、おれの若気の至り。提出即発禁処分になって、さっき入った禁書庫に堂々の殿堂入りを果たしていたわが卒論。題して、タリス・ヒエルギス王国の宗教と魔術の関係~副題、選民と棄民の真実。読み返したら当時付き合ってた女の子のこと思い出してほろりときちゃいました」
「突っ込みたいところは山ほどあるが、ひとまず落ち着け。普通のテンションで話せ」
イルシアのマジギレ寸前の鋭い一瞥にメルのテンションも多少落ち着く。
「うん、おれの成績の優秀さを見込んで近づいてきた女の子が卒論発禁処分聞いた瞬間笑顔でさよなら言ったときは泣けたわさすがに」
「とりあえず女の話題から離れろ。だがそれは泣いていい」
「ありがと、それじゃあまあ…てきとーに流すんで興味あるとこだけ聞いてください。まずこの論文の基本テーマにもなってるタリス・ヒエルギス王国の国教について、これは知らない人はいないよね。説明省くね」
「あ、そこんとこ詳しく」
挙手して説明を求める王位第一継承者。
「お前実は王位第一継承者(仮)とかだろ?正体現せパチモン」
「いやいや、だいたいこんなもんだって。おれ以外の継承権あるやつも似たりよったりよ?」
「おれら、もっと早めにクーデター起こしてた方がよかったんじゃね?」
これまでロヴと話をしていてなんとなく予想はついていたが、思いのほか王族のいい加減さがハンパないことを再確認させられて、改めてメルはこの国の行く末を案じる。
「ところでえっとー。すんませんいま聞くことじゃないと思うけどさ、なんでこんなギャラリーすくなっ!なの?」
会話するに足る人物は多いに越したことはない。情報源も多いほどいい。メルは王族の重鎮ずらっ…な感じを期待していただけにちょっとテンションが下がった。
「三人も爺様連れてきたんだぜ?」
「もっと爺様保護しとかないと折られるだろ!言ったろ!」
「ああうん、考えたんだけどね、あとは折られてもいいや…的な?」
「お前ちょっと脳筋将軍とこいって折られてこい」
「まあまあ、そういわず。とりあえず爺様たち、おのおの自己紹介よろ。ここでしっかりつかんどかないとモブ扱いもしくは三人セットでひとつの人格的認識になっちゃうからね…」
「えっと…お爺様方、この若いの結構ひどいこと言ってますけどあまり無理して痛いキャラ付けとかしなくていいですからね。あなた方の知識と判断を仰ぎたくてお招きしましたので…。一セットの人格扱いになってもお食事の量はちゃんと三人分ご用意しますのでね」
一応は年長者への畏敬の念をこめて、そしてある程度は様子見で、メルは如才なく長老連に呼びかける。
「さようで…。まあこの年になって一発芸ひねり出すのも骨が折れますでな、お申し出ありがたく存じる。じゃがまあ…お若い方々にとっては年寄りの顔などみな同様に見えましょう。若の無礼もいい加減さもいまに始まったことでなし、われら年よりは気が長いのが唯一の取り得ですじゃ。そちらさまのお気の向いたときにでも話題を振ってくれればよろしかろうと存じますぞ」
当たりは穏やかだがそのうらにしたたかな用心深さを秘めて長老たちはじっとメルをみつめる。メルの表面的な軽さ、道化た仕草にもけして警戒を解かない。メルにとっては多少やりづらい相手ではある。
「おれがいうのもなんですが、そんなに警戒しなくとも特に問題ないと思いますんでできればも少しお気を楽にどうぞ」
「ふむ、見抜かれておるのう。なあユーグエイダ殿?」
「われらも老いたの、警戒心を見抜かれるとは」
「さにあらずさにあらず、トルサグ殿、ユーグ翁。こちらのメルトーヤ殿が慧眼であるのよ。なかなかに見る目をお持ちの御仁ではないか。さすがは賊軍の首魁であるな」
「これこれサリダ殿。軽々に挑発するものではない。われらが命運を握るはあちらであるよ」
「いやなに、見せ掛けの恭順など見破ってしまわれるだろうと思ったまでのこと。さればありのまま述べるもよかろうと思うてのことよ。所詮われらは棄民の末裔ではないか。穢土の子等のそしりを真に受けてなんとする」
「はいさっそく重要ワードきましたね」
やはり長老連の知識の中に自分の必要とする情報があるらしいと、メルは手ごたえのようなものを感じた。
「そこんとこ詳しく行きましょうか。あ、あと賊軍の首魁とかもう持ち上げすぎですから。かっこよすぎですから。おれは存外吹けば飛ぶような小貴族の子倅ですし、側近の部下にすら人格否定される有様ですから。ホントこき下ろされたり軽視されたりは慣れてるんですけどなんか重要視されるとなにしていいのかわからなくなるんでどうかテイクイットイージー」
いささか辟易してメルは長老連をなだめる。
「力づくで軍動かして問答無用であなた方を拘束したことはホント悪かったなって思ってます。でもこうでもしないとあなた方王族は本気にならないのでしょう?」
「へ?王族の本気?それって食えるの?」
「もうロヴには期待してないからダイジョブ!」
それを聞いたロヴは満足げにうなづく。
「や、あんまそっちが楽観視しすぎなんじゃね?って不安になったからちょっと確認したかっただけ、ノープロブレムよー。王族なんてどう踏ん張っても屁すら出ないくらいぎりっぎりでかつかつなんだから」
なにげないロヴの言葉にサリダがぎょっとした表情で鋭い視線の矢を放つ。
「若…」
ロヴはちょこっと肩をすくめただけで明後日の方を向いて口笛を吹く。
「や、これまでロヴがぽろっと重要機密吐くのってむしろ平常運転だって理解してますんで、そのあたりはもうそういうものと割り切って話もとに戻しちゃって平気?」
サリダがほかの二人の老人と顔を見合わせる。そして苦い表情でメルに話を促す。本意ではないことは見事なまでに三人の老人たちの顔にでかでかと書いてある。まあ、それを気にするメルでもないわけだが。
「王族という存在の真実、あなた方がどこまで気づいてるのかもう真実は失われてしまったのかいまはまだ判断できません。でもね、現実は現実。あなた方が気づこうが気づかまいが、実情としてこの国はどこからどうみても駆け足で滅亡に突き進んでます。あなた方がかじ取りするやりっぱなしの政策を見るとほとんど捨て鉢でしかない。遅かれ早かれもうあなた方はすでに立ち行かなくなっているのではないですか?国体を保つことを二の次三の次にしてしまわざるを得ないほどに…。すでに先人の知識は失われています。残っている遺跡もなにも語りません。けれどこの国とあなたがたを襲った同様の不幸について知ることができれば、その真実はあなた方とこの国を救う希望になるんじゃないかと思っているんです…。どうでしょう、間違ってると、思われますか?」
「これはこれは…」
ユーグ翁が苦笑した。
「下等生物が大言壮語しましたなあ」
サリダ翁はもうはばかることなく毒を吐く。
「よりにもよって我らを救う、などとは。一度は選ばれし民として約束の地を希求し、しかる後に希望を絶たれ棄民を名乗る我らにいかようなる救いを与えると?」
「はい、そこなんです」
メルは長老連の謎めいた問いかけをむしろ待っていたかのように悠然と言葉を継いだ。
「ボー・エルント=ワズィ・ユ・エルント・ノマーズィ」
メルが口にした古語に反応してサリダ翁が憤然と言い返す。
「選民も棄民も等しきかな。それがどうしたと?我らが希望のよりどころであり絶望の源である先人の残したる言の葉。それがなんだというのだ」
「いえ、確認しておきたかっただけです。その言葉におもいをはせる前にひとつの仮説を聞いてもらえますか。おれが考察し、愚かにも公の場で公表してしまったがため、そもそも初めからなかったものとされたこの国の国教とそれにまつわる疑問、そして仮定を。…ええ、あくまで仮定の話として聞いてください、きっとその方があなた方の心臓をとめずに済みそうです。よりにもよって、王族の祖は人ではない…という説ですから。いまだ進化の系譜のはじめごろをたどるわれわれの祖先と原初の世界にあなた方は突如現れた。多くの歴史書が語る様々な矛盾と解釈の祖語。それはあなた方の祖がこの世界に属さぬイレギュラーだったのだと仮定することでほぼ解決できるのです。あなた方の先人は今に残る遺跡を築き、魔術を行使してこの国の先住民を使役民とし、絶対的な王権を築き上げました。ですが彼らにとってはこの世界での王権などどうでもよかったのです。この国の名であるタリス・ヒエルギス。これは仮の宿りという意味ですね。彼らはこの世界に興味はなかったのです。たとえるならここは一時的な避難場所であり、彼らの本来の世界は別にあったのです。それがどこなのかは知る由もありませんが、この世界の進化の系譜とは異なるまったくの異世界からあなた方は来たと、そう考えるのははたして荒唐無稽なおとぎ話ですかね。考えてもみてくださいよ、未開の地にいきなり高度な文明社会が生まれるなんて不自然な話じゃないですか。あなた方は故あってこの世界に降り立ったトラベラーなんです。どうしてそれが定住してしまったのかはわかりませんが、当初は元の世界にに戻る目算があったんでしょう。それは長いときを経て次第に文明として退化していき、本来の正しい意味を次第に失っていったのです」
「ご高説、謹んで拝聴するがね。確かに君の語る仮説は物語として実に興味深いが、なにゆえ失われてしまった真実を君が知りえるだろうか。それが真実だと確認する手立てはなかろうて?」
メルのよどみない説明をさえぎって、サリダ翁は憤然と反駁する。
「そうですね…血は混じりすぎましたし、伝承は時の流れにさらされすぎました。風化した技術の継承は形骸化して信仰へと変質し、そしてその信仰すら変容してしまいました。ところであなた方は、魔術を行使することがこの世界の生命エネルギー的なものを消費するという事実にお気づきでしょうか。きわめて限定的な使い方をすることで目に見える形でエネルギーの移行を確認することは可能ですが、魔術の行使がこの国の自然に負担を与えているという事実は数値が証明可能です。おりよくおれの副官が資料を持ってきましたのでどうぞご覧ください」
メルはしばらく言葉を切って、資料が示す事実をみなが認識するのを待つ。
「わかりますか?いま、季節は秋。気温も湿度も次第に低くなっていくはずですよね」
傍らでロヴが首をかしげる。
「ここ数日は気温も湿度も軒並み上昇っぽいけど?」
「数日前から確実に減っているものは魔術を使う王族の存在だ。昨日からはほぼすべての王族が魔術を無効化されて塔の中でゾンビになってるな」
「魔術が使われなくなったら気温も湿度もあがったってこと?」
「若!」
サリダ翁が短く叱責する。
「誘導されておるぞ!」
「誘導なんてしてませんって。ただ事実をお見せしただけです」
「気象が多少季節の流れに逆らうこともままあろうて。この雨で多少気象が乱れただけであろう」
「あえて反論はしませんよ。その可能性も皆無ではないでしょうしね。ただ、この短い期間で観測しただけでこの数値です。大地が失われたエネルギーを取り戻してあなた方がこの地に降り立つ以前の状態に戻るにはしばらく時が必要でしょう。ですが、この国の緯度を考えれば気候は本来隣国と同程度のはず。内陸ですから多少寒暖の差が激しいくらいの違いはあるでしょうが、本国よりやや南方に位置するカロッタの気候は亜熱帯。どう考えても国境ひとつ越えただけで冷害の多発する寒冷な気候帯になるなんて不自然ですよ」
「お若いの、お主はまるでこの世の理をすべて知るかのような言い草であるのう。じゃが気候帯は単に緯度のみで決まるものではないぞ。主の知らぬ理由が存在しておるとは考えぬのか」
「なんらかの地形の理由から寒冷な気候になった可能性がないとはいいません。ですが、あと一年…いいえ、半年でおそらくこの国の気候は本来の温帯域にもどるはず。そう予測する理由はもちろんほかにもさまざまな変化がいまこの国に訪れていることを知るからです。三日で発芽し、十夜で実をつけるトオカ豆という種類の植物があります。この豆が昨日一日で発芽し、十日を経ていない株も実をつけたという報告があります。それからこの時期の煙霞木の狂い咲き、突然のスギ花粉の飛散、湧水量の増加、地底湖の水位の上昇。高峰の万年雪もわずかに溶けつつあるそうです。おそらくほかにも調査すればいろいろな変化を確認することができるでしょう」
ひとつひとつ物証を列挙するメルにサリダ翁が不快気に顔をしかめる。
「いまだ予断の段階であるよ。すべて偶然であればなんとする」
「サリダ翁。確かにいまはまだ断定できる段階ではありません。でも一月後にはいやでも結果は出るでしょうね。その結果をみても同じ態度を貫くようならあなたの意見はただの感情論になりますね。けれど一月後を待てるほどわれわれは悠長にしていられない状況でもあります。ですので最後にちょっとしたショーをお見せしようかと思います」
メルが鈴を鳴らして合図すると、控えていたロキスタを筆頭に武装したメルの手勢が室内に整然と入ってきてた。この場にいる四人の王族のひとりひとりにそれぞれ三人の武装兵がつき、両脇と背後を固める。
次に、花の季節にはまだ早い雪花木の鉢植えがいくつも運び込まれた。
最後にロキスタが魔術無効石をメルに渡す。
「魔術はただの便利ツールというだけではありません。魔術による炎や光はどちらかというとある種の副産物ともいえます。主体はエネルギーの変換のほうにあるのだとしたら…」
メルは言葉を切って左手で石を握り締め、右手を緑の鉢植えにかざす。両腕に魔力の通る回路を作って、石に蓄積された魔力を雪花木に注ぐ。
最初は緩やかな変化だった。次第に雪花木の固いつぼみが大きく膨らんで、その雪のように真っ白な花弁が目に見える速さで次々と花開いた。
「大地のエネルギーを魔術の行使で消費するならば、逆にこのように、魔力を生命エネルギーに変換することも可能です」
メルは雪花木をテーブルの中央にすいと押しやり、それを見つめるものの反応をみる。サリダはこれまでの強硬路線を崩すつもりはなさそうだが、眼前で展開する事象の真意は汲んでいるとみていい。だがユーグは脳内で葛藤が起きているであろう百面相、トルサグはほんのりと物悲しげな渋面。
「ただのおれの妄想だったらどれほどよかったことでしょう」
メルは沈痛な面持ちでつぶやいた。
「王族ならぬ身で魔術を発現してしまった…そして自らが得た力の本質、その原理に枷を付けない状態で近づいてしまった。きっと、王族であればそのような行為は禁忌とされるのでしょう、いえ、もっと簡単に…ただ自分たちは選ばれた血を引いているのだと、ただそう理解していさえすればよかった」
メルにしては珍しくその表情は韜晦、自虐を経たうえでたどりつく諦念、それは不思議と穏やかな笑みの顔を形づくる。
「魔術は…災厄ですよ」
穏やかな笑みをたたえたまま、メルの拳は固く、白くなるまできつく握りしめられ、声音はあくまでも音楽的に…しかし告げる言葉は断罪の…。
「い…い、否…」
サリダの呆然とした力ないつぶやきが、凍り付いた場に弱弱しく響いた。
「否、否っ…否!」
次第に熱を帯びるその声色。だがしかし、否定を意味するその言葉はなぜかしら歓喜にも満ちていた。
サリダのしなびた頬に一筋の涙が流れた。
「そ、そは…福音なり」
湧き上がる歓喜をひたすら押し殺してサリダが絞り出す言葉の意味は、メルをはじめとする面々に困惑のおももちを呈させる。
「よ、漸う、漸う。うつほ船に御饌は満ちたり」
信じられないとでもいうようなおももちでサリダをみつめていたユーグは、そのサリダのまなざしに一筋の光明を見たような気がした。
「サリダ翁…ま、まことか?た、たばかりでは…?」
そのたどたどしい口調がユーグ自身の迷いを表している。
「まことであればよ、わが短き生の中で、よもやまことの僥倖があろうか…。かような、かような希望を目の当たりに、するとは、思えなんだ」
トルサグもまた、その見開かれた眼からあふれる涙をおさえはしない。
だがそれらの言葉はメルの穏やかな笑みを一変させた。
「希望だ?福音だ?…痴れ事もたいがいにするがいい!」
メルがその人生の中でこれほどの瞋恚を表にしたことはなかった。
しかし老人たちはメルの言葉の意味が分からない。
「やかましい小僧じゃのう…まあ、下等な使役民ごときに理解など及ぶまいて。小僧、貴様は劣悪にて矮小なる分際にも関わらず、選ばれし我らに福音を告げたもうという信じられないほどの栄誉を与えられたのじゃよ?栄誉に打ち震えるならばまだしも、その栄誉すら理解できんのか。度し難い愚物じゃ」
「ほっほっほ、おのれの役割も理解できぬ下賤のものになにを言ったところで始まらぬよ」
「さもありなんよ…滑稽じゃ、まこと滑稽よの」
「ボー・エルント=ワズィ・ユ・エルント・ノマーズィ」
「そもそもこの小僧めが言いおったわ」
「長き時を経て、ようやく訪れた豊穣じゃ。うつほ船は幾度となく生まれはしたが、そが中に御饌を満たすことなく世を去りおって」
「さよう、幾度も希望を抱き幾度も絶望した我らは、やがて信ずることを忌避するようになったのであったな」
「いまこそ我ら棄民、おのが素性誇るときぞ来たれり」
このような状況下でありながら、思いもかけぬ報をもたらされた老人たちはそれこそ狂喜乱舞した。すでにメルたちの存在を忘れたようにおおっぴらにふるまうその態度は常の王族そのもの。傲慢と自尊の権化であった。
メルのなかでなにかがふつりと途切れる。
ふわりと笑みを浮かべながら剣の柄に手をやるメルの挙動に、イルシアはいち早くきづくことができた。
一触即発、問答無用、対話不可能。そんなキレたメルの脳天に、イルシアは無雑作に肘を見舞った。
「ちょ、いったーっ!なに?なにすんのさ、シア!ことと次第によってはシアでも許さないよっ!」
「一発では足りないか…ポンコツめ」
再びメルの脳天を恐ろしい衝撃が襲う。
「大変申し訳ございませんでしたっ!」
「戻ってきたか…」
「いや、物理的にこの世から去りかけた気も…」
頭を抱えてうめくメルを見たロキスタとカルドラセルも緊張を解いた。先ほどまでこの場を支配していた圧倒的な威圧感に気おされて身動きが取れなかった警備兵らもほっと安堵のため息を漏らす。
「カッレ、この爺さんどもと若い方、別室に監禁しろ。おれはメルと話すことがある」
イルシアのいつになく真剣な表情に、カレドラセルは軽く目礼して速やかに与えられた任務につく。




