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第2話「Eclipse Drive, GO! 変身ベルトで大変身!」 Aパート②

「ヨシノさん、お疲れね」


 まさか変身ポーズの練習を夜通し延々していたとは夢にも思うまい。

週明けの学校。ヨシノは近くに座る三鳥さん。

そんな彼女の気遣いの言葉にも、弱々しく応じるのみ。

軽く微笑む彼女に、ギリギリ微笑み返すだけの余裕。

限界ギリギリの中ふり絞った力を見せる。


「新フォームが凄かったわね」


 何でそんなピンポイントな話題が出るんだよ!

とヨシノは級友の意外な趣味に対して、

叫ぶ代わりに飛び上がるがすかさず訂正。

親戚の男の子が来てたんだけど、

その変身に興奮してずっとごっこに付き合ってたから

疲れてるんだよね、と。もっとも、ゲッシーは親戚ではないし、

「ずっと」の期間も、これまで、この先を考えると、

昨日の日曜日では到底収まらない。

そんなヨシノの泥臭い事情を、変身ヒーロー番組を無邪気に語る、

三鳥さんも知る由もないだろうが、とも彼女は思う。

ヒロインは自分が変身することをみだりに語らない。


「その子、面白いわね。会いたくなっちゃった」


 会わせられねえよ!そんな心の声と共に、

ヨシノはゲッシーに対する愚痴を親戚の男の子に置き換え、

みだりに語ってしまった事を内心後悔する。


 そんなヨシノの苦労を知る由もなく、

オペラ座の舞台が如き壇上に座る仮面の男。

エレキギターと共に、激しいメタルサウンドを響かせる。

その六弦を乗りこなす手捌きに反して、音源は彼の背後のCDラジカセ。

この男が行っているのは、単なるジェスチャーかパントマイムの類だ。


「ヒャハハハハ!ルミナキャスト!これは怒りの狂奏だ!!」


 彼はルミナタキオン――ヨシノに敗北した男。幻影紳士・ムジカントム。

その様子を眺めつつ、威嚇のような眼光と歯ぎしりで彼を見つめるのは、

歌劇令嬢・エゴシック。似合わない真似はやめなさいよ、

と見てはいけないものを見たかのように刺々しく、その演奏を否定する。

演奏に水を差されたムジカントムは一旦、一時停止ボタンを押す。


「そう言うんじゃねえよエゴシック」


 このガルニエに似合わないBGMに、燕尾服に似合わない粗野な口調。

一体どうしたの?といった質問すらせず、エゴシックはひたすら威圧するばかり。

仮面からは表情は分からないが、ムジカントムも納得したかのように、

右手を前に出し、彼女を宥める。


「ルミナタキオン対策は十分だ。安心しろ」


 先日、ルミナタキオンに示したものと少し違う。

独特のペイントが施された仮面をどこからともなく出し、

それを見せつけながら、ムジカントムは自信満々に語る。

そういう問題ではない、と変わらず不機嫌なエゴシックではあるものの、

それを尻目にムジカントムは去っていった。しょうがないから片付けてやるか、

といった風にエゴシックは楽器をしまい始める。



「起きろ草之根」

「おわっ!」


 近くの席の野球部男子に頬を軽くはたかれ、ヨシノは慌てて目を覚ます。

居眠りをしていたのか。そんな自分に驚きつつも、直前まで見ていた、

夢の内容を思い出す。夢と言っても、その内容は、昨日のヨシノの記憶の反芻。

深夜にまで及んだ地獄の練習と、ゲッシーに聞いた番組撮影のルール。


「今まで通りの振る舞いで問題ないよ、ヨシノ」


 これは夢の中で再生された、昨晩のゲッシーが実際に語った言葉。

いくらルミナキャストの主人公になったからと言って、

学校生活や家での暮らしを変える必要もないと言う。

まず、自分の姿は常に撮影されてはいない。すなわち、

極端にプライバシーに関わる部分はまず触れられない。

もっとも、ゲッシーは「条件付きで」と釘を刺したが。


「映像はある程度編集されるから大丈夫」


 滅茶苦茶な発言もリアルタイムで変換させ、最適なセリフになると言う。

ただ、あくまで「ある程度」。極端に調子が外れた事を言えば、

番組そのものに関わるノイズとして牙を向く。

これがゲッシーから示された、ルミナキャストの2つのルール。


「結局ヘンなことしたら晒されるってことじゃん…」


 両方とも、気の抜けない状況に置かれた事に示しているに違いない。

ヨシノはゲンナリしつつも、先生に回答を求められた歴史の用語の説明を、

先程言ったぞ、という彼の説明など知らぬが故に答えられず大目玉、

思わぬ追撃に対して、更にゲンナリ。

ゲッシー、恨むぞ!ヨシノは内心怒りに燃える。


「ところで、ルミナステッキはどうなるの?」

「ああ、別売りだから大丈夫」


 そして、これは同じく先程再生された、変身アイテムの因果関係の話である。

この日の授業を終え、帰路につきながら会話を思い出すヨシノ。

本来、ルミナタキオンへの変身と武装・ルミナステッキは、

ルミナスコープに備わった機能。どちらかが欠ける事はない。

という設定であるが、実際のおもちゃとしては別売りであること。

それ故に、今回の変身アイテム・エクリプスベルトでも、

ルミナステッキを何もない空間から、

オンオフで出し入れすることは可能といった理屈だ。

商売っ気に超技術が伴うとこうなるのか…と、

ヨシノはその時は考えたが、寝る暇を考えても良かったかも、とも後悔する。


「ぐえっ!」


 ひとまず宿題をどう片付けるか、

と思いつつ背伸びをしようとしたところ、空に掲げた右拳に弾力が。

何すんのさ!ヨシノ!と飛来物が怒り出す。

そう、件(くだん)のゲッシーだ。ごめんと謝りつつも、

何を以て頭上から飛んできたのか、ヨシノは問いかける。


「ルミナストーンを見つけたんだ!」

「何それ」

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