第9話「盛岡旅行!再会と出会い」 Bパート③
「あんなモノリス、見たことないけど……あれがヨシノの戦う怪物だね」
「ペルソナクスって悪者集団の作る怪物だよ。私たちはワルターって呼んでる」
モノリス。ワルターの胸部に埋め込まれた水晶を指すのだろう。
間髪いれず。あかりの纏ったドレス状の機械から放たれるのは破壊光線。
複数方向のレーザーが曲線軌道を描き、そのまま四肢を攻撃する。
タキオンたるヨシノとしても、友達に攻撃を任せきりには出来ないと、
胸部めがけてルミナライトアップを放ち、ワンテンポ遅れて素手状態からのタキオンシフト。
そのまま眼前の水晶を思い切り殴り抜けるが、ワルターはサッカーのトラップのように、
その水晶でそのままタキオンを受け止め、更には弾き返す。
「ヨシノ!大丈夫!?」
飛行機で言うジェット噴射のように、スカートから激しい光を放ちながら、
空中でタキオンを受け止めるスターゲイザー・あかり。ありがとうと一言礼を言い、
バレーボールにおけるトスの要領で構えたあかりの掌を足場とし、
ワルターの顔面目掛けて力強く踏み込み、再接近。その速度のまま、
槍投げのような鋭い蹴りを叩き込めばと思えば、ワルターはたまらず顔を抑える。
「効いてる!?もしかして…」
気付いた以上は実行しないとウソになる。そう主張するかの如く、
あかりのメカ部分が発光し、光線の行列を射出する。
そのまま一点に束ねられた光が、モノリス部分に激突。
顔のダメージに悶えるのに精一杯だったワルターの体が、
浴びせられたエネルギーに耐えきれず。そのまま錐揉み回転で思い切り吹き飛ぶ。
「ヨシノ!多分、私たちは普段戦ってる相手にしかダメージを与えられない!」
「じゃあ、私がワルターの部分を攻撃して」
「そう!私がモノリスを攻撃する!!」
呼吸を通り越して、雄叫びのような阿吽の応答。
タキオンシフトによる高速移動を交えつつ、不時着する直前のワルターを先回り。
のしかかる瞬間のその影の体躯に目掛けて放つは、
攻防一体のドーム状の領域・タキオンフィールド。
そのままワルターも耐えきれずに掻き消えるかと思ったが、モノリスがそれをさせない。
心臓部を起点に碧色の光を展開し、タキオンフィールドを押し返す。
唐突に放たれた未知の力。予想外の展開に困惑しつつも、
今度はそれに割り込むように、スターゲイザーがスカートの一部を飛ばす。
「アルタイル──デネブ──ベガ」
モノリスの破壊的な力場の周囲に展開されたのは、星を冠した名に違わず、
三角形のエネルギー体。展開された光は徐々にモノリスの光に接近し、
「おしくらまんじゅう」のようにねじ込まれたメカとエネルギーは、
そのままモノリスのバリアを掻き消し、ワルターはそのまま丸裸。
停滞していたタキオンフィールドが、そのまま拡がり、突き抜ける。
「気をつけてヨシノ!寄生対象から抜け出したモノリスは、第二形態に変化する!」
「え、まだ何かあるの!?」
ワルターの肉体が霧散し、水晶だけになったその姿。我が体を鉱物だと思ったか?
ルミナタキオンにそう訴えかけるように、モノリスは粘土のように激しく、
絶えずフォルムをグニャグニャと歪ませ、人間大の体格、人型のフォルムに変化する。
「この素体。中々悪くない……」
タキオンフィールドをそのまま身に纏い、ゼロ距離状態となったタキオン。
強化された身体能力で、着地するモノリスに殴りかかろうとするも、
スウェーで身を逸らし、そのまま後方転回でミドルキックを回避し、後退する。
黙って友達にだけ戦わせるあかりではない。蹴りを放ったルミナタキオンと、
空間の隙間に潜り込み、そのまま突き抜ける光線の群体。
あかりの援護射撃がモノリスをザクザクと刺し続けるものの、その突き抜けるような足取りが、
ノーダメージを主張しながら突き進んでいく。
「あかりに手を出すな!ワルター…モノリス?どっちでもいい!!」
まだ自分との戦いは終わっていない。追い風のように、
背後からタキオンフィールドを帯びた頭突きを浴びせ、
モノリスを転倒させたタキオンが頭を抑える。一方のモノリスも、
背部に受けた鈍痛を処理しきれないのか、中々立ちあがろうとしない。
先程、タキオンの打撃を受け止めた時とは正反対である。
「今のモノリスは性質が混ざり合ってるんだ!」
相棒のスターゲイザー。初対面のルミナタキオン。星の子・ハニエルは、
それぞれに発破をかける。おい、どこ行ったんだゲッシー。
だが、そんなタキオンの心配は杞憂に終わる。四足歩行で駆け抜ける宇宙ハムスターが、
その口に咥えているのは摩訶不思議な輝きを放つトレーディングカード。
先日、ヨシノの地元で抑え損ねた賢者の石。カード型ルミナストーンである。
「隣のレンタル屋さんで見つけてきたよ!タキオン!!」
ルミナボックスに挿入された光り輝くカードが、奇跡の力を帯びて、
二人の少女に力を与える。アイコンタクトで十分。
友人であるヨシノがもたらした、原理も理屈も知り得ない活力を以て、
スターゲイザーは合図もなく最大出力の攻撃を放つ。
「全てを突き抜けるは、光を超えた通り道!貫け!タキオンレーン!!」
「ミルキーウェイ・オーバードライブ!!」
赤く細い、大地を踏み締めるように突き進む光の線。白く太い、海のような光の円柱。
二つの光線が混ざり合い、モノリスを貫こうとするが、相手もタダでは負けはしない。
両者の合体攻撃を受けてもなお、両手で受け止め、
押し返そうとするだけの余裕はある。その一瞬。
「最初に水を差したのはアンタよ。モノリス」
タキオンとスターゲイザーは聞き取れなかった、ひとりの少女の呟き。
一方のモノリスは確かに、その一言をありもしない耳で拾う。
声の主が浴びせた紫ががった光。横目で見た先にいたのは、歌劇令嬢・エゴシック。
彼女の崩れた表情に乗るのは、間違いなく嫌悪の感情。
「今だ!貫けええ!!」
エゴシックの放った光の比ではない、束ねられた光の質量。
決して片手間で受け止められる威力ではない。モノリスはそのまま、
異界の力の詰まった宇宙の海に溶けていく。
「ええ!?ウソだろゲッシー!現地人に事情を伝えないまま撮影させようとしたって!」
「う……うちの方の上の意向だから……」
私の環境がブラックなだけだったの!?地獄はむしろ戦いが終わった後である。
気まずそうに旧友に弁解をするゲッシーに、困惑するハニエル。
その傍らにいるのは、苦笑いをする他ない囲碁仲間のふたり。
「ヨシノも大変だね……その、私以上に」
「スターゲイザー:イーハトーブ」を撮影するにあたり、
地球と宇宙との通貨レートの兼ね合いで、金銭報酬の替わりに知的体験、
すなわち地球外生命との交流や宇宙のエンタメコンテンツを提供してもらうなど、
撮影に協力するあかりとハニエルの間で交わされた契約。
「ウチはウチで、パパの社内システム改善したりしてもらったけど……」
秘密を共有出来る仲間が増えて、ルミナストーンも回収し、おみやげももちろん購入。
損はしていないはずなのだが、ヨシノとしては全くやりきれない。
まあいいか。ハニエルを抱きしめるヨシノと、ゲッシーを抱きしめるあかり。
双方、普段触れ合えない不思議な生き物の可愛らしさに、触覚の舌鼓を打つ。
「ちょっと歩くけど、この辺、パンケーキおいしいお店あるんだよね。寄ってく?」
「せっかくだし」
帰りのバスまで、まだまだ時間はある。せっかくの盛岡。
秘密の枷が無くなった、二人の足取りは昨日よりもさらに軽い。
我ラ裏生徒会ガ
コノ学校ヲ手ニ入レル
世界ヲモ掴ミ得ル力
「えくすてんど」ヲ用イテ
挑ムハ世界
駆動セシ巨人ハ
護国神像・大和
次回、魔法素粒子ルミナキャスト、第10話。
「我ラ裏生徒会ナリ 其之壱 護国神像・大和」




