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第9話「盛岡旅行!再会と出会い」 Bパート①

「ペル……ソナクス?」

「モノリス……?」


 ショッピングモールに似つかわしくない、奇怪な水晶。

異常事態を目の当たりにし、それぞれ別の名を言い放つ、

かつての囲碁部、ヨシノとあかり。

二人同時。アッと一声あげつつ、訂正するは、

先程の自分の発言。


「ペ…ペルソナクスっていうのは最近美術部が描いてる漫画の敵の組織です!」

「モモモモノリスは最近やってるスマホゲームの雑魚キャラでございます!」


 二人同士、息の合った自己弁護。尋常ではない声の震えと裏返り。

転校前の学校の美術部員が描いた漫画のことなど、

さすがに興味を示さないだろうとヨシノは高を括る。

万が一にもあかりが興味を示した時は、賢界《のりか》にそれとなく執筆してもらおうと、

考えたその矢先。


「あかり!?」


 ヨシノの座席の対面の、片付いたテーブル。

既にその場にあかりはいなかった。状況を察し、

今だと飛び出すゲッシー。そして、動揺からか、

全く気付いてないかのように振る舞うヨシノに対して、

第一に考えるべき事項を突きつける。


「ヨシノ!君の友達のアカリ、絶対なんか隠してるぞ!」


 番組制作の都合上、敵(ペルソナクス)の情報をある程度有しているゲッシー。

基本的な敵は、ワルターとそれを使役する幹部であり、

あのような無機質な水晶ではないと確認する。

しかし、それ以上に重要なこと。


「普通はそんな変なものを見て、咄嗟に名前なんか出るわけがないよ」

「あっ……」


 そのやり取りの直後。先程の囲碁部のふたりのように、

アッと声を出しつつ、ゲッシーはハンドバッグに再び潜り込む。

体育の時間にて、サッカーゲームで一通り走り回ったかのよう。

激しく呼吸を乱しつつもヨシノのもとへ帰ってきたあかりは、

突然いなくなってごめんと、頭を下げる。



 その日の夜。昼間に入った温泉とは別の、宿泊可能な温泉施設にヨシノとあかりはいた。

せっかく久しぶりに会えたんだからと、夜まで遊べるような場所を選んだ形となる。


「あんな辛いものよく食べられたね、ヨシノ」


 トイレの個室中で、こっそりと会話を行うヨシノとゲッシー。

飲食コーナーでヨシノが注文した冷麺。隙を見計らいつつ、

お裾分けされたゲッシーにとっては、どうにも辛すぎたようである。

ゲッシーにはしんどかったか。コーヒーの苦味を拒絶したその味覚。

同様に、辛味に関しても敏感なんだねと振り返るヨシノ。


「ところで、何でアカリに何も聞かなかったんだい?」


 自分達とは別の秘密を隠している可能性。ヨシノはこの日、

最後までその事について質問を行わなかった。

理由はふたつ。まず第一に、本当にハマっているゲームか何か、或いは友人関係。

あかりが盛岡で暮らす中で、なりふり構わず奔走する必要があったり、

思わずキャラクターの名前を口にするほど、熱狂できる何かがあるかもしれないこと。

そしてもう一つ。


「秘密を抱える大変さって、私が一番知ってるからさ」


 それだけ聞いて、ゲッシーも話題を切り上げる。ヨシノならば。

あかりの秘密が何であろうと、草之根ヨシノとして。或いはルミナタキオンとして。

それぞれ乗り越えられるんじゃないかと感じつつ。そして、

ヨシノが確認するのは明日の予定。


「万代、ってところにまず寄ることになったんだ」


 万代。平たく言えば、クレーンゲームで遊べる店舗である。

ヨシノの住む都道府県にも存在するものの、遠出をする羽目になるため、

普段は中々行けない。せっかく名前の知っているお店があるのならばと、

レンタルショップの近くのロケーションに白羽の矢が立ったことになる。


「ヨシノ、何そんなにやけてんのさ」


 締まりのない口角。単なる後付けの動機に留まらない、

ヨシノの興味関心を示しているかのようである。ハンドバッグの中のしゃくしゃくも、

物言わずともヨシノのぬいぐるみフリークに対するゲッシーの呆れに、

同意しつつも微笑んでいるかのような顔つき。


「そうだ。後でちょっと僕、こっそり屋上に行くよ」


 そうそう表に出歩けない以上、カバンの中で燻る他ないゲッシーとしても、

さすがに自由が欲しい。一通りの会話を終え、静かに飛び出した先で、

見下ろすはまばらな車通り。見上げるは空と月。夜風にあたり、黄昏る宇宙ハムスター。


「地球って注目されてるしなー……別の部署でもロケ地に選ぶのか」


 一応は自身の局が独占的に地球の撮影を行っているはずだと再確認しつつ、

今後、ルミナキャスト以外を巻き込んだ騒動が起こり得る事を考える。

タブレットを弄りながらも、上層部が開示しない未知の事件やサプライズに、

怯えつつ、身構えつつの武者震い。チラリと開いたSNSの画面を覗きつつ、

思い切りタブレットをぶん投げる。幸いにも、魔法素粒子界仕込──

という設定の特製タブレットは、多少の衝撃などものともしないが。


「ウソだろ…あいつココにいるの!?」


 青ざめた毛並に荒ぶる呼吸。ゲッシーはSNSにて、ヨシノが見慣れた顔と、

ヨシノは決して知らない、ゲッシーが見慣れた顔の2ショットに震え上がる。

この地球にいる、もう一人の第二種特定惑星改竄処理監督資格者。

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