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第8話「赤点のムジカントム」 Bパート③

 成人してから興味関心を持つケースなどはともかく、

オモチャとは、その多くが保護者が子供に買い与えるものである。

そして、アルマゲストは知育玩具。大人がいかに活用するか、

と言うのは父母や教育者などにとっても重要事項となる。

すなわち、ルミナタキオンが今回行う視聴者へのレクチャーとは、勉強の「させ方」。


「こんなオモチャ、地球じゃ遊びにも勉強にも使えない程度には危ないけど…」

「返ス言葉モゴザイマセン」


 アルマゲストあんた、自分でも存在に疑問覚えてるの…?

ふと、自分が漏らした軽口。それをも律儀に返した相方に対して、

タキオンは思わず、猜疑に満ちた目を向ける。


「自分の立場に困ってるのは、私も一緒か…行こう!アルマゲスト」


 ルミナキャストとして、その在り方に振り回されてるヨシノ。

置かれてる立場に文句を言えないのは、ある意味似たもの同士。

気を取り直して、困惑から共感に心のカートリッジを差し替え、

タキオンはアルマゲスト本体からリモコンを取り出し、その操作に映る。


「アルマゲスト、地球・日本の中学2年生、春の中間テスト相当の問題を出して!」

「承知イタシマシタ」


 なにぶん、宇宙の広域に対応している装置であるが故、

ここまで指示を明確にしないと問題ひとつ絞ることが困難となる。

アルマゲストとその衛星はフォーメーションを組み、

ムジカントム・ワルターを囲む。スピーカーから響く問題は、

水の電気分解。具体的には、電気分解をする際、

マイナスの極に発生する元素は何か、と言うもの。


「ワルター様。オ答エクダサイ」


A.炭素

B.水素

C.酸素

D.フラワージョニー


 Dはないでしょ!?思わず内心で叫ぶものの、

タキオンの予想に反して、ムジカントムの心の影が攻撃したのは、

Dを司る衛星。しかし、当然の如く不正解。

折檻としてA・B・Cの衛星から放たれるは、3色の光線。

それにも関わらず。剥き出しの心、ワルターとなってもなお、

いつもの調子で笑うムジカントム。


「ワルター様。アナタ、ワザト間違エマシタネ」

「……!」


 息を呑んだのはタキオンではない。

薄ら笑いを止めた、ムジカントム・ワルターである。

この一瞬。タキオンは、自らの宿敵が四択問題を答えられず、

一番あり得ない答えを率先して選び、

自身に然るべき知識が備わっていなかった事を誤魔化したのだと悟る。

この凍りついた空気のまま、アルマゲストの光線が直撃。

光に焦がれつつも、ワルターは怯まない。


「本気デ問題ト向キ合ワナケレバ、分カルモノモ分カリマセン」


 そして、アルマゲストも怯まない。

衛星の砲撃を阻止しようと本体に突き進むワルターに対し、

更なる問題を出題する。「燃焼」とは何たるか。

それも虚しく。四択問題を放棄するかのように、

距離を詰めていく。が、保護者(ルミナタキオン)はそれを許さない。


「いつものムジカントムなら、これくらい避けてたよ!」


 やはりワルター。不意に割り込んだ、

タキオンの刃のようなスライディングにも気付かず、

足元を掬われるその姿。本来持ち得た注意力は、

確かに喪われてると言っていい。

そのまま地面から僅かに距離を置き、宙に浮かんだワルター。

影のフォルムに叩き込まれるは、ペナルティたる破壊光線。


「四択問題ニオ答エクダサイ」


 アルマゲストは、あくまで問題に向き合う事を望むのみ。

いつの間に。かの玩具が出題する問題に、ワルターも耳を傾け、

光線を浴び続けながらも、自分なりに答えを導き、

衛星へ一直線。そのナイフを振りかざす。それでもなお、

ひとつの正解への足取りはまだ遠い。


「私ノ行為ハ、アクマデ勉強ノアリ方ノ一ツデス」


 タキオンに対してか、ムジカントム・ワルターに対してか。

アルマゲストは、子機に光線を撃たせながら、自身の存在について語る。

自分のスパルタは、決して最適解ではないのかもしれない。

他に効率的なやり方もある。だが、どんな方法であれ、必要なものはある。


「諦メナイコトデス」


 必死に学習内容に喰らいつき、物事を理解するという小さな目標を放棄しないこと。

その意思が無ければ。勉強を行い、知識や技能を習得すること。

小さな目標を積み上げて、大きな目標を達成すること。

それらは決して叶わないのである。どんなに効率化が進んでも、

倫理が変わっても、知的生命体にとって必要不可欠な価値観なのだ。


「でも、ビームはどうかと思うよビームは…」

「左様デスカ」


 機械音声においても、アルマゲストの申し訳なさそうなトーンが窺える。

そして、このやり取りの最中でも息継ぎなしで行われるのは、

アルマゲストの破壊光線と、タキオンの拳の連携攻撃。ワルターが問題に突き進み、

誤答の際に身を守ろうと両腕を交差させようとしたものなら、

すかさずタキオンが足元から潜り込む。その死角から突き上げる掌底に、

ムジカントム・ワルターも構えを崩す。人間で言う鳩尾部分をめがけて、

そのまま叩き込まれるはトゥーキック。攻撃を受け続け、

ムジカントム・ワルターもひとたまりがないのか。

めり込んだ爪先をその体が拒絶するかのように、

不定形の肉体が水に溶けるように綻びつつある。

放り出されたワルターの四肢。タキオンはそのまま腕を握り締め、

背負い投げの動作で放り込む。そして、この一瞬のやり取りにおいて、

アルマゲストの光線はいまだ射出されていない。すかさず、

正中線にステッキをかざし、タキオンフィールドの構えに移る。


「ムジカントム!しっかりノートを取ってから、またアルマゲストと勉強しよう!」


 タキオンフィールドと破壊光線の挟み撃ち。

ムジカントムの心の影は、衝突し合う点(ドーム)と線(レーザー)に掻き消され、

その仮面ごと光に溶けていく。




 アルマゲストとの共闘を終え、ムジカントム・ワルターを撃退した、

中間テストから幾日か経ったあと。ヨシノが覗き込むのは、

両手に広げた、二つ折りの紙切れ。


「さ、30位上がったよ…!」

「すごいわ!ヨシノさん!」


 傍で喜んでいる賢界(のりか)は賢界で、

1ケタ台の順位を維持しているようなのだが。いずれにせよ、

アルマゲストを併用した学習効果は確かなもの。続いて向かうは、盛岡である。

私も一緒について行っていいかしら?と微笑みながら顔を近づける賢界だが、

ヨシノは拒絶のモーションで腕を伸ばす。転校した友人と再会する、せっかくの機会。

爆弾を投げ込んできそうな賢界が割り込まれたら、ヨシノとしてもさすがに困る。


「ヨシノさんのケチ!」


 唇を「3」の形にして拗ねる賢界であるが、ヨシノがこのような態度を取るのも、

元はと言えば彼女が番組をジャックしてきたからであり、擁護の余地はない。

何かいいお土産があったらよろしくね。そう最後に付け加え、

送り出せるのもまた、賢界という少女ではあるのだが。



「ムジカントム…何をそんなに必死に」


 ガルニエの舞台の上。机に向かって、問題集を解くのはムジカントム。

呆れたように遠間から視線を向けるエゴシックと、

ムジカントムの横に漂っている機械の球体、アルマゲスト。

何処から調達したのかは計り知れぬが、勉強のお供として、

ペルソナクスのアジトに腰をおろしているようである。


「アッ、ムジカントム様サボラナイデクダサイ」

「サボってはいないぞ?愛しい者への言葉を綴っているだけだ」


 勉強に集中しろ。そして、この作品を視聴している皆様も、

子供の勉強にアルマゲストを用いては如何でしょうか。

地球は販売していない商品なので、宇宙の量販店でご購入してくださいね!



「私が直接出ないといけないかもしれないわね」


 標的はルミナキャスト。騒がしい勉強風景には目もくれず。

エゴシックはただ一言呟く。

私、草之根ヨシノ!


えっ!?盛岡って銀河鉄道が通っ…


違うんだ…


岩手県盛岡市に、ルミナストーンを回収しに来た私とゲッシー。

そこで再会した囲碁部の友達、阿保《あぼ》あかり。

だけど、なんだか様子が変というか…何か秘密があったりしない?


次回、「盛岡旅行!再会と出会い」

届ける想いは光を超える!

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