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40 第7話「直接対決!ヨシノVSムジカントム」 Aパート③

 数日後の放課後。ムジカントムが襲来するか否か、

強敵の動向に対して緊張を保ちつつも、

最初の目標であったタキオンフィールドの常時展開をほぼ果たす。

そして、ゲッシーが投げ込むのは空き缶。


「タキオン!ぶつけないでね!」


 タキオンフィールドの展開範囲を狭めて、

極力、空き缶に触れず。続けて、表面を掠める直前。

出力を弱めて、アルミ缶を受け止める。

繊細な制御を成すため、練習を繰り返す。

それでもなお、投げ込まれた缶は陥没し、原型をとどめない。


「微妙だなー…やっぱりまだまだかも」


 常時展開を成立させたのは、純粋に持久力を得ただけではなく、

力を弱める方法を体感的に理解したからである。息を深く吸うのと、

小刻みに息を出し入れするのとでは全く違う。

ヨシノはタキオンフィールドの呼吸を身に着けたが、今度は、

身に着けた呼吸のリズムのまま走り続けるコツを覚えることが必要となる。


「あ、あまりフルパワーの乱発はしないようにね。ある程度生命力を削るからね」


恐ろしい発言をサラリと行うゲッシー。

タキオンとしての力はルミナスコープに内蔵された、

ルミナストーンのエネルギーによるもの。

番組から供給されるエネルギーを組み合わせた、

外付けの魔法である事には間違いないが、

出力にはヨシノ自身の命も関わっていると言う。

つまり、無闇にタキオンフィールドを使いすぎると命の危機に。


「単刀直入に言えば死ぬよ!まあリカバリーは取るけど」

「リカバリーでどうこうなるか!」


命を何だと思っているんだとヨシノは叫ぶ。

引き受けたのは自分とはいえ、

肝を冷やす発言を連発するハムスターに、

畏れと呆れを抱かざるを得ない。


「ただいまー」

「おかえりヨシノ」


 ゲッシーの手助けの影響か。もっぱら、

定時退社が多くなった父が先に迎える。部活動もしていないのに、

疲れ切った娘の様子。よからぬ事に巻き込まれていないかと心配するも、

あくまで友人と遊び歩いてた事をヨシノも強調し、受け流す。

ヨシノが語った内容にしても、同級生と一緒に地元の河川を調べる、

フィールドワークをしていると言うのだから止める理由もない。


「いや~…囲碁部でよかったって言うか」


 ヨシノ以外の部員がいなくなった囲碁部。

一年前の春先に、本当にそのような、

一見地味な競技でいいのかと両親からも問われたヨシノ。

彼女としても、奇をてらった訳では決してなく。

空間を読む在り方に魅力を感じたのだから、

地味でも別に構わない。そう押し切ったこともあり、

今更、普通の中学生と比較して少し変わった観点を持つのもまた、

両親からも不思議がられない、と言った具合である。


「でも、私がゲッシーに働かせられてるって言ったらパパとママもビビるだろうね」

「トゲがあるなあ…」


 事実でしょ!気まずそうなゲッシーに対して、ヨシノは異論を許さない。

そんなやり取りの中、突如、ヨシノは自身の中間テストが近い事を話す。

まだ部活動が全て活動するテスト期間には突入しないものの、

今回の中間テストは本気を出したいと、妙に意気込む。


「盛岡に行くためだよ」


 その理由。例えば、前回のテストよりも順位を10位以上上げる。

このような条件であれば、地元から盛岡へ一往復しつつ、

一泊する程度の旅費を出してもらう事をなんとか頼めないか、

といった具合である。特に、家族のメンタルも良好な今こそ、

まさに絶好のタイミングである。苦手な理科にしても、

単語をしっかり覚えたら一気に点数は上がるはず。

産まれてから共に過ごしてきた家族のバイオリズムを、

そうヨシノは推測する。


「カード型ルミナストーンの件かあ…」


 予言を引き当てたはお前だろう。

ゲッシー本人が思い出したように反応する始末。

ここで、そういえばと切り出すのはヨシノ。

アクアタキオンとして、一時的に力を得たように。

他にいいカードは引き当てなかったの?

そう、ゲッシーに質問をするが、答えはNO。


「今日の占いに使えるカードとかなら…」

「うわ、絶妙に役に立たないねそれ…」


 無論、話の種や実際の占いにはもってこいだが、

あくまで今のヨシノが求めているのは戦闘面。

それを買う者が喜ぶ事は否定しないが、

百年以上前の錬金術師が、時代背景ごと無視して製造したという、

カードパックの中身に求めるものではない。


「睡眠はしっかり取っておくんだよ、明日も朝練するんだから」

「うわー…きっついなー…」


 自分から切り出した特訓なのは勿論。ムジカントムに何か秘策があるのも勿論。

真剣に向き合わなければいけないといえども、投げ出したくなる時はある。

だが、何故自分は戦うのか。その理由を考えたら、

弱音を吐く暇はないし、吐く必要もない。キツいくらいは言ったけど、

だからやらない、ではないんだよね。私が好きだったヒロインのみんなだったら。

ヨシノは彼女達を思い出しながら、床に就く。



「起きてよゲッシー!!一緒に行くって言ったでしょ!!」


 翌朝、目を開けない相方。ヨシノはゲッシーの体を揺するが、

崖から落ちた時に掴まる命綱かのように、かけた毛布を握って離さない。

その傍には、鳴り止まないトークアプリの通知音。

賢界(のりか)のおはようのスタンプの連打である。

落ち着いてよ三鳥(みとり)さん!叫ぶに叫べないもどかしさ。

ペダルに怒りをぶつけるかのように。ひとり、自転車を思い切り漕ぎ出す。


「公園のラジオ体操かなんかかな…ヨシノ」


 朝間に出掛けたところで、遊べる場所はたかが知れてる。

たまたま目を覚ましたヨシノの父も、夜遊びではないのだからいいかと、

体を逸らし、寝起きの体幹を伸ばす。

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