↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/63

第6話「パートナー解消!?ゲッシー、最大の危機!」 Bパート②

 ゲッシーを連れ帰る作戦の前に、

空腹に耐えかねたヨシノが入ったのは、ラーメン屋。

知らぬ店ではあるものの、外装はそこそこ古めかしい。

歴史がある店なら、味は問題なさそうだ。

店に入って最初に目に入ったのは店主。黒いシャツにバンダナと言う、

きわめてオーソドックスなラーメン屋の格好、それに白い仮面。

そう、ムジカントムだ。


「フフフ…へい!らっしゃい!見ない顔だね」


 その薄ら笑いは聞き飽きたぞと言わんばかりに、

ヨシノは呆れと驚愕をその顔で浮かべながら、

ムジカントム!と声を上げる。


「フフフ…完璧な変装だっただろう?」

「バレバレだよ!」


 咄嗟に口に出るのも無理もないが、

ムジカントムはそんなヨシノの即答に対しても、

いつものように笑って誤魔化すのみ。だが、

ちょっと目線は下がっているし、肩の角度も弱弱しい。

本気でバレないとでも思っていたのだろう。

いくらお約束だからと言っても、いい加減学習した方がいい。

ヨシノはそんな風に呆れた様子を見せながらも、

ルミナスコープを構えて、早速、臨戦態勢。

そんなヨシノを尻目に、ムジカントムはそば揚で麺を華麗に掬い取る。

その手捌きには感嘆するばかりだが、

その前に変装をもっと上手くした方がいい。


「フフフ…お前が勝ったらこのラーメンをタダで食べさせてやろう。だがお前が負けたら分かるな?」


 と、どんぶりをカウンターに置きながら語る。断っておくが、

別にヨシノがムジカントムに中華そばを頼んだという事実はない。

そして、テーブルの上に置かれるは、

煮干しの効いた濃厚な香り。ヨシノとしても、

何をこの男は地元の味まで学んできたんだと笑うしかない。


「出てこいワルター!今日こそルミナタキオンに引導を渡せ」


 キッチンから出てきたのは、筋骨隆々の奇怪な大男。

ワルターが今まで身に着けていた仮面は見受けられない。

その替わりと言わんばかりに、自己主張するのは丼(どんぶり)。

頭蓋の替わりにラーメンが載ったその姿。ご当地キャラクターの類を、

極限まで誇張したようなその容貌。





「敵はルミナキャストばかりではない…となると」

「今のままではまだ不足、と言うわけだな…フフ」


 数日前の出来事である。ペルソナクスのアジトで語らう、

エゴシックとムジカントム。イーヴィルタキオンに対して、

完膚なきまでに叩きのめされたこともあり、

現状に強い懸念を抱くのは当然の帰結と言えよう。


「ワルターだけじゃ足りなさそうね。ルミナストーンがあればいいのだけど」


 ワルターもピンキリ。仮面への特別なチューンナップ、

素体の精神状態、そして生成の際の工夫。

さまざまな要因で強弱は変わっていくものの、

ペルソナクスは強力なワルターを生み出すことに余念がない。

ルミナストーンを求める理由も、その石があればより効率的に、

強いワルターを開発できる。或いは直接、

改造を施したワルターに組み込む材料になり得るからだ。


「そんな雑兵、いたところでどうにもならんわ」


 異議を唱えるのはハラガヘッタ。確かに、

イーヴィルのようなイレギュラーを考慮せずとも、

ワルターは今のところ全敗。敵(ルミナキャスト)の戦闘能力には、

到底及ばないのも事実である。元がダメでは、

強くしたところでどうにもならないと言うのも一理はある。


「ダメ出しなら誰でも出来るわよ」


 代案を出しなさいよ。エゴシックはすかさず反論するが、

ハラガヘッタが出した答えはシンプル。ワシの怪人を出撃させる。

この唐突な提案。仮面男とゴシックドレスの少女の二人組は、

思わず互いの顔を覗き込む。大言壮語か、確信か。

大仰な見栄を切った太った男の方も、自身の配下にある兵(つわもの)は、

お前たちの扱う烏合の衆の比ではないと、確かな自信を覗かせる。



「我が名はラーメン怪人・チュウカソバンなり!!」

「何それ」


 ワルターですらない。ハラガヘッタが用意した、

不可解な怪人。さすがのムジカントムとて頭を抱える。

ヨシノが漏らした率直な対応も、

この拉麺怪人が持つ違和感を漠然と察しているが所の物だろう。


「フフフ…こいつはワルターだぞ?」


 情報は決して対称ではない。

草之根ヨシノがハラガヘッタの存在を知らないのをいいことに、

ムジカントムはこの拉麺は自分の舎弟だと主張する。

拙はハラガヘッタ社長の部下である。そう拉麺が訂正しようにも、

口を塞ぎ、場の主導権を握らせるのを決して許さない。


「行け、チュウカソバン。そいつの持つルミナストーンを奪い取れ」

「え?」


 唐突なムジカントムの発言に、ヨシノが目を丸くする。

その唐突なヨシノの反応に、ムジカントムは思わずえっと声を出す。

お前まで驚くな。そうヨシノが感じた矢先、カット編集でもしたかのように、

取り繕った冷静な姿を取り戻す。試しに、財布の中身を確認してみろ。

そう言われるがままに、小銭入れを覗き込むヨシノに飛び込んだのは、

光り輝く赤いメダル。変則型のルミナストーンである。


「そうか、ヨシノ…俺が動き出したのはその10円のおかげだ」


 しゃくしゃくは自分が意思を持ち、動き始めた意味を知る。

偶然、自動販売機から出てきた不可思議な釣銭。

ヨシノがエラー硬貨と思っていたそれは、賢者の石。

今更気付いたのは、普通の硬貨に擬態しきれていたから。

俺達のような、強い魔力を有する存在と対峙することで真価を得る、

いわば一種の魔力体反応。そうムジカントムは予測するものの、

ヨシノにとっては未知の単語。


「ムジカントム殿…拙は魔力を持ちませぬ」

「黙りな?」


 ムジカントムに命じられるがまま、ヨシノめがめて突っ込むチュウカソバン。

そんなヨシノがルミナスコープを覗き込んで、至る姿はルミナタキオン。

そのままタックルを受け止めるものの、タキオンの視界は大きく揺れる。


「ヨシノ!無理に組み合おうとするな!そいつ、体格に見合った力があるぞ!」


 ゲッシーは不在、ワルターも不在。そして、

この変則的な戦いのセコンドとして立つは、しゃくしゃく。

タキオンに変身したヨシノにアドバイスを行いつつも、

彼女の財布からルミナストーンを抜き取り、走り抜ける。


「フフフ…抜け目ない奴だな」


 そのまま身を乗り出し、追いかけるはムジカントム。

戦いの隙に硬貨型ルミナストーンを盗み取る可能性を想定し、

咄嗟にそれを保護しようと駆け抜ける。

仮に奪い取られたとしても、それは今であってほしくない。

ゲッシーとまだ正式な会話を行っていない事を思い出つつ、

しゃくしゃくは人の入れぬ隙間を潜り抜ける。


「2VS1ではさすがに格好がつかないな…」


 しゃくしゃくに逃げられ、ムジカントムは途方に暮れる。

ワルター…もといチュウカソバンと一緒に戦う行為は、

彼の美学においては決してありえない。

この男がルミナキャストと行っているのは、

単なる生存競争ではなく、自身を主役と誇示する行為に他ならない。

戦いをワルターや不気味な麺類に任せても、

自身の戦いに補助輪を付けてもらうような感性までは持ちえない。


「そんなに言うならタッグマッチにしてやるよ、ムジカントム!」


 今度は聞き覚えのある声だな。

嘲笑うように確認するムジカントムの眼前に現れたのは、

泥にまみれて薄汚れた毛玉。ゲッシーである。

必死に駆け抜けたことが伺える、その車体(すがた)。

そしてその傍らに掲げるは、ルミナボックス。

ムジカントムも一目見て宝石箱の意味を理解し、

ゲッシーに対してひとつ推測をする。


「そこに入っているルミナストーンでタキオンを強化されるわけだな」


 そのままゲッシーがルミナボックスを展開して、

ルミナストーンを激しく輝かせる。その光を吸い込むように体に纏い、

そのまま体を丸めて、砲弾のように仮面に突っ込む。お前が戦うのか。

ムジカントムもたまらず仮面を抑えるものの、攻撃としては効いていないのか、

勢いを維持しつつも、顔を抑えて得物のナイフを振り回す。


「は…速い!やばいぞコレ」


 体に鞭打ち。ゲッシーも無理を強いれば、

相応の速度で周囲を翻弄できるのだが、ムジカントムはそれを上回る。

自分よりも足が速いと言うよりも、不思議な引力で近づいていくような、

奇妙な威圧感。この不気味な触感から逃げ出すように、

ゲッシーは空中前転で思い切り突っ込み、ラーメンの湯船に思い切り飛び込む。


「ゲッシー!」


 思わぬタイミングでの再会に、タキオンは思わず叫ぶ。

チュウカソバンの頭から顔を出す、スープまみれのゲッシーに、

呆れと笑顔を交えつつ。戦闘の最中ではあるものの、

今のヨシノに不安はない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。