第6話「パートナー解消!?ゲッシー、最大の危機!」 Bパート③
「ゲッシー!帰ってきたか!」
「うわっ!リンゴ野郎!」
先程まで身を潜めていたしゃくしゃくが駆け寄るも、
ゲッシーは相も変わらず。もっとも、
スープに濡れた自身のその姿を見かねて、
どこからともなくタオルを持ち出したと思ったら、
健気に拭き取る彼の姿を目の当たりにしたとなれば、
ゲッシーも気を許さずにはいられない。
「何だよお前!人間できすきだろ!」
「俺達はハムスターだ」
返す言葉もない。その間にもしゃくしゃくは、
言われずとも手際よくルミナボックスの窪みを探し、
流れるように賢者の小銭を嵌め込む。ゲッシー。
こうやってルミナストーンを嵌め込めば、どんな効果があるんだ?
そんなしゃくしゃくの質問に対して、ゲッシーの答えは「何も」。
「何のために集めてんのそれ!!」
タキオンが思わず横槍を入れるのもごもっとも。
しかし、長期的に見たら何もないわけではないと、
その剣幕に対して訂正しつつ、涙を浮かべて震えるゲッシー。
一定ラインに到達するまで宝石箱の反応を待つのが基本だが、
いざ閾値に到達した時は、
特殊な機能が解放され、様々な効能を得るのだと言う。
「だからタキオン!そのコインのルミナストーンを使うんだ!」
「使うってどうやって!?」
そして、以前ルミナストーンもどきのカードを使った際、
水の力をタキオンが得たように。あるいは現在、
しゃくしゃくが喋り出したように。再度の確認にはなるが、
宝石型以外の形を成したルミナストーンは、
短期的に奇跡の力をもたらす作用がある。
「うぬらをここで始末すれば、その石は我らがもの!」
このやり取りの間にも、チュウカソバンは鉄のような体を以て、
タキオン目掛けて思い切り突っ込む。
タキオンシフトで躱すことは可能なものの、
それは彼女単体の話であり、しゃくしゃくを護れない。
ゲッシーは必死に「ルミナストーンのすゝめ」をめくり、
そのまま思い切り指示を出す。
「"ベットイン"と叫ぶんだ!タキオン!」
その言葉の通りに、タキオンは思い切りコインを投入。
そのままルミナストーンは光り輝き、辺り一面を包む。
だが、何も起こらない。
「もしかして、俺が動き出すことそれ自体が10円の力だったのか?」
しゃくしゃくはそう推測をするものの、
ゲッシーはそれを否定する。少なくとも、
ルミナボックスに宛がわれるルミナストーンには、
ルミナキャストの戦闘の助けになるような効果があり、
ぬいぐるみが動き出すと言うだけでは説明として弱いのだと言う。
そんな流れの中、突如ラーメン屋の暖簾をくぐる小柄な黒い影。
「助けに来たよ!ヨシノさん!」
聞き覚えの無い声であるが、確かに見覚えがある。
地面を滑って来るは、ボウリングの球。それもまさに、
凪とゲームを嗜んだ際に、ヨシノが利用したボウリング球である。
相棒はゲッシーでもしゃくしゃくでもない。自分だと主張するかのように、
勇敢にチュウカソバンの膝下に特攻する。
「ぐああ!我がラーメンが!!」
もはや立っていられず。チュウカソバンが膝をつき、
そのまま崩れ落ちる。しかし、食べ物を粗末にする事が禁忌なのは、
宇宙の共通項なのか。零れ落ちる頭部の麺を、
そのまま別の容器に移し替える。
「今だ、タキオン!このまま必殺技を叩き込もう!」
「え…いいの?」
ゲッシーの唐突な発言。
もう少し技を撃つ根拠がない限りは、迂闊な真似は行いたくない。
そして、まだ戦いらしい戦いをしていないと胸中で考えていたタキオン。
ある種、戦略の否定に近しい発言ではあるが、彼の答えは「尺」。
このままでは放送枠に間に合わないため、
ルミナストーンで奇跡を起こしてそのまま決着をつけたいと、
上層部から指示があったのだと言う。
「そんな簡単に出し入れできる奇跡ってなんなの…」
だが、チュウカソバンが大きな隙を見せているのは事実。
そのまま、ゲッシーが回収した翠のルミナストーンと、
10円が変質したルミナストーン――蒼の宝玉は、
ルミナボックスで光り輝き、そのままタキオンフィールドと結合。
それはまさに、イルミネーションの如く。その色彩は、
光のドームに包まれていく中、そのエネルギーに掻き消え、
溶け込んでいくチュウカソバンをも魅了した。
「コイン型ルミナストーンの効能は、"交流"の力…」
先程までチュウカソバンの形をしていた、
煮干しの効いたラーメンをすすりつつ。
小学生が国語の授業で、教師の後に続いて音読を行うかのように、
ゲッシーの言葉を復唱するヨシノ。「ルミナストーンのすゝめ」によると、
交流とは、無生物との会話をも可能にする行為を指すと言う。
「それでボウリングのボールが援護しに来たんだね」
戦いを終えて、一仕事終えたような心持で去っていた、
ボウリングの球と、彼の去り際の言葉をヨシノは思い出す。
また君と戦いたい。それはルミナキャストの戦いのことなのか、
ボウリングのことなのか。彼女が知る由もないが、
今はそれよりも大事な事がひとつ。
「しゃくしゃくともうちょっと話したかったな~」
ルミナボックスにコインが収まる以上は、
しゃくしゃくはまた、物言わぬぬいぐるみに戻るのだと言う。
だが、それでもヨシノはあまり寂しそうではない。
しゃくしゃくはただ、喋り出しただけ。元より、
ヨシノとゲッシーを見守る意思は備わっている。
「お前にならヨシノを任せられるな」
「当たり前だろ」
ヒマワリの種をともに齧りながら、ゲッシーは目を逸らす。
ヨシノをよろしく頼む。しゃくしゃくはそう言うと、
黙々とヒマワリの種を食べる作業に集中する。
隣り合って、同じ食事を楽しむハムスターに対して、
一番伝えたかった言葉を届けて満足したのか。
今まで見せた中で一番穏やかな表情を、確かに見せている。
「動かなくなる前に、リンゴも一緒に食べない?」
「いいぞ。俺の方は分量を守らないとだけどな」
今度はゲッシーの方から提案する。ぬいぐるみなんだから、
それくらい問題ないだろと茶々を入れるゲッシー。それに対して、
せっかく動けたんだから、もう少しハムスターらしく振舞いたい。
そう結論づけて、微笑むしゃくしゃく。
「もしも、本当にゲッシーを消すって言うならさ、私が戦うよ。上層部と」
その様子を見て、最後に〆るのは草之根ヨシノ。
彼女を利用して、番組制作に巻き込んだ一人は勿論ゲッシー。
何故、ヨシノがそこまで言い切ってくれるかは現時点の彼にも分からないが、
今はただ、ヒマワリの種を友人と食べる行為のみを考えるにした。
とある夜。川の流れを劇伴がわりに、
水筒の蓋を回して開けるはエゴシック。
綺麗に刈り取られた雑草の山を小道具にして、
お気に入りのアンティークチェアに腰掛ける彼女が、
古めかしい本をめくる。
「ルミナストーンはここにありけり…」
昭和某年。ヨシノの学区と離れたこの河川敷にて、
眩い光が川から発せられる、不可解な現象が確認されたという。
エゴシックは指を弾く。合図とともに、
掌に乗るほどの大きさの、一際小さいワルターの群体が、
椅子の物陰から走り、川に飛び込む。
「行きなさい」
エゴシックの開発した、ワルターもどき。
本来、ワルターは人の精神の影から生まれるもの。
「もどき」はその場に留まった、嫌な空気。
雰囲気の悪さ。そんな曖昧な澱みをかき集めた、
戦闘能力を持たない廉価版である。
私、草之根ヨシノ!
タキオンフィールドにはもっと可能性がある。
そう信じて、特訓をすることにした私。
そして、ムジカントムが必殺技を引っ提げて、
私と勝負をしたいと挑戦状を突きつける!
次回、「直接対決!ヨシノVSムジカントム」
届ける想いは光を超える!




