第4話「ヨシノの休日!ストレージに眠る叡智」 Bパート③
ゲッシーが渡したカードゲームのパック。
凡そ百数十年前、魔法素粒子界の錬金術師が遺した、
ルミナストーンのレプリカ。そして、
真のルミナストーンを指し示すカードの入ったアイテムである。
そんなわけあるかい!時代ごと破綻した在り方。
タキオンもそれに物申そうと、その怒号が喉元まで来た瞬間。
「それはさっき俺が開封したパックじゃないか」
予言と相反する、ムジカントムの思わぬ発言。
確かに先程、この仮面男はストレージという概念に対して、
なんだそれはと言わんばかりに、わずかに疑問を示していた。
それを思い出しつつ、タキオンはパックを開く。
「水色…?」
鈍色や錆色のような暗い色味のカードの束。
そこでひときわ輝く、サファイアの質感のカードが目に飛び込む。
丁度、ムジカントムが持っているものの色違い。
何らかの対比関係にあると推測できるものである。
誰に言われるまでもなく、
タキオンはそのままカードに思考を集中させる。
「ムジカントムに出来るなら、私にだってできるはず!」
その姿に、ムジカントムは仮面の奥で息を詰まらせる。
肉体が青い光に包まれ、それを纏うルミナタキオン。
彼女の姿を流動的に巡っているその様は、まさに流水。
水の力を得たタキオンは、そのままワルターを殴りぬける。
「どう?さっきと比べて効いてるでしょ」
先程までの全く攻撃が通らなかった姿は何処へ行ったか。
青いオーラのタキオンは、己が当身をぶつけるたびに、
ワルターの炎を弱め、鎮火させていく。
しかし、ワルターに対して打撃を与える事は叶ったものの、
怪人はそれでもなお立ち上がる。
「フフフ…硬いだけではない、意外とタフなところはあるんだな」
贋作と言う未知の情報で見せた焦りは何処へ行ったか。
戦いを解説する程度には、冷静さを取り戻したムジカントム。
自身の生み出したワルターの強靭さに感心するが、
対峙しているタキオンはその手ごわさにも全く臆さず。
ルミナステッキを展開、そのまま額にステッキを当て、目を閉じて念じる。
「(凪!こんな一纏めにされて、落ち着かないでしょ!?)」
ルミナテレパス。タキオンは友人・草之根ヨシノとして、
ワルターの一部となった凪の心に語りかける。
自我が一遍に集約した場合、その心はどうなるのか。
少なくとも、不協和音が何重にも鳴り響くその様は、
統一された心があるようには到底見えない。
「ワルァッ!」
なんと、ワルターが自身の顔面を一発殴る。
唐突な反射行動。だが、
そんな無意識の自傷すら意を介さず。
力士がぶちかましを仕掛けるように。
ワルターはそのまま勢いよく突っ込み、
そのスピード感を更に拳に乗せるが、
振りかぶった拳の先にタキオンはいない。
「凪!助かるよ!」
直後、ワルターの顔面周辺が光に包まれ、
その熱と爆風をもって、勢いよく吹き飛ぶ。
自我の複合体である以上、凪に語りかけたところで、
説得の効果はないと考えたタキオン。
ワルターが顔面を殴ったその一瞬の隙に飛び上がり、
ルミナライトアップの光を叩き込んだのだ。
「フフフ…大した読みだな」
タイミングと位置関係。
それらを見事に分析しつつ、強烈な一撃を叩き込む。
確証こそなかったものの、タキオンはそれを成し遂げる。
その読みに対する筋の良さを、ムジカントムもまた賞賛する。
「もっとも、それどころではないか…」
やはり贋作。当初、ムジカントムが持っていた、
ルミナストーンと思われていたカード。
それがボロボロと崩れ落ちていく中、
タキオンは一味違う技を叩きこむ。
「覆い尽くすは水の力!光と闇をも潤して!アクア・タキオンフィールド!!」
「必っ殺!」
「何やってんだ二人とも」
決着が付いた後の、穏やかな喧しさ。
ムジカントムが撤退したレンタルショップの店内で、
背中合わせで、息の合ったポーズを決めるヨシノと凪。
意味が分からぬまま、乾いたリアクションの順。
それもそのはず、これは順が物心つく前の作品。
ヨシノと凪の共通項たる変身ヒロインのポージングである。
「動画アップしたらバズるんじゃね?」
「いやー…どうだろ」
それだけ、自分たちの所作が見事だと凪は自負する。
ヨシノも内心、見事なコンビネーションと自惚れるものの、
一般人の少女二人がポーズ一本で勝負したところで、
画面越しの観衆を沸かせるのは無理難題だろう。
そうだそうだと、順もヨシノに同意する。
「二人ともそりゃないっしょ~」
そんなやり取りの最中。ゲッシーが割り込み、
こっそりヨシノと打ち合わせる。
今回、古文書の通りには行かなかったものの、
重要なヒントは確かにあった、と。
だから、絶対今日のことは徒労ではないとヨシノを励ます。
「きっと、パックを開けていく中で見つかるさ!」
「…もしかして、これも商品として売る算段だったりする?」
今回の戦いのアイテムも、自分の知らない宇宙のどこかで、
実際にグッズとして売っていくのではないか。そんな疑念のもと、
ヨシノはゲッシーの調子のいい発言に気の抜けた反応をする。
一見したら奇妙な一人芝居。そして、
改めて凪との日常の顔に戻ったヨシノは、
凪の放った一言に少し戸惑う。
「ヨシノ…なんかちょっと夢を見た気がすんだわ」
日頃の部活動の疲れからか、僅かに意識が飛んだ時。
自分がポージングを決めたヒロインになったものの、
一方的にやられてしまう。しかし、最後の最後に、
相方であるもう一人のヒロインが自分を助けてくれた。
そんな夢を見たのだと言う。心当たりが大いにあったヨシノは、
なんとか夢であることを強調しようとするものの、
最後の凪の一言で、全部どうでもよくなった。
「夢にこんなこと言うのも変だけど、ありがと」
「いいんだよ。夢なんだし」
時は数日前まで遡る。凪との約束を、
賢界越しの伝聞で取り決めたその日のこと。
「三鳥ン家もすげーもんな、友達でうらやましいわ」
「やましい事を言わんでいい!」
そんな打算で普段から付き合っているわけではない!
そう勢いよくツッコむヨシノ。
仲良くしてたら高い料理でも食べられんじゃね?
と言うのは近くの男子生徒の弁。この軽口も根拠があってのもの。
実際、賢界はヨシノの達の住む町でも名の通ったお金持ち。
それなりに知名度のある地域企業の娘である。
「あと草之根…最近、なんだかリアクションが激しくなってきてね?」
「そ…それは気のせいっすよ」
これもまた男子生徒の覚えた疑問。
ルミナタキオンとして、様々な事態に反応せざるを得なかったヨシノ。
その余波が日常生活にもにじみ出てきているのか。
不器用にも、慣れない口調で返すのも、ヨシノの焦りの表れ。
ルミナキャストの側面がバレたら色々な不利益を被るのは明白。
いつボロが出るか心配ながらも、おどけて返す他なかった。
「古本コーナー…」
ヨシノと賢界がいなくなったタイミング。
男子生徒は、賢界が伝えた内容について、一言呟く。
「あのバスケ部の奴、そんなこと言っていたか?」
凪が寝ているヨシノに伝えたかったことは、
今度の日曜日、遊びに行かないか?と言う提案。
そして、場所や内容の詳細をトークアプリで後で話すこと。
その二つだけである。
私、草之根ヨシノ!
ルミナタキオンと瓜二つの姿を持つ、
謎の存在。ムジカントムすら前座にするその力。
ペルソナクスをも超える最強最大の敵!
だけど私は、絶対諦めない!
次回、「最強の敵、イーヴィルタキオン!」
届ける想いは光を超える!
…5話でこれって早すぎるでしょ!




