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第4話「ヨシノの休日!ストレージに眠る叡智」 Bパート②

 ゲッシーが屋上まで駆けつけたところ、

既に戦闘は進行中。建物そのものを破壊するような、

ワルターのその質量。踏み付けをその両手で支え、

思い切り踏ん張り、耐えるタキオン。そして、亀裂の入るレンタルショップの外観。


「タキオン!ワルターを倒せば建物も直る!番組側でこっそり修理するから」


 そういう事は後で言え!

いちいち声を出しはしなかったものの、

ゲッシーの余計な追伸に思わず腹を立てる。

しかし、今にも押しつぶされそうなその状況。


「奥義!ゲッシードリフト!」


 間一髪。先日、机の隙間に潜った時の如し。ゲッシーは、

目にも止まらぬスピードでタキオンの足元に潜り込む。

その勢いのまま、テーブルクロスに食器を乗せて布を引っ張り抜く芸当のように、

タキオンをワルターの万力から脱出させた。


「ありがとうゲッシー!助かったよ」


 初めてまともに役に立ったねと、さりげなく酷い事を言いつつも、

タキオンはゲッシーの救援に大喜び。そしてゲッシーは喀血。

あまりにも唐突なリアクション。血を吐き出したゲッシー曰く、

体への負荷が大きすぎるため多用は出来ないらしい。


「そんな技封印しときなさい」


 絵面がおぞましすぎるだろう。これでは視聴者を怯えさせてしまうと、

ゲッシーの無茶を封印するよう叱りつけるタキオン。

そして、複数の人間を取り込んだが故に、普段以上の重さを成しているのだろうと、

血をその手で拭い取りつつ、気を取り直したゲッシーはワルターを分析する。

臨戦態勢でありつつも、傷付き、疲労した二者の様子。

逃走でもされたら困るなと、ムジカントムは気を引き留めるための手段に出る。


「フフフ…どうだ?このカードは。レアだぞ」


 見知らぬカードを胸ポケットから取り出し、見せびらかす。

ムジカントムが持つそのカード。宝石のような装飾、

赤いルビーのようなコーティング。テキストなども無く、

どう見てもゲームに使えそうな代物ではない。


「あれがルミナストーンだ!タキオン!」


 古文書に記された予言に相反して、

ムジカントムに先を越される事態に。

慌てるゲッシーだったが、タキオンは意外と冷静。

ここで臆しても仕方ない。ワルターを倒して、

なんとか自分たちのカードにしてしまおう。


「それにさゲッシー…あの予言、思い出してみて」


とある日曜日のレンタルショップ

女子中学生とハムスターのような魔物が

カードショップのストレージコーナーに

紛れているルミナストーンを見つけるだろう


 ストレージコーナーに紛れているルミナストーン。

それをヨシノたちが発見すると記されている。

ムジカントムが女子中学生やハムスターという事実はない。

だから、予言が外れたのではなく、その内容は終わっていないだけ。

つまり、最後に見つけて、手に入れるのは私たち。


「そのカードは私たちがいただくよ!ムジカントム」


 自分たちがストレージで見つけずとも、

カードコーナーの中に眠っていたカードを手に入れたら、

結果は同じ。予言を遂行すると意気込むタキオンに、

所詮、屁理屈だろうとムジカントムはいつもの調子で嘲笑う。


「ストレージ?だが…俺が黙って帰ったりしなかった理由は分かるか?」


 この男がわざわざカードを見せびらかしたのも、

単なる見栄や自慢の類ではない。元より、

ルミナストーンを賭けた決闘を行うつもりであった。

タキオンを始末するという目下の目標こそあれども、

こっそりストレージからカードを抜き取るか、

買って帰るのはスマートではない。


「いわばカードを賭けた決闘だぞ?ルミナタキオン」


 もっとも、カードを使うことはあるかもしれないぞ?

と、手に入れたアイテムを活用することも申告する。

必ずしも対等の決闘を挑まないのもまた、ムジカントムという男のようだ。

そして、タキオン側にも秘策がある。


「新技、見せてあげる!」


 今まで存在すら知り得なかったはずの、新たな技を行うための所作。

ヨシノのようなルミナキャストが突然それらを見出すのは、

特定のタイミングでルミナスコープのとある回路が動き出し、

使用者の脳にアクセス。技の記憶を植え付けるためである。

その名も新技、タキオンシフト。


「フフフ…いわばスピード技か」


 体格の優れた格闘家でも、徒競走では短距離ランナーには敵わない。

突如ワルターの背後に現れ、そのまま思い切り延髄蹴りを叩き込む。

そのタキオンの速度に、ムジカントムは興味を持つ。


「行くよ!更にタキオンシフト!」


 タキオンシフトの名を宣言する前に、屈み、腰を思い切り捻る。

そして、高らかにその名を示したと同時に光瞬く。

今度は側面から、ワルターの脇腹を狙った一撃。それでもなお、

タキオンの攻撃は怪人の痛覚に訴えかけない程度の威力しかないようだが、

一方的に翻弄されるがままのワルター。オイ、そこの魔法生物。

動的な膠着状態の中、ムジカントムはゲッシーをそのように呼びつつ、

ルミナストーンの持つ力について、一つの確認を行う。


「"宝石型"以外には様々な効果があるのを知っているな?」


 宝石型。すなわち最初に見せた、

ルビー風のルミナストーンは純粋なエネルギー。

動力やパーツとしての運用が前提となる。

ルミナスコープはその一例と言える。

一方、今回のカード型のような、

宝石以外の形を成したルミナストーンは、

それ単体で何らかの力を持つ。


「ここひとつ…ワルターに発破をかけてやるか」


 ムジカントムのカードが光った矢先。ワルターの体が炎に包まれる。

一見、自分から火だるまになったような容貌だが、

特段苦しんでいるようには見えない。ゴリラのようにドラミングを行うなど、

むしろ活力に満ち足りている。


「まずい!これじゃあ触れない!」


 炎など触れたものではない。肉弾戦から遠距離戦。

光弾・ルミナライトアップでの戦いに切り替えようと、

素手の状態からルミナステッキを呼び出そうとした瞬間、

ワルターは口から巨大な火球を吹き矢のように思い切り飛ばす。


「うおヤバ!」


 脊髄反射の叫びとともに、体幹を逸らして地面に手を付くタキオン。

ブリッジの姿勢で、見事光線を回避する。そのまま定位置を作り、

距離を取りながら戦うのかとゲッシーが予想したものの、なんとタキオンは、

そのまま地面をスターティングブロックにして、

掌でクラウチングスタートを行う。

屋上に叩き込んだ衝撃。天井に穴を開けるかのような、

掌をスプリングにした反動で一気に距離を詰めた。


「ルミナライトアップ!」


 至近距離での光の弾丸。ひとたまりもないのか、ワルターも顔を抑えて悶絶。

そのままルミナステッキを消し、タキオンシフトで距離をとる。

やはりそうかと、ムジカントムは仮面越しに顎に手を当て、嘲笑う。


「タキオンシフトはいつでも使えるわけじゃないんだろう?」

「!」


 タキオンシフトとは、ルミナタキオンがその肉体を光に変換し、

そのまま質量に囚われない高速移動を行う技である。

ムジカントムは何の説明もないままそれを見抜き、

同時に構造的な脆さを指摘する。その一つは消耗の度合い。


「お前…普段と比べて息が上がっているな」


 ワルターが炎の弾丸を連射し、捌ききれないと悟ったタキオンは、

タキオンシフトを織り交ぜつつも、回避に特化する。

しかし、ムジカントムはその節々で見受けられる彼女の顔色と呼吸を見逃さない。

全力疾走を繰り返すような疲労感。ヨシノの身近な例で喩えるなら、

敵陣でシャトルランを繰り返すのがタキオンシフトである。


「そして、ルミナステッキを使った技とは同時に使えない」


 高速移動(タキオンシフト)で回避をしながら、光弾攻撃(ルミナライトアップ)を使えばいい。

それを行わない。そして、タキオンシフトを使用する際は必ず素手。

つまり、ステッキを持たないことこそが使用条件、技の限界ではないか。

そう分析するムジカントムに、タキオンはわずかに顔を歪ませる。


「だけど、ルミナライトアップには弱いんでしょ?」


 引き攣った顔を、すぐさま自信に満ちた笑みに切り替える。

新技の弱点を指摘されても、タキオンは怯まない。

このやり取りの間も、暴力的な火の玉が雨霰《あめあられ》のように降り注ぐ。

全弾を回避するものの、限界を迎えるのも時間の問題。

それでも、諦めたら友達とその弟は助けられないし、自分を応援しているであろう、

視聴者のみんなは喜ばない。故に、タキオンは動き続ける。


「そっちの方は疲れてないの?ムジカントム!」


 荒い呼吸で啖呵を切るタキオン。しかし、どこ吹く風とムジカントムは嘲笑う。

ルミナストーンで強化をしている以上、普段のワルターとは違う。

ここで限界を迎えるのならば、それはルミナキャストが突然変身を解き、

ただの人間に戻るのと一緒であると。さあ、トドメを刺せ!

ワルターに対して、決着を促すムジカントム。


「…どうした、何故撃たない」


 突然の機能停止。ワルターはその口を開いたまま。

先程までノンストップだった、炎の弾丸の供給が停止する。

ムジカントムとしても予想外だったのか、

攻撃の再開を求めるその所作には余裕がない。


「やっぱりそれは"贋作"だったか…ムジカントム!」

「えっ、贋作?」


 ゲッシー、どういうこと?

その突然の宣告。ゲッシーによるちゃぶ台返しに、

タキオンは思わず声を出す。カードを手に入れた、

そう確信していたはずのムジカントムもまた、

仮面の形状を歪ませ、驚愕の表情を浮かべているかと、

タキオンが一瞬錯覚するほど困惑している。


「フフフ…?贋作まであると言うのか」


 器用にも、困ったような声色で笑い声を漏らしつつ、

ムジカントムは疑問を投げかける。

僕が答える前にこれを見ろ。言葉よりも先に、

ゲッシーはカードパックをどこからともなく取り出し、

そのままタキオンめがけて放り投げる。


「タキオン!これを開封するんだ!」

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