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第4話「ヨシノの休日!ストレージに眠る叡智」 Bパート①

「あ、ヨシノもパカッチやんの?」


 カードコーナーのストレージ。大した値段のつかない、

価値で言うなら雑多なカードをひとまとめにしたコーナーである。

もっとも、性能やカード間の相性に関して言うならば、

有益なカードが転がっているのもまた、ストレージと言える。


「いやー順くん…私はやらないけどさ」


 パカッチカードバトル。元々は、児童向け雑誌の漫画、

「パカッチ!オープンファイト」から発展したカードゲーム。

自分の持っている才能をパカッと開放、

というコンセプトのアクション作品が原作となる。

既に5年ほどの歴史があり、小中学生の間ではそれなりのシェアを得ているのだ。


「そっかー、凪も興味ねーしな」


 少し残念そうな、凪の弟。

今回参加する大会のように、手合わせの機会はあるものの、

もっと多くの対戦相手に飢えている様子だ。

学校の同級生だけでは物足りないのだろう。

姉に対してカードバトルを試みたい、といった様子からも見受けられる。

しかし、今のヨシノはそれ以上に飢えていると言っていい。


「先にマニアとかコレクターに取られたら終わりだからね、ヨシノ」

「大丈夫だよ、こういうのって知らないカードはむしろ無視すると思うし」


 奇妙な小声、ヨシノの一人芝居のようなやり取り。

姉の友人である、昔馴染みの年上の少女。

順は不思議そうに、彼女の呟きに首を傾げるものの、

それどころじゃない、そろそろ試合だとそそくさと去っていく。

頑張ってねー、と声援をかけつつも、ヨシノはゲッシーとともに、

改めてストレージを漁る作業に移っていく。


「私の趣味じゃないわね」


 ヨシノと同じくらいの背格好のシルエットが呟く。

カード型のルミナストーンを探すのに夢中になっている最中。

いつの間にやら、隣でストレージの中身を探す少女がそこにいた。


「うおっコスプレ…?」


 特異な格好。その視界に飛び込んできたのは、

モノクロのゴシックドレス。非日常に驚くヨシノ。

見知らぬ少女に対して思わず無礼な発言を口走ったものの、

幸い、ヨシノが発したノイズは聞こえていないらしい。


「見つかんないわね…」


 一見すると、ヨシノや凪と同世代の少女。

ファンタジー世界から飛び込んできたような、その格好。

そんな彼女がストレージコーナーで、

目当てのカードを漁っているのだ。しかし、

丁度いいカードが見つからなかったのか。

匙を投げ、その場を去るゴシックドレスの少女。


「魔法少女とかも好きなのかな、あの子…」


 ルミナタキオンに変身する身。こんな事を疑問に思うのも、

着飾る者同士、どこか親近感を覚えたからである。

ヨシノは心の片隅で、奇抜な格好の少女との再会を期待する。

そして、エスカレーターを降りるゴシックドレスの少女の一言。


「別の店のストレージかしら、ルミナストーン…」


 歌劇令嬢・エゴシック。

言葉こそ交わさなかったが、これがヨシノと彼女の初邂逅となる。



「負けたァァァァァァァ」

「騒ぐなバカ」


 2回戦敗退の悔恨をその過剰なテンションで表現する順に、叱る凪。

ヨシノの方も、目当てのルミナストーンを見つけられず意気消沈。

別の店に行くか否かと、次の予定を立てる三人だが、一匹だけは様子が違う。


「多分いるぞ…ペルソナクス」


 タブレットと睨み合い、ワルターの反応を確かに確認するゲッシー。

先日のリクルートスーツ・ワルターと比較したら、はるかに微弱な信号。

それが何を意味するかは、ゲッシーとしても未知数ではあるものの、

ヨシノに対して、緊張を促す。


「予定調和なんでしょ?なんで分からない風なの、ゲッシー」

「僕だって何から何まで知ってはいないんだよ」


 僕もまた、魔法素粒子ルミナキャストという、

番組を構成する一つの歯車に過ぎない。

ペルソナクスも、決して負けるために戦っているわけでもない。

ヨシノが無条件で勝つようなシナリオでは決してないし、

それ故に全力で戦わなければならない。その為に相棒の僕がいる。

ゲッシーは自分の立ち位置を、こう整理する。


「うんこ!」


 そのような内緒話を続ける中、いつの間にやら、

順が先程見せた排泄物のカードを見せびらかし、

同世代の少年たちと笑い合っている。さすがに、

ここまで人数が多いとゲッシーを秘匿できないと焦るヨシノを尻目に、

下品なジョークに対して、ゲッシーも釣られて笑う。

ムジカントムも一緒に笑っている。


「は!?」

「フフフ…安心していいぞ」


 ご丁寧にも、順がハマっているカードゲームの登場人物のコスプレで

この場に現れたムジカントム。店内の等身大POPとお揃いだ。

こんなバレバレの姿で現れて、怪しまれたらどうするんだ。

そうヨシノは心の中で咆哮する。そして、ムジカントムの言う、

「安心」とは何だと考える前に、周りの人々が意識を失う。

以前、その断片がムジカントムの口頭でのみ語られた、

ワルターの製造工程の実演。倒れた人々の体から、

暗い影が噴き出す様がヨシノの目に飛び込む。

レンタル店にいる従業員や客。その全員の心を素材に使う。

それを一つに集約させ、一体のワルターを作るつもりのようだ。


「総じて、人付き合いというものはストレスが付き物だ」


 ムジカントム曰く、楽しい趣味ですら、他人に気を遣ったり、

勝敗があったり、欲しいものが手に入らなかったりと、

大小はあれども心の動きは生じる。仕事や学業は言うまでもない。

そんな心の揺れを触媒にして、人の剥き出しの心を無理矢理引き出す。

それにペルソナクスの仮面を付ける事で、ワルターは生まれる。


「フフフ…心理学で言うシャドウだが、俺もよくわからないぞ」


 情けない自己申告はいらんわ!ヨシノは内心叫ぶものの、

それ以上に大事なのは、凪と順の心までワルターの材料にされた事。

ムジカントムの言う「安心」とは、友達の心を使ったから、

意識のないお友達にルミナキャストの姿がバレる心配はないぞ?

と言うことか。ヨシノにとっては余計なお世話だ。

今回はいつもよりも容赦しないぞ、と彼女の表情は語る。

ゲッシーに案内されつつ、本来なら入れない屋上までの通路に誘導され、

ヨシノは走る。ワルターの狙いはあくまでルミナキャスト。

誰もいない場所で戦う方が安全といった寸法だ。


「あと、ヨシノ!ちょっと先行ってて!」

「先?」


 何かを確信したように、走りながら自身のタブレットの画面に頷くゲッシー。

また妙な仕込みを始めたりしない?変身を完了しつつも、

白い目で相方を見下ろすルミナタキオンだが、今は緊急事態。

他の客は勿論、凪と順の精神を解放し、救うことが最優先。

そのまま屋上へ、一直線で駆け抜ける。そして青空の下。

開いた扉からワルターが入場。待ってましたと言わんばかりに、

少し先に待っていたタキオンは構える。

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