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第2話「Eclipse Drive, GO! 変身ベルトで大変身!」 Bパート②

「ヒャハハハハ!来やがったなルミナキャスト!」

「(…この前、もっと薄ら笑いじゃなかった?)」


 ペルソナクスに挑むべく、目の前に立ち塞がったヨシノ。

それに対して、ムジカントムは狂喜する。

前回ルミナタキオンと戦った時と比べ、笑い声の時点で妙に感情的だ。

復讐に燃えてのことか、それとも、脚本の連携が取れていないのか。

普通なら後者など選択肢には出ないが、状況が状況だ。

腰に巻いたベルトがそんなヨシノの質問に対し、

後者の方に首を縦に振りかけて、

それでも一歩踏みとどまっている気がする。


「変身してみろよ。安心しな、テメエの邪魔をするほど俺は狂っちゃいねえ」


 前回はもっと余裕がある語り口だったが、

その無機質な微笑みの仮面から出るのは、美学こそあれども随分粗い。

なお、ムジカントムは草之根ヨシノの容姿など一切知らない。

彼が前回遭ったのはあくまで「ルミナタキオン」だ。

口調とは違い、こちらは間違いなく台本が狂ったのだろう。

ベルトも今度は首を縦に振る。

ゲッシーが気まずそうな顔で幻影紳士を見つめるが、

ムジカントムとしてもこれ以上、

場の空気を殺すわけにはいかないのだろう。一切動じない。

もうどうしようもないのか、そのまま押し通すようだ。

そして、ヨシノの声が響く。


「変身!」


 Eclipse Drive, GO! 徹夜で練習した複雑なポーズを見事完遂、

フリルとパステルカラーの衣装で戦う女の子が変身するものとは到底思えない、

無骨な機械音声と共に草之根ヨシノはルミナタキオンに変身する。

やっとその姿になったか、と賞賛するムジカントムであるが、

そもそもお前は草之根ヨシノを知らないはずだろうと、

さすがに呆れの表情は隠せるほど、取り繕えはしなかっった。


「このワルターは特別チューンナップしてるんでね。てめえのタキオン=エリオチェントリズモ=ディ=ガリレイは効かねえぞ」

「え?」


 ヨシノが驚くのも無理はない。純粋に何を言っているか全く分からない。

これも連携が取れないが故の結果なのか。

だが、そんな空気の中でもゲッシーはさっきと比べて意外と冷静だ。

あー、あれかと納得したかのようにルミナタキオンに語る。


「タキオンが直感でタキオンフィールドって技使っちゃったけど、あっちが公式で用意したネーミングなんだよね」


 子供騙しにしちゃいけない。

地球の言語をしっかり勉強し、その上で意味を持つ名称にした。

スタッフが一丸となって練りに練った名前だと力説するゲッシー。

だがヨシノは視聴者がどう思うかを知っている。


「長すぎて覚えられないよ!」


 突然の一言に息を詰まらせるが、確かにそうだと納得するゲッシー。

子供がこんな長い名前、本当に舌を噛まずに言えるだろうか。

試しに言ってみてとタキオンは彼に語るが、

どうにもタキオン=エリ…のところで噛むし、続きが分からないと言った具合だ。


「ムジカントム!そんなワルター相手にタキオンフィールドは破れないぞ!」


 結局そっちで行くのか!と、あまりの無責任さに呆れるやら

腹を立てるやらしたいところだが、今はそんな暇はない。

目の前の敵をどうやって倒すかが先決だ。


「届ける想いは光を超える。ルミナキャスト――ルミナタキオン!」


 前回、名乗り損ねた決め文句。特訓と共に考えたフレーズである。

せっかくだからと、ゲッシーも彼女自身にその心意気を考えさせたかったようだ。

ここで、彼女は草之根ヨシノである事を忘れ、臨戦態勢に入る。

ヨシノが改めてルミナタキオンの心構えになったのを察したのか、

ムジカントムも間髪入れずに攻撃を仕掛ける。

ワルターが左腕、もとい左前足でタキオンを薙ぎ払おうとするが、

地面に体を付け、うつ伏せの姿勢で回避。そのままタキオンは右手を軸に

跳躍、回転しながら足払いを行う。そのまま対になるワルターの右前足が浮き、

今度はそちらがうつ伏せに。タキオンはそのまま地面を蹴り、敵に視線を向けたまま

一気に後方に距離を取る。だが、ワルターも隙だらけと言うわけではなく、

なんと腹筋を使い跳躍。そのままバックステップを追跡し、覆いかぶさろうとする。


「エクリプスベルト展開!」


 今の今まで消えていた、タキオンの変身ベルトが腰に顕わになる。

ワルターは自身の勢いが仇となり、逆に金属の硬さをカウンターとして喰らう。

すごい絵面だな、とヨシノは変身ヒロインとは思えない状況に

内心笑いつつも、すぐさま思考を切り替え、

ルミナタキオンにのしかかろうとしたワルターに対して掌底、

すなわち張り手のアッパーカットを浴びせる。


「ルミナライトアップ!」


 その掌でワルターを浮かせたタキオンは、棒を回すジェスチャーで

その右腕にルミナステッキを呼び出し、

そのまま光弾・ルミナライトアップをぶつけた。

ワルターにそのまま追撃しようとするタキオンであったが、

ムジカントムは彼女の戦意を、粗暴に、冷ややかに分析する。


「もしかして、タキオン=エリオチェントリズモ=ディ=ガリレイを使うつもりか?」


 アンタはまだそっちの名称を使うつもりなんだね…

ムジカントムの語りに呆れて、冷ややかに分析するタキオンであったが、

彼の男は確かな根拠を以て語り続ける。このワルターは、

ルミナステッキから発せられる光のエネルギー…すなわち、

ワルターやペルソナクス幹部に効く浄化の力を中和可能――

つまりは効き目が弱いと言うのだ。特に、タキオンフィールドを、

完全に無効化する仕組みを作っていると言う。


「タキオン!ムジカントムの言うことは本当だ!」


 ゲッシーの切羽詰まった合いの手と並行して、

ムジカントムの申告通りの余裕を保ちながら、

ワルターは即座に立ち上がる。それを待たずに、

タキオンは拳を振りかぶり、ワルターの眼前に飛び込む。


「光に強いなら、光を使わなければいい!」


 ルミナタキオンの武器は、光線だけではない。

テレフォンパンチと呼ぶに呼べない。圧倒的な勢いを伴った、

タキオンの隕石のような激突をワルターはなんとか受け止め、

そのまま肉弾戦での競り合いが始まる。

前足と頭突きによる獣の猛攻に、拳に脚にと、サンドバッグの替わりに、

眼前の敵のボディを用いた暴力的なボクササイズで対処していくタキオン。


「チューンナップって言うのは、ビーム相手にだけなの?」


 タキオンも息が上がり、消耗し始めている。

だが、この状況下においても不敵にも挑発を行うのにも根拠がある。

ワルターも肩で息をしているのだ。

このような不定形を無理やり固めたような怪物にも、疲労の概念があるという、

不可思議な世界観を観察しつつ、そのチャンスを見逃さない。


「ゲッシー、ワルターはどうしたらやっつけられるの?」


 視聴者に自分の勝利条件を示しつつ、私自身も確認しておきたい。

聞きそびれていた質問を信頼できない相棒に投げかける。

ワルターにトドメを刺す条件は、シンプルに「ルミナキャストが倒す」こと。

それが浄化の光といったエネルギー体か、肉弾戦によるダメージによって、

ワルターの肉体に限界を迎えさせるかは問わないという。しかし、効率を考えると、

タキオンフィールドのような必殺攻撃の方が圧倒的に有利である…

そうゲッシー流ルールブックが口頭で語られつつも、ワルターの不定形の体表。

その体色のような色彩の光と空間が軋むような音が辺りを包む。


「ヒャハハハハァ!さしずめワルターライトアップといったところか!」


 実際に口腔に相当する部位があるかは不明なものの、

獣型ワルターの仮面の口元部分に、激しい光量の力場が発生する。

ムジカントムの宣言を考えると、

ルミナライトアップのような強烈な光弾が発せられるようだが、視覚は勿論。

聴覚・触覚を含めて桁違いの攻撃が発せられる予兆であると、

タキオンは言葉にならない緊張を覚えるも束の間。極端な高音に加工したような銃声。

そんな風に喩えられそうな発射音の弾丸が彼女に向かっていくが、

そうはさせないと、反射的。本能的に体を動かす。


「心の速度で、光と闇を包み込む!覆い尽くせ!タキオンフィールド!!」


 ステッキを握りしめて、真ん中にかざす。「無駄」と切り捨てられた直後に、

このような行為をするのも矛盾しているが、タキオンに残された手段は他に無かった。

たとえ無駄な行為であっても、やれるだけのことはやる。そう思った矢先である。


「え、消えた」


 これは、衝撃の余波で転げまわったのち、立ち上がりつつ発せられた、

ゲッシーの一言。拍子抜けしたような言葉に違わず、表情も虚無的。

ワルターライトアップごと、獣型ワルターが、

タキオンフィールドの圧倒的攻撃に掻き消え、浄化されたのである。


「バカな…タキオン=エリオチェントリズモ=ディ=ガリレイを無効化するはずだ!!」


 ムジカントムの絶叫。大袈裟な手振りで、虚空をかき混ぜる所作。

その口ぶり、ジェスチャーからして、本気で困惑している。

そして、先程の虚無的な表情と打って変わって、

眉間に僅かにシワを寄せ、どこか焦燥したような表情を見せるゲッシー。

勝利の喜びとは到底言い難い、気まずそうな顔つきである。

この両者の反応に、タキオンは不自然さを覚える。

本当にタキオンフィールドが効かないはずだった、って事?

そんな内心に応じるように、ゲッシーはあっと驚き、

タキオンの耳元まで近づき説明する。


「あの技、”タキオンフィールド”だろ?」


 彼が語るところ、ムジカントムは本当にワルターへの改造を施していた。

それは「タキオン=エリオチェントリズモ=ディ=ガリレイ」

という技を無効化する、特殊な力場を設定していたという事。

仮面男の申告通り、効き目が弱かったこと自体は本当。

しかし、それは限定的な効果であり、あくまで本命は、

タキオンの必殺技を無効化するところにあったと言う。


「え…じゃあ名前が違うから、別の技って事になって無効化されなかったってこと?」

「うん…」


 改造した程度では、必殺バリアを中和し、耐えるだけの能力は備わらない。

ヨシノの心持ちに戻り、眼と瞼を座標のX軸に並行にしたような目つきで、

決着に至ったバカバカしい真相に冷や汗すら流すタキオン。

とはいえ、そのような事実は夢の場には持ち込まない。


「私の想いのパワーが、あなたに勝ったってことだよ、ムジカントム!」


 タキオンフィールドは、町を、みんなを守るためのバリア。

その力を簡単に砕くわけにはいかない。そんなもっともらしい理由を以て、

情けない状況を見事フォローした。

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