表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/46

2話 野菜のパン粥 3

 「やる!」

 とサーラは即座に返事をすると、すぐに行動へ移った。

 抱いていた赤子をロンドの腕へ預けながら、  「赤ちゃん、お腹すいたじゃろ。……少しだけ待ってておるのじゃよ~」

 と穏やかな口調で話しかけ、そのままキッチンへ向かう。

 ――だが、次の瞬間。

 赤子は堪えきれず、大きな声で泣き出した。

 「お、おわっ!? ……ジョー、どうしよ?」

 「ど、どうしようって!? ……君の方が慣れてるんじゃないのかい!?」

 「もう昔すぎて覚えてないよ!!」

 ロンドはたちまち慌てふためき、腰まで引けてしまう。

 隣のジョーも、まるで同じ情けない姿だった。

 「あぁ、泣かないで!!」

 「どうしよう!?」

 二人は必死になってあやし続けるが、赤子の泣き声は一向に収まらない。

 その様子に、ケリーは呆れたようにため息をつき、ぴしゃりと言い放つ。

 「はぁ……何やってんだい。大人が二人して、みっともないね。突っ立ってる暇があるなら、あれを持っておいでよ」

 「えっと……なんだっけ?」

 と、ジョーは間の抜けた声で返事する。

 「揺りかごだよ。他の家から使わなくなったのを貰ってきたんだろ?

 「あぁ……そうだ!」

 「だったら早く持ってきて、そこへ寝かせなさい!…ロンドさんが困ってるだろう!!」

 「あぁ!?…貰ってきたまま家の裏に置きっぱなしだった!」

 「は、早く! 取りに行こう!」

 そう言われるや否や、ロンドとジョーは部屋の中を慌ただしく右往左往し、そのまま玄関を飛び出していった。


「まったく、もう」

 ケリーのぼやきが聞こえる。

 サーラも苦笑を浮かべたが、すぐに気持ちを切り替えてキッチンへ向き直る。手際よく持ってきた荷物を食卓へ広げていく。

 やがて机の上には、数切れのパン、カブ、じゃがいも、残っていた野菜、それに鍋や包丁などの調理道具が並んだ。

 それらを眺めながら、ケリーが尋ねる。

 「何を作るんだい?」

 「この材料なら、パン粥かな。……あ、ケリーさん、お湯を少し頂戴」

 そう答えると、サーラは迷いなく調理を始めた。

 ケリーは興味深そうに、その手元をじっと見つめる。

 まず自前の鍋へ湯を移し替え、釜戸の別口へ掛けて火にかける。

 続いてパンを小さくちぎり、カブや野菜をやや大きめに切り分けると、沸騰した湯の中へ次々と放り込んでいく。

 最後に皮を剥いたじゃがいもを包丁で細かく削ぎ入れ、そのままとろみが付くまでじっくり煮込んだ。

 「こんなもんかな」

 「何にも味つけしないのかい?」

 「赤ちゃんにはね、素材そのままの味がいいの。あとは食べやすいように、野菜を裏ごしすれば大丈夫」

 「手慣れてるわね」

 感心したようにケリーが呟く。

 サーラは照れくさそうに頬をかいたあと、鍋から具材をお玉ですくい上げる。それを深い鉢へ移し、擂り粉木で丁寧に擦り潰していった。


 その時だった。

 玄関の扉が開く音が響く。

 揺りかごを抱えたロンドとジョーが戻ってきたのだ。

 二人はそのままキッチンへ近づくと、さっそく揺りかごを床へ据える。

 木箱に揺らすための脚が付いた、素朴な木製の揺りかごだった。

 続いてロンドが赤子をそっと寝かせる。

 「ほら~。……あばばば、ば~!!」

 「ゆらゆらしてるよ~。泣かないで~!!」

 二人は揃って揺りかごの横へしゃがみ込み、籠を優しく揺らしながら変顔をしたり声を掛けたりと、思いつく限りの手を尽くしてあやし始めた。

 揺りかごの中では、赤子が寝転んだまま周囲へ視線を向ける。

 さっきよりは少し落ち着いたようにも見える。

 だが、顔はまだくしゃくしゃに歪み、今にも泣き出しそうだった。

 やがて小さな手を懸命に伸ばし、誰かを掴もうとするように宙をかき――次の瞬間、再び大きな泣き声を上げる。

 まるで誰かへ助けを求めるようだった。

 「ご、ごめん、ごめんね!!」

 「な、泣き止んでくれ……!」

 赤子が泣けば泣くほど、ロンドとジョーは余計に慌ててしまう。

 室内はあっという間に小さな混乱へ包まれた。

 その様子を見かねて、ケリーがすぐさま一歩踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ