2話 野菜のパン粥 2
「……あぁ、わかった。わかった。…一人に背負わせる話ではないな」
周囲を見渡しながら続ける。
「よし。…この子は、村で預かる。主にサーラが関わるとして、他の大人も交代で面倒を見る形にしよう。」
一拍の後。
「できる者ができる範囲で関わればよい」
その言葉に、村人の一人が頷く。
さらに一人、また一人と同意するように頷きが広がっていく。
「じゃあ、…」
と、ケリーが少し遅れて手を上げ、名乗りだす。
「今日は私も面倒を見るよ。…最初に見つけた一人だし」
「ありがとう、ケリーさん!」
すぐにサーラが、ぱっと明るい声で礼を言った。
「あぅ。」
ほぼ同時に、赤子も声を発して首を傾げる仕草をしていた。
その様子に、すぐに周囲がまた和やかに、ざわめき立つ。
「やっぱり、めんこいねぇ。」
「あぁ、本当だよ」
「ほーら、アババ。」
「こっち、向いて~。」
再び皆が口々に声をかけ、代わる代わる赤ん坊をあやしていく。
「なら、明日はうちで見よう」
「その次は、家で。」
さらに次々と、名乗り出る人達もいた。
村人たちの笑い声が響き渡る。
「やれやれ。…そうだな。…大人の我々がしっかりせねばな」
また誰かが呟く声もする。
「ほら、ほら。…皆の衆」
その直後、村長は両手を打ちながら、呼び掛ける。
「…これからよろしく頼むぞ。…村一丸となっての大仕事じゃ」
「はーい!」
そして最後に、サーラの元気な声が、締めくくったのだった。
そうして流れに乗り、村人達は次々と帰路についていた。
玄関から人の波が途切れることなく、流れていく。
「さぁ、私も帰って準備しないと。…サーラちゃん、…後で家に来なさいな」
とケリーは言い残し、軽く手を振って先に歩きだした。
その背中を、しばらくサーラは見送っている。
「あの、組合長さん。僕も今日は早退させてもらうよ。」
「そうですね、ロンドさん。…では、こちらのスタッフから、他のハンターさん達に伝えに行かせます」
「よろしくお願いいたします。…ほら、サーラ。…帰ろうか。」
ロンドは職員と手短に済ませると、玄関へ向かい、振り返りながら娘を呼んだ。
「あっ、はーい!」
サーラも急いで後を追いかける。
そのまま二人は、支部に後にした。
※※※
夕日が沈みかけ、村が茜色に染まる頃。
表通りには、仕事を終えた村人達が行き交い、それぞれの家に急いでいた。
その様子を、サーラは窓越しに眺めながら、腕の中の赤子をあやしている。
やがて頃合いを見て、彼女は立ち上がった。
棚や氷室から食材をまとめ、布にくるんでいく。手慣れた動きで、すぐに準備を整えた。
「サーラちゃん、準備は出来たかい?」
背後からロンドの声がかかる。
「うん、終わったよ」
サーラは振り向かずに答える。
「なら、行こうか」
と、ロンドも頷いた。
※※※
親子は戸締まりを済ませ、並んで家を出る。
向かった先は、隣家だった。
質素な木造の平屋。村ではありふれた造りである。
ロンドが扉を二度ノックすると、中から細身の男が顔を出した。
「おや、…サーラちゃんにロンドか。」
「こんばんわ、ジョーさん。」
親子が挨拶を交わす。
「やぁ、昼間振りだね。」
と、ジョーも小さく頷いた。
「ケリーから話は聞いてるよ。寒くなる時間だし、入っていいよ」
「「お邪魔しま~す。」」
すぐに扉が開かれると、親子は揃って家に入る。
玄関を抜けると、居間だった。
手前には食卓と椅子、奥には簡素なキッチンがある。
そのキッチンでは、ケリーが鍋の蓋を開けていた。
背後の気配に気がつき、振り返る。
「あぁ、来たのかい!!…まだ準備終わってないんだよ。」
「こんばんわ、ケリーさん。…何をしてるの?」
サーラが覗き込みながら尋ねる。
「晩御飯作るんだよ。…まだ始めたばかりでね。…一緒にやるかい?」
ケリーは笑いながら手招きし、少し横にずれて場所を空けた。




