外伝・サーラの食卓譚~出会う日までのレシピ~2、どやぁのじゃがいもガレット
ハンター組合支部の従業員用控え室。
そこでは、サーラや村の御婦人方が人だかりを作っていた。
誰もが難しい表情で、中央を見つめている。
その中心には、一人の支部の女性職員。
隣には大量の芋が詰まった木箱が山のように積み上がり、今にも零れ落ちそうになっていた。
「大量発注かけちゃったんです。……どうか、この施設でも大量に消費できる料理を、皆様も考えてもらえないですか?」
支部の女性職員は、必死に何度も頭を下げる。
「どうしたもんかね」
御婦人方の一人が呟くと、あちこちから声が上がった。
「助けてやりたいけど、……芋かぁ」
「うちでも食べてるからね……」
「茹でるか、蒸かすか、潰すかぐらいだからね」
「旦那は揚げたのは好きだから、バクバク食べるよ」
「でも、揚げるにしても油も手に入りにくいしね」
「大量には、使えないか」
「だからといって…マッシュポテトとか蒸かし芋を出すと、『またか』って文句つけるし」
「作って貰っているのにね」
「本当に、男連中ときたら」
「そういや、うちの人はさ。……この間ね」
しかし話題は次第に脱線し、別の世間話へと変わっていく。
「あ、あの皆さん。……」
女性職員は涙目になり、狼狽え始めた。
※※※
「うんしょっと」
そんな中、サーラは箱から芋を抱え上げ、釜戸へ移動していく。
それに気づいたケリーが問いかけた。
「サーラ、何か作るのかい?」
「うん。……ガレット作るの」
「ガレット?……それって、粉で作るやつでしょ」
「まぁ、見てて」
とサーラは淡々と答え、そのまま食料庫へ向かう。
取り出したのは塩と油。
再び釜戸へ戻ると、すぐに調理を始めた。
大量のじゃがいもの皮を剥き、実を千切りにする。
ボウルへ移して塩をまぶし、全体を混ぜ合わせたら、軽く水気を絞る。
すかさずフライパンに油を敷き、ボウルの中身を広げるように入れ、平たく形を整える。
弱火でじっくり焼いていくと、やがて香ばしい焼ける音が聞こえ始めた。
少しして――
「よっと」
サーラはフライパンの中身を皿へ移し、その皿を返して再びフライパンへ戻す。
さらに油を少し加え、もう片面もこんがりと焼き上げる。
「出来たのじゃ」
そうして、じゃがいものガレットが完成した。
「あれま。……こんな料理があるんかい」
「どれどれ、よく見せて」
気づけば村の御婦人方も、いつの間にか調理の手元へ集まり、出来上がった料理をまじまじと見つめていた。
※※※
しばらく後。
ハンター組合支部の飲食スペースには、仕事を終えた村のハンターたちが続々と集まってきていた。
席へ着くなり、それぞれがメニュー表を広げる。
最初に親方が口を開いた。
「……おーい、酒だ。あと、つまみは……」
「はーい」
そこへサーラがテーブルへ近づく。
同じ席にいたロンドが真っ先に気づき、声を上げた。
「あれ、サーラちゃん?……どうしたの?」
「実は、美味しい料理があるんだけど」
サーラが満面の笑みで呟く。
「全席に、一皿ずつ!」
すぐさまロンドが叫んだ。
「はい、よろこんで!」
サーラは素早く踵を返し、控え室へ走っていく。
「おい、何を勝手に注文してやがる!」
「ふざけんな!」
「この親バカ!」
直後、他のハンター達から一斉に文句が飛ぶ。
「褒め言葉だよ!」
ロンドは悪びれる様子もなく、胸を張って言い返した。
やがてサーラや村の御婦人方が、ガレットを載せた皿を各テーブルへ配膳する。
ハンター達は渋々といった様子で、料理へ手を伸ばした。
「……いきなりだったが、これは旨そうだな」
親方が一口齧り、そのまま咀嚼する。
カリカリに焼けた表面。
もったりとした芋の食感。
素朴な旨味が口いっぱいに広がった。
続けざまに酒を煽り、塩気を流し込む。
「と、止まらない!」
「このカリカリが旨い」
誰もが気がつけば、あっという間に皿を空にしていた。
「おかわり」
「こっちもだ!」
再び注文が飛び交う。
「どやぁ、……」
その光景を見て、サーラは得意げに胸を張っていた。




