6話(2) 蒸し料理 プディング 3
「今、自分にできることを全うする……」
その言葉を、サーラは小さく復唱した。
隣ではアニタも、何かに気づいたように目を見開いている。
二人の様子を横目で見た村長は、小さく胸を撫で下ろした。
「村長!大変っす!」
その時、若い村人が慌ただしく駆け込んできた。
「なんじゃい。どうした?」
「いや、その……村の入り口に、すっげぇ豪華な馬車が停まってるんです!…偉そうな奴が、村の代表者を呼んで来いって!」
「なにぃ?」
村長は目を丸くすると、すぐにサーラへ赤ん坊を返した。
「わかった。ワシが行く」
そう言い残し、足早に施設を後にする。
「ねぇ、サーラ」
「アニタさん。…あたし、いいこと思いついた」
二人は顔を見合わせ、小声で何かを話し合う。
そして同時に頷くと、それぞれ動き始めた。
※※※
場所は変わり、従業員の控え室。
その調理場では、村の婦人たちが急患の食事を用意していた。
野菜の下拵えをする者。
調理器具を洗う者。
鍋をかき混ぜる者。
ぐつぐつと煮える鍋の中では、パン粥が湯気を立てている。
隣では別の婦人が、野菜を入れた鍋を竈へ掛けながら口を開いた。
「これで大丈夫かしら?」
「とりあえずパン粥は作ってみたけど……」
「他に消化のいい料理って、何かあったかしら?」
「思いつかないわねぇ」
「あの人、あの様子じゃ食べるだけでも大変でしょう? まだ固い物は噛めないと思うのよ」
「なら、スープをもう一品?」
「でも、スープばっかりっていうのもねぇ……」
婦人たちは知恵を出し合う。
だが決め手はなく、話は堂々巡りになっていた。
首を傾げる者。
腕を組んで考え込む者。
皆、困った表情を浮かべている。
その時。
ガチャ、とエントランス側の扉が開いた。
姿を現したのはサーラだった。
背中には抱っこ紐で赤ん坊を背負い、両腕には二段重ねの大荷物を抱えて、よろよろと運んでくる。
「あら、サーラちゃん。その荷物どうしたの?」
「家から持ってきた!」
「あらあら、大変!」
婦人たちは慌てて駆け寄り、荷物を受け取ると、調理台の上へ運んでやる。
一人が中を覗き込みながら尋ねた。
「それで、何を作るの?」
「あのね。あたしも食べられそうな料理を思いついたの。……プディングなら、どうかなって」
その一言で、婦人たちの表情が明るくなる。
「あぁ、プディング!」
「そうだったわ!」
「前にサーラちゃんが作ってくれた時、おいしかったものね」
「あれなら柔らかいし、消化もよさそう」
「でも、卵はあったかしら?」
「さっきいっぱい取ってきたもん!」
「あら、本当? それなら皆の分も作りましょう!」
一気に話がまとまり、婦人たちは笑顔で準備に取りかかった。




