表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/48

4話 野菜のポトフ 3

 続けざまに、ロンドが代表して断りを入れた。

 「い、いきなり……そんなことを言われても困るよ」

 「そこをなんとかお願いします」

 それでもアニタは諦めなかった。

 真っ直ぐに親子を見据え、決して視線を逸らさない。

 その瞳には、揺るぎない強い意志が宿っていた。

 しばらく同じ問答が続く。

 「……どうして、そういう話になるんだい?」

 「……アンタ達が言いたいのは、その赤ん坊がリリャーの子供なんじゃないか、ってことだろう?」

 アニタは静かに答える。

 「……だったら、近くにいれば……あの娘が迎えに来るかもしれないと思ったんだよ」

 「し、しかし……。……来ない可能性だってあるだろう」

 「……あの娘は優しい。置き去りになんてするはずがない。……きっと、何か事情があるんだよ」

 「……で、でもねぇ」

 「なぁ……お願いだよ。……頼む」

 「うぅむ……」

 ロンドは断り続けるも、次第に気圧される。やがて唸りながら、隣にいるサーラへ視線を向けた。

 「どうしようか……お父ちゃん?」

 次第に二人は顔を見合わせ、しばらく考え込んだ。

 そして――。

 「……わかったよ」

 最後には、ロンドが小さく呟いた。

 「あ……ありがとう。……恩に着るよ」

 とアニタは喜びのあまり席を立つと、前のめりになるほど身を乗り出し、親子の手を取って強く握りしめた。

 ほぼ同時に、周囲の大人達からも深いため息が漏れる。

 「……話がまとまったのなら、ワシらはもう何も言うまい。…」

 それから村長が口を開く。

 「…とりあえず、お主も村の一員として歓迎するぞい」

 そう言い残すと、村長はそそくさと踵を返し、出入口へ向かっていく。

 それを合図に、他の者達も各々帰り支度を始めた。

 「……なら、俺の方でもハンター連中に声を掛けておくぜ。」

 親方が去り際に声を掛ける。

 「……もしかしたら、探し人の痕跡が山のどこかで見つかるかもしれねぇからな」

 「……あたしも、村の女性陣には伝えておくわ」

 続いてケリーもそう告げると、帰り支度を済ませ、その場を後にした。

 アニタも席を立ち、出入口へ向き直る。

 そして、離れていく村人達の背中へ向けて、静かに一礼した。

 やがて顔を上げると、親子へと向き直る。

 「とりあえず……僕らも帰ろうか」

 「うん……お父ちゃん」

 「……アニタさんも、付いてきてよ」

 と、ロンドは声を掛けながら席を立ち、歩き出す。

 すぐにサーラも荷物をまとめて後を追い、三人は横並びになって施設の扉を抜けた。

 そのまま家路へ向かって歩き出す。

 アニタも少し距離を置きながら、親子の後をゆっくりと付いていった。


 ※※※


 空は深く濃い夜の闇に染まっていた。

 辺りはすっかり暗闇に包まれ、肌にまとわりつくような静寂が広がっている。もはや外を歩く人影も、ほとんど見当たらない。

 ようやくサーラとロンドは自宅に戻り、玄関を抜けるなり、居間へと向かった。

 「た、ただいま~」

 「ただいま」

 「……お邪魔します」

 少し遅れて入ってきたアニタは、入口の前で立ち止まり、室内をじっと見渡した。

 その視線の先では、サーラが忙しなく動き回っていた。

 彼女は簡単な掃除を済ませながら、買ってきた荷物を手際よく片付けている。

 一方のロンドは、テーブル脇に置かれた揺りかごへ赤子を寝かせ、優しくあやしていた。

 その時だった。

 赤子が突然、大きな声で泣き始める。

 居間の空気が一瞬で張り詰めた。

 ロンドとアニタは、揃って慌てた様子になる。

 「あぁ、どうしたんだい?!」

 「えっ?!……えっと」

 「お父ちゃん!!赤ちゃん、お腹が空いたみたい!」

 しかし、サーラだけは冷静だった。

 「急いでご飯を作るから、出来たら先に食べさせてあげて!」

 そう言い残すと、すぐさま竈の方へ向かい、手早く調理の準備を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ