第2話「廃れた牧場との出会い」
シエルに案内されるままに、ハルトは草原を歩いていた。
途中、小さな川を渡り、苔むした石垣の間を抜けると、視界の先にぽつんと古びた建物が現れる。
「……あれが、牧場?」
「そ。……ま、見た目は最悪だけどね」
そこは、かつて農場だったとは信じがたいほど荒れ果てた場所だった。
柵は折れ、木造の小屋は屋根が抜けていて、草は伸び放題。
かつて動物たちが暮らしていたであろう鶏小屋も、入口の扉が外れて風に揺れている。
「おいおい、これ……再建できるのか?」
「やるしかないでしょ。ま、やってみれば案外楽しいかもよ?」
シエルはにやりと笑った。
ハルトは少しだけ笑って肩をすくめた。
どこかで「また命を扱う責任」に怯えていた自分に気づいていた。
でもこの場所には、不思議と“スタートしてもいい”と思わせる何かがあった。
そのとき。
「ぴよ……」
かすかな鳴き声。
ハルトが顔を上げると、壊れた鶏小屋の奥に、一羽のやせ細った鶏がいた。
羽毛は汚れ、目には力がない。だが、それでも生きようとする意思が感じられた。
「……君も、ここに取り残されたのか」
ハルトはゆっくりとしゃがみ込み、手を差し出す。
「大丈夫、もうひとりじゃないよ」
鶏は一瞬身を引いたが、ハルトの手の温かさに、やがて小さく鳴いて寄ってきた。
「こいつの名前、決めたら?」
「……コケ丸」
「……安直!」
シエルが笑いながらツッコむ。
でもハルトは、それでいいのだと微笑んだ。
彼とコケ丸の、牧場再生の物語が、いま始まったばかりだった。




